表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾肆章 天姿無縫
520/814

拾肆之肆 成功

 検証としては四度目なので、舞花ちゃんの操る志緒ちゃん人形の立ち位置や制服への触れ方からも、慣れが感じられた。

 次々と志緒ちゃんから出てくるオーダーにテキパキと応えていく姿は職人仕事にも思える。

 多分、これまでの『神世界』との関わりの中で、こうした検証は幾度となく繰り返してきているんだろうというのが伝わってきて、私は何よりも負けてられないなと気合が入るのを感じた。

 そんな決意を固める私の視線の先では、制服がドンドンとそのサイズを縮めている。

 縮小自体を目にするのは二回目なのもあって、より冷静に観察出来た。

 舞花ちゃんが操る志緒ちゃんの人形は、手を離すタイミングを見計らって、いつでも離れられるようにグッと体をかがめている。

 後ろに離れるのに向いた体勢だが、反対に前方へは移動しにくいので、縮小で手が離れてしまうのでは無いかと思った。

 そう考えて観察をしてみると、制服自体が人形が触れている面に向けて縮んでいる事に気付く。

 だからこそ、後ろに飛び退く姿勢でも手が離れないようだ。

 拡大も同じなんだろうかと考えてみたが、その視点は無かったので、記憶に手折っての検証は出来そうに無い。

 ただ、接触しているところを起点に拡大縮小しているのが確認出来れば、より安全に試せるなと考えた私は、後で皆に報告と提案をしてみようと考えて、集中し直した。

 縮小の方は順調に進んでいて、後一段階か二段階縮めば、人形サイズになるだろうかと思ったところで、舞花ちゃんの操る志緒ちゃんの人形が動く。

 グッと力が脚に籠もるのが見えた直後、まるでお尻を引っ張られたかのような動きで、志緒ちゃんの人形が後ろに飛んだ。

 当然、触れていた掌も制服から離れ、これまで順調に進んでいた縮小がピタッと止まる。

 その間も響くタッタッという軽い音は、舞花ちゃんが操る志緒ちゃん人形がバックステップで距離を取る音だ。

 そして、移動の音が止まると、まるでそれを待っていたかのように、制服の拡大が始まる。

 どうやら、志緒ちゃんの予測が当たっていたようだ。

 視線を向けると、志緒ちゃんは頷いてから「これで、拡大縮小の途中で変化する側が変わっていたら、その分岐点を探らなきゃいけなかったから、ほっとした」と苦笑する。

 私の中には同意しかなく、思わず「確かに」と返していた。


 今度は実際に人形サイズまで縮めてきてみることになったのだけど、その前に先ほどの私の考えを伝えてみた。

 結果、録画画像を確認することになったけど、縮小のタイミングでは、接触点を中心に縮んでいるのが確認出来たものの、拡大の方はそれっぽいとしか言えない。

 なので、次回拡大の時に検証するということになり、改めて縮小と試着を優先することとなった。

 方針が決まると、動きは速い。

『それじゃあ、今度は着られるサイズまで触ったままにするね!』

 そう宣言した舞花ちゃん操る志緒ちゃん人形が、しゃがみ込んで制服に触れた。

 距離を取りやすいように片膝立ちではあるものの、縮小の際には触れているところに縮んでいくことがわかっているのもあって、少し余裕があるように見える。

 一定のタイミングでグングンと縮小されていく制服が、人形が着られるだろうサイズになったところで、変化が止まった。

 念のためということだろうけど、変化が終わった後も、舞花ちゃんの操る志緒ちゃんの人形は制服に触れたまま動かない。

 変化終了から十数秒、顔だけを動かした志緒ちゃんに向けた舞花ちゃんの操る人形が『しーちゃん、そろそろ良いかな?』と問い掛けた。

「うん。大丈夫だと思う」

 志緒ちゃんの答えを聞いた舞花ちゃんは、人形の手を制服から離させる。

 制服のサイズ変更は終わっているので、これまでのようにサイズが元に戻ることは無かった。


『えっと、着替えてもいい? しーちゃん、変わる?』

 舞花ちゃんからの質問に、志緒ちゃんは「そのまま変身まで実験していいよ」と、さらりと答えた。

『えっ!? いいの?』

 驚いた声を上げる舞花ちゃんが操る自分の人形に、志緒ちゃんは「うん。私は後でマイちゃんの人形でお着替えと変身するから」と笑む。

『うん、わかった』

 舞花ちゃんとしても、それで問題ないと判断したらしく、大きく頷いて、ウキウキした様子で制服を手に取った。

 そのまま着替え始めてしまいそうだったので、私は「ちょっと待ってください」とストップを掛ける。

『なに、リンちゃん?』

 急なストップだったけど、舞花ちゃんは不思議そうに首を傾げるだけで、不快には思ってないようで少しほっとした。

「そのまま着替えるのは不便だと思うので、ちょっと小道具出させてください」

 私はそう宣言して、すぐに具現化の準備に入る。

 出現させたのは、人形サイズの机と椅子、それと衝立だ。

 制服には触れた人間に合わせてサイズを変更する機能があるので、先ほどまでのように誰かに持って貰うとサイズがその人のものになってしまって、着替えられないし、床に置いた状態だと何度も立ったり座ったりしないといけないなと考えてのことである。

 衝立は、今更な気もするけど、人形のモデルは自分達なので、隠さないより隠した方が良いかなと思っての選択だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ