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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾肆章 天姿無縫
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拾肆之弐 検証その壱

 私は失敗を受け入れたのだけど、楽しみにしてた舞花ちゃんは凄くがっかりするだろうなと、少し心配になりながら志緒ちゃんとその人形を見た。

 志緒ちゃん人形を操る舞花ちゃんは『うーん。失敗なのかなぁ』と残念そうに漏らして、制服から手を離した直後、押し流されるようにして、お尻から倒れ込む。

 人形を押し倒したのは志緒ちゃんの手から一瞬で溢れ出した布の洪水だった。

 目撃している私の目には、何が起こっているのか、全て見えているのに、理解が追いつかない。

 結局、目の前起きた一部始終が、どういうことだったのか、受け止めることが出来たのは、布の洪水……制服の拡大が終わった後、志緒ちゃんサイズへの変化が終わった後だった。


「成功してたってこと……ですか?」

 目にした光景で判断すれば、それで間違ってないと思うのだけど、一度諦めたからか、上手く飲み込めなかった。

「そうだね。これなら着れると思うな」

 自分の手の中の制服を拡げてみながら、志緒ちゃんはそう言って笑むが、私は未だ飲み込めない。

 サイズが拡大したことで押し倒されていた舞花ちゃんの操る志緒ちゃん人形が起き上がって『リンちゃん、スゴイよ! 大きくなった! 自分でも着られるって事だよ!』と、興奮気味に訴えてきた。

 そこでようやく「そうだね」と頷けたことで、少し落ち着きを取り戻せた私は、浮かんでいた疑問について口にしてみる。

「あの……志緒ちゃん。気になったんですが、どうして舞花ちゃん……が、操る志緒ちゃんの人形が制服から手を離したら、拡大が始まったんでしょうか? てっきり失敗したんだと思ってたんですけど……」

 好奇心のせいか、一度話し出してしまうと、私の口は滑らかに疑問点を口にしていった。

 あまりにも勢いよく話してしまったので、志緒ちゃん達を呆れさせたのではないかと思ったけど、そんなことは無かったらしい。

「推測の域を出ないけど、誰か一人が触れている時にだけ、拡大縮小の機能が発動するんじゃないかなって思う」

 志緒ちゃんは顎に手を当てるいつもの考えるポーズで、自分の意見を披露してくれた。

『そっか、さっきは舞花としーちゃんが触ってたから、機能が発動しなかったんだ!』

 舞花ちゃんがいち早く志緒ちゃんの考えを理解し、納得したと言わんばかりに大きく頷く。

 その後でくるりとこちらを振り返った舞花ちゃんの操る志緒ちゃん人形が『でも、何でそんな機能がついてるの、リンちゃん?』と首を傾げた。

 対して、私は虚を突かれたのもあって「え?」と反応することしか出来ない。

 すると舞花ちゃんの操る志緒ちゃん人形は首を反対に傾げて『もしかして、リンちゃんが付けた機能じゃないの?』とズバリ核心を突いてきた。

「え、えーとぉ」

 こざかしくも恥をかかない返しを考えようと咄嗟に思ったものの、上手い言い訳も思い付かなかったので、正直に「多分、私が考えていない範疇だから、能力が補ってくれたんだと思う」と伝える。

『なるほど』

 納得した表情で頷く自分の人形に対して、志緒ちゃんが「多分だけど……」と話しかけた。

「誰かが触れる事だけを能力の発動の切っ掛けにしていたら、服を着ている状態で誰かに触れられたら変化しちゃうってことになるでしょ?」

 志緒ちゃんのその言葉だけで察しを付けた舞花ちゃんの操る人形は『あ、そっか!』と手を叩く。

『だから、触れている人が一人になった時に発動するんだね!』

「一応、誰も触れていない状態で、誰かが触れタラって言う条件かもしれないとも考えたんだけど、それだとさっきの舞花ちゃんが手を離した瞬間に発動したことの説明が付かないでしょう?」

『うん!』

 流れるように展開する二人の話に、私はただ『なるほどなぁ』と納得するだけだった。


 今度は縮小を試すということで、人間サイズに変化した制服が机の上に置かれた。

 改めて、舞花ちゃんが操る志緒ちゃんの人形がこの制服に触れて、サイズが縮めば、実験はひとまず成功ということになる。

 折角人間サイズまで確認したので、そのまま志緒ちゃんが着てみるのかとも思ったのだけど、先に宿主を試してから、人形の体で制服を着てみるという段取りになった。

 確かに生身で着てみて何かが起こっても問題なので、順番としては納得出来る。

 そもそも、二人が気にしていないからついつい忘れがちになっているが、志緒ちゃんの人形の方はハンドタオルを纏っているだけで、その下は下着姿だ。

 可及的速やかに服を着るべきだし、人形と違っても人間が服を着替えるとなれば、この場でどうぞともいかない。

 そうなると、優先順位は志緒ちゃん提案のものが最適ということになるのだ。

「縮小に巻き込まれて怪我しないように気をつけてね」

『うん。触ったらすぐ離れる』

 志緒ちゃんの心配に、笑顔で応えた後で、舞花ちゃんは『あっ』と何かに気付く。

『手を離したら変化止まっちゃうかな?』

 私自身は思いつきもしなかったけど、尋ねられれば、それはあるかもと思った問い掛けに志緒ちゃんは、平然とした態度で答えを返した。

「それも含めて試しましょう」

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