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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾肆章 天姿無縫
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拾肆之拾陸 今更

「それって、狐になれーとか、人になれーとか思うの?」

 志緒ちゃんの質問に頷いた私に、舞花ちゃんが好奇心に満ちた目でそう尋ねてきた。

 私は自分の記憶を確かめて「だいたいそんな感じですね」と頷く。

「それって詳細まで考えている? 足の形だけでも、人間とキツネじゃダイブ違うよね?」

 志緒ちゃんの質問に、私は「そこまでは考えてないです」と首を左右に振る。

「ただ漠然と、キツネとか……人間とか? 細かいことは考えて無くて……ともかくなりたいと思うものを念じる感じです!」

 反応が鈍かった志緒ちゃんの態度に焦って、言葉を無理やり絞り出すと、ようやく動きがあった。

「つまり……イメージはある程度漠然としてても、不足があれば能力が補ってくれてると考えられるわけだよね?」

 志緒ちゃんのまとめに、私は少し考えてから「そう……かも?」と曖昧に頷く。

 正直なところ、変身に当たって、情報の不足があるという認識が私には無かった。

 それが引っかかったからか、曖昧な反応になってしまったと思う。

 でも、舞花ちゃんが「それって、具現化とか、アップデートの時と同じだね!」と言ってくれたお陰で、私の中でパッと話が繋がった。

 そもそも具現化自体が、分身や変身の重ね技のようなものだから、その仕組みが元々の能力に含まれているというのは納得出来るし、志緒ちゃんが指摘したように体の構造とか全く考えてもいない。

 むしろ、変身した後で体の構造の違いに、違いに、不安になった朧気な記憶まであった。


「リンちゃんに変身の時のイメージの話を聞いたのは、具現化の時と違うかを確認したかったの」

 志緒ちゃんの説明に、私は思わず首を傾げてしまった。

「それを確認する必要があったってことですか?」

「どっちかっていうと、予測を立てるための前提の整理だね」

 すぐに返ってくる理路整然とした言葉に、私はなるほどと頷く。

「仮説としては、変身の影響……私が制服に加えた変身のイメージに、リンちゃんの神格姿の変身の能力が反応したって事なんだけど……」

 志緒ちゃんの発言に、驚いた表情で舞花ちゃんが「えっ! リンちゃんって『神格姿』じゃなくても、能力が使えるの!?」と声を上げた。

 私も思わず「えっ!?」と返してしまう。

 思わず視線を交わすことになった私と舞花ちゃんは、そのままお互いに瞬きを繰り返すことになった。

 そんな妙な状況に志緒ちゃんが苦笑気味に「マイちゃん、お人形にレコーダーに、アイガルに……もうたくさん出現させてるでしょ、リンちゃんは」と言う。

「あ、そっか……そうだね。今更だった」

 舞花ちゃんは何故か恥ずかしそうに頬を赤らめて、指で掻いた。


「それじゃあ、もしかしてリンちゃんは、今のままでも変身出来ちゃうってこと!?」

 舞花ちゃんの発言に「なんでそうなるんですか!?」と驚きのままに反応してしまった。

 多分、舞花ちゃんの中ではいろんな事が組み合わさってその結論に辿り着いたのだと思うけど、私の髪の毛の色が制服の変身能力の影響で変わったという推測から、変身可能というのはかなり飛躍していると思う。

「でも、リンちゃんが変身能力を使えるから、制服から送られたイメージの影響を受けたって事だよね?」

 舞花ちゃんに、間を置かずに、サラリと切り替えされた私は、返答に困ってしまった。

 指摘された内容は筋が通っている。

 むしろ反論出来る言葉なんて思い付きそうに無かった。

 そのまま見つめ合うことしばらく、私は観念して大きく溜め息を吐き出す。

「……舞花ちゃんの謂う通りかも知れません」

 納得は出来てしまっているので、敗北感を噛みしめながら私はそう伝えた。

 そんな私の言葉に対して舞花ちゃんは、想像もしていなかった問いを口にする。

「それじゃあ、リンちゃんは『神格姿』になら無くても、こっちの世界でも、変身出来ちゃうってこと?」

 もの凄くキラキラとした目で放たれた舞花ちゃんの言葉には、好奇心と興味がこれでもかと詰め込まれていた。

 なんなら、今すぐ変身して欲しいと目が言っている。

 そんな舞花ちゃんの期待に、どう答えれば良いのかと戸惑っていると、志緒ちゃんが「実験だよ、実験」と言いながら両肩に手を乗せて来た。

 その上で「リンちゃん! 変身だよ」と耳元で囁く。

 少し熱を含んだ声が、耳をくすぐり、全身にゾワゾワという居心地の悪い感触が駆け巡った。

「ちょっと、志緒ちゃん!?」

 肩を押さえられているので、少し動かし難かったものの、耳を押さえて抗議の声を上げる。

 対して志緒ちゃんは「流石に変身しないかぁ」と、不満そうに言い放った。

「『ミルキィ・ウィッチ』じゃ無いんだから、ステラみたいに言われたからって変身するわけ無いでしょ!」

 志緒ちゃんをジト目で見ながらも、私の心臓はバクバクと高速で動いている。

 変身しそうだったとかでは無く、急に想定外のことを言われるとそれなりにビックリするのだ。

 その上、本当に変身してしまっていたら、パニックになっていた自信がある。

 パニックに陥る自分を想像したことで、心臓の動きはまた少し早まってしまった。

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