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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾肆章 天姿無縫
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拾肆之捌 次へ

 結論から言うと、志緒ちゃんの人形は見事シルフィの姿ヘと変身を遂げた。

 志緒ちゃんの人形を操っているのが舞花ちゃんだからか、あるいは制服の効力か、一連の変身の流れは完璧だったと思う。

 動画を比較すれば、舞花ちゃん自身の人形の動きと、志緒ちゃんの人形の動きはかなりシンクロしているのが確認出来るはずだ。

「制服毎に、変身出来る魔女が決まってる……で、間違いみたいだね」

 志緒ちゃんの言葉に「そうですね」と私は同意して頷く。

 元々制服を交換した時に、確かめた内容だったので、アップデートした時、特に意識しなかった。

 その結果、制服と魔女の姿の繋がるが継続されたのだと思う。

 逆に、志緒ちゃんの着る人によって変身する魔女の姿が変わるかもという話を聞いていたら、結果が変わっていたかも知れなかった。

「志緒ちゃんの話を聞くタイミングがもう少し早かったら、結果が違ってたかも知れないです」

 正直に思ったままを口にした私に対して、志緒ちゃんは澄まし顔でこちらを見る。

 その後で「リンちゃんは素直な良い子だから、話を聞くと影響されちゃうもんねー」と言い放った。

「なっ!」

 思わず声が出た私の全身は、急激に火照る。

「ほら、もう、反応してる~」

「うぐっ」

 こちらを指さしながら笑みを浮かべる志緒ちゃんに、私はまともな反論をすることが出来なかった。

 まともな反論も、抗議の言葉も思い浮かばず、私がただ固まっている間に、舞花ちゃんが動く。

『変身解除!』

 舞花ちゃんの操作によって志緒ちゃんの人形がそう宣言すると、ピンク色の光が『ミル・シルフィ』の衣装を包み込み、体全身を包み込むまでに広がったところで、光はパッと細かな粒となって散った。

 細かな粒になったピンクの光が宙に消え、志緒ちゃんの人形のみに纏う衣装は元の制服姿に変わる。

 志緒ちゃんの人形の手足を動かして、身につけた衣装が制服に戻ったことを確認した舞花ちゃんは『大丈夫そうなので、リンク切るね』と宣言した。


 ヘルメットを外して、外気に顔を晒し「ふぅ~~」と長く息を吐き出した舞花ちゃんからは、達成感が漂っていた。

 が、それも束の間、持っていたヘルメットをマットの上に置くと、スカートだということも気にせずに、足を大きく上へと振り上げ反動で飛び起きる。

 タンと軽やかな音を立てて、マットに着地した舞花ちゃんはそのまま勢いを殺すように膝のクッションを使い、体を丸くしてしゃがみ込んだ姿勢を取った。

 余計な力を殺しきった舞花ちゃんはそのまま、何事も無かったかのように立ち上がると、スタスタと人形達が立ち並ぶ机に向かって歩き出す。

 全く迷う素振りも見せずに自分の人形を手に取った舞花ちゃんは、そのまま身につけている制服を脱がし始めた。

 あまりにも綺麗な流れだったので、状況を飲み込むのに時間が掛かったものの、突然自分の人形の制服を脱がし始めた舞花ちゃんに、私は慌てて声を掛ける。

「えっと、舞花ちゃん、何してるの?」

 制服を脱がす手を止めず、こちらに振り返りもせずに、舞花ちゃんは「今度は自分で制服を着てみて変身を試すんだよ!」と楽しそうに答えた。

 納得の色が強かったせいか、思わずポンと手をたたき合わせた私は「ああ」と頷く。

 そのまま、沈黙が訪れ、舞花ちゃんは黙々と制服を脱がしていった。

 最初に太もも丈のニーハイソックス、続いてブレザー、スカートと制服を脱がされていく舞花ちゃんの人形の状況に、何故だか妙な焦りを覚えた私は、思わず質問を投げ掛ける。

「え、えっと、その、舞花ちゃん。なんで、舞花ちゃんの人形を脱がしてるの?」

 帯する舞花ちゃんの答えは単純明快だった。

「自分の人形の服を脱がすなら、確認取らなくてもいいかなと思って」

「そ、そうだね」

 私の同意を持って会話があえなく終了してしまう。

 当然、舞花ちゃんの手が止まることは無く、私は呆然と見守るだけになった。

 正直なところ、自分がどんな行動を起こすべきか……いや、どんな行動を起こしたいのかすら、私は自分の中に明確に出来ていない。

 そのせいもあってただ見守るだけになってしまっていた。


「マイちゃん、ちょっとストップ」

 志緒ちゃんからの要請に、舞花ちゃんは「なに?」と口にしつつ手を止めて振り返った。

 あっさりと手を止めた舞花ちゃんの反応に、モヤッとしたものを感じたけど、その理由もよくわかっていないので、私は大人しく観察に徹する。

「脱がせた制服に変化は無い?」

 そう志緒ちゃんに問われた舞花ちゃんは、机の上に置いた脱がしたばかりのソックス、ブレザーそしてスカートを確認した。

「今のところ、変わってないように見えるよ」

 舞花ちゃんの返答に志緒ちゃんは少し考える素振りを見せてから「アロハリボンとブラウスだけだよね?」と問い掛ける。

「うん」

 舞花ちゃんの返事を待って、志緒ちゃんは「それじゃあ、どのタイミングで制服のサイズが変わるか、検証したいから、気持ちゆっくりめで脱がしてくれる?」と指示を出した。

「了解、しーちゃん!」

 大きく頷いて返事をした舞花ちゃんは、自分の周りにやってきたヴァイア達に声を掛ける。

「スーちゃんとシャー君、脱がしちゃって大丈夫?」

 そう尋ねる舞花ちゃんに、二体のヴァイアは問題ない旨を返した。

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