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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾肆章 天姿無縫
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拾肆之伍 次なる検証

『リンちゃん、ありがとう!』

 舞花ちゃんの操る志緒ちゃんの人形は嬉しかったからか、軽くその場でジャンプしてから、早速抱えていた制服を新たに出現させた机の上に置いた。

 一方、志緒ちゃんは、舞花ちゃんが操る人形が使おうとしている机以外の衝立や椅子を手に取って出来栄えを確認している。

「これ金属に見えるけど、弾いた感じだとプラスティックなのかな?」

 実際の椅子では金属で出来ている足の部分を爪で弾きながら、志緒ちゃんはそう呟いた。

 私はその言葉を聞いて、そういえば素材については、特に考えてなかったなと思う。

 サイズを小さくしただけなら、金属製でもおかしくないのにどうして素材が変わったのだろうと考えてみると、以前、何かの展示会で見た『昔の学校の風景』のミニチュア模型がプラスティック製だったことが印象的だった記憶が思い当たった。

 忘れていても、印象的だと思ったことは、私の中に息づいているのかもしれない。

 その前提で考えると、私が印象的に思った記憶や経験が、具現化ではイメージの補強とかに影響を与えるという仮説は正しそうだなと思った。

 後で検証の意味も込めて、皆に相談してみようと考え、舞花ちゃんの操る志緒ちゃん人形に視線を戻す。

「えっ!?」

 私の驚きの声を切っ掛けに、舞花ちゃん操る志緒ちゃんの人形が『ん?』と首を傾げながら振り返った。

 視線で『どうしたの?』と問い掛ける人形の目線に、驚いた理由を伝える。

「あ……その、衝立を出したから、使ってくれるかなと思ってたから……驚いて」

 そう私が出現挿せた衝立は志緒ちゃんに検分されている状態なので、舞花ちゃんの操る人形は、ハンドタオルを脱ぎ捨て平然と着替え始めていたのだ。

 私の口にした理由に、舞花ちゃんは人形の上半身を隠すようにブラウスを体に押し付けながら『しーちゃん。衝立あった方が良い?』と声を掛ける。

 その様子からして、舞花ちゃんは人形の体が自分のものでないから聞いたように見えた。

 自分の人形なら問題ないと言っていたと思う。

 まあ、確かにこれまで衝立なんて使わずに平気で着替えていたので今更な感じはするし、結局、衝立を出現させたら意識して……とはならなかったようだ。

「ん? 衝立なんて、撮影の邪魔かな。折角、リンちゃんが出してくれたけど」

『じゃ、このまま着替えちゃって良いかな?』

「うん。早く変身試そう!」

『そうだね!!』

 あっという間に二人の間で会話は進み、舞花ちゃんが操る人形は一旦止めていた着替えを再開する。

 私の方へ振り向いた志緒ちゃんは衝立を持ったままで手を合わせて「ごめんね。リンちゃん。ちゃんと使うからね」と口にした後で「たぶん」と付け足した。

 自分が苦笑しているのを自覚しながら「無理に使わなくても良いよ」と伝える。

「他の人の姿の人形の時は、その、下着姿は隠した方が良いかなって思っただけで……」

 別に衝立の仕様を強制するつもりは無いので、気にしなくてイイヨという意味で言ったのだけど、志緒ちゃんの受け止め方は違った。

 手にしていた衝立や椅子を近くの机に置くと、次の瞬間には私の手を取って「大丈夫」と口にする。

 反射的に『何が!?』と疑問を抱いた私に、志緒ちゃんは「リンちゃんの姿のお人形を操る時はちゃんと下着を見せないように振る舞うからね! 恥ずかしい思いはさせないからね!」と強く訴えてきた。

 確かに下着姿を隠そうという意図だったけど、私は恥ずかしいかなって思っていたけど、まるで私だけが気にしているように聞こえる言い回しに、体が熱く火照る。

 当然ながら、私の口は同様で乱れ「え、いおや、あのっ」とまともな言葉にもなら無い声を吐き出すだけになってしまった。

 対して志緒ちゃんはなんだか神妙な表情で深く頷きを繰り返してから、爽やかな表情で親指を立てて「任せておいて!」と言い切る。

 結局、まともな返しも出来ずに、そのまま会話はうやむやな終わりを迎えた。


『じゃあ、スーちゃん、お願いね』

 舞花ちゃんの人形が着ていた制服は、サイズ調整の機能によって志緒ちゃんの人形にピッタリサイズになっていた。

 身長差は実際のところそんなにあるわけでは無いので、元々着られなくは無いと思うけど、流石にゆとりは無くなっていたんじゃ無いかと思う。

 一応、志緒ちゃんがパッドに表示してくれた舞花ちゃんの人形の制服姿と見比べた。

 ブレザーやブラウスなどからは身長差による違いはそれほどでないけど、スカートの丈には如実に表れると志緒ちゃんに教えて貰った私は注視する。

 目で見比べているので、絶対とはいえないけども、膝に掛かるスカートの感じには違いがないように見えた。

 きっちり舞花ちゃんサイズから、志緒ちゃんサイズに変わっているらしく、私はそこで納得したのだけど、有識者は違うらしい。

「見て、リンちゃん!」

 私が確認し終えたばかりのパッドに表示された舞花ちゃんの人形が履いたスカートの裾を指さしながら、志緒ちゃんは「スカートの丈が変わっているのは膝に掛かる裾の位置でわかるでしょ? 私の方が少し高いから、もう少し太ももが得てていいのに出ていない」と口にして視線を自分の人形に誘導する。

「う、うん」

 戸惑いながら頷いた私に、志緒ちゃんは「でもこれ、膝の見え方がほぼ一緒なのよ!」と力強く訴えてきた。

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