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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾肆章 天姿無縫
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拾肆之拾弐 交代

「じゃあ、次はリンちゃんね!」

 花ちゃんを思わせるツヤツヤした笑顔を浮かべて、志緒ちゃんは私を指名してきた。

 とぼけられるとは思えないけど、それでも一縷の望みを賭けて「次ってなんですか?」と返す。

 ここで、志緒ちゃんに好き放題触られていた舞花ちゃんが「今脱ぐから、まずセレニィからだよね!」と微笑んだ。

 既に、志緒ちゃんの暴走を止められず、舞花ちゃんを見捨てた形になっているので、私には受け入れるほか無い。

「わかりましたけど……」

 私がそう口にすると、舞花ちゃんは「それじゃあ、()()()セレニィからね!」と笑みを深めた。

「えーと、最初?」

 わかってはいるけど、聞き間違いの可能性に賭けて尋ねて見たけど、舞花ちゃんでは無く、志緒ちゃんから答えが飛んでくる。

「ここにある三種は着て貰う予定だから……あ、制服はリンちゃんがセレニィに変身している間に脱がしておくね!」

 サラリとされた宣言だけど、それを放つ志緒ちゃんの笑顔には謎の迫力があって「う、うん。わかった」としか返せなかった。

 そんなやりとりをしている間に、元の緋馬織の制服に着替え終えた舞花ちゃんが近づいてくる。

 目前まで近づいてきた笑顔の舞花ちゃんに「はい。リンちゃん」というセリフと共に、制服一式を渡された。

 それはもちろん、直前まで舞花ちゃんが着ていたもので、セレニティに変身出来る制服でアル。

 もう着替えることも、変身することも、納得……受け入れたので、制服を渡されること自体はいいんだけど、問題は舞花ちゃんが手を離した後、変化が起きなかったことだ。

 思わず「サイズに変化が起きなかったですけど、サイズ変更の機能が停止しているかも知れませんね!」と口にした私の肩を、志緒ちゃんが薄い笑みを浮かべて、ポンポンと叩く。

「志緒ちゃん?」

 私の呼びかけに、志緒ちゃんは「早速着てみましょう」と真面目な顔で言い切られてしまった。


 二人の見ている前で着替えるのには少し抵抗があったものの、舞花ちゃんが堂々と着替えていたのに、私が二の足を踏むのは自意識過剰……おかしな気がして『別に着替えるだけ』と心の中で何度も繰り返しながら着替えることにした。

 靴下も履き替えないといけないので、最初に靴下を脱いでしまう。

 上履きは靴下を脱いだ後で履き直さず、裸足でその上に立った。

 ゴムと堅めの布の感触を足の裏から感じつつ、机の上に載せた制服一式から取り出したニーハイソックスに足を通す。

 舞花ちゃんのように、バランスを取りつつ履けたら良かったのだけど、バランスを崩して倒れそうな気がしたし、それはみっともないなと思ったので、机に寄りかかって片足ずつ履くことにした。

 お尻を天板に軽く乗せるだけでも、片足立ちを十分支えられるので履き替えはスムーズに終えることに成功する。

 そこからは一端全部脱いでから着た方がスムーズだと考え、スカートとブラウスを脱いだ。

 もの凄く舞花ちゃんと志緒ちゃんの視線を感じたけど、狼狽えないように目を閉じて心を落ち着かせながら素早く、蓮花モデルの制服のブラウスに袖を通す。

 まずはボタンを留めるだけなので、目を閉じたままでも十分対処出来た。

 首元から下に向けて留めていった後で、右手、左手の順番で手首のボタンも留める。

 そこで一端目を開けてスカートを手に取ると、右足、左足の順番で足を通した。

 左右の手で、ベルトに付けられているホックのそれぞれの金具のそばを持って左の腰にスライドさせる。

 一応周囲に惑わされないように目を閉じて、フックを留めた。

 軽くベルトとお腹の間に指を通してブラウスが引っ張られすぎないように遊びを作ってから、ホックの直下から裾近くまでスカートを左右に分けているファスナーを上げて留める。

 これだけで下着は制服の下に隠れたので、私はここで一拍置いて目を開けた。

 リボンのゴム部分の留め具を外して、襟の下に素早く通す。

 カチッと音を立てて、リボンのゴムに付けられた留め具を留めて、襟を正してゴムをそのしたい隠した。

 最後にブレザーに、右、左の順で腕を通して、お腹の前のボタンを留めると、制服への着替えが終わる。

 実に認めたくは無いけど、舞花ちゃんからのサイズ変化は起こらなかったのに、制服自体は私の体にピッタリだった。

 付いた明記を吐き出した私が目を開けると口元に手を当てた志緒ちゃんのバッチリ目が合う。

 隠された口元がどんな形になっているか容易に想像出来るほど、志緒ちゃんの目は『大丈夫だったでしょ?』と訴えていた。

 悔しい上に恥ずかしい内心を、気合で押さえ込み、志緒ちゃんに反応をしてしまわないうちに舞花ちゃんに視線を向ける。

「着替え終わりましたよ、舞花ちゃん!」

 そう宣言すると、舞花ちゃんは目をキラキラさせて「やっぱり、リンちゃんは蓮花ちゃんの制服姿が似合うね! 良いなぁ、羨ましい!」と言ってくれた。

 思ったままを口にしてくれたのだとわかる純粋な気持ちが少しくすぐったくて、すぐに「それじゃあ、変身……ですか?」と問い掛ける。

「うん! リンちゃんが大丈夫なら、すぐみたいな!! いいよね、しーちゃん?」

 舞花ちゃんはそう言って振り返ると、話を振られた志緒ちゃんは「もちろん!」と言って大きく頷いた。

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