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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾参章 試行錯誤
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拾参之漆拾壱 完了

 やや待つことになったものの、足の甲の上からエネルギーの塊が消えた。

 体の中をエネルギーが移動している気配がしているが、体に掛かる負荷はそれほど大きくはない。

 やがて、移動が全て終わったのか、手足からは何かが動くような気配がなくなった。

 感じる範囲でも、黒背景のイメージの私の様子でも、おかしなところは観られないので、最終ステップに進む。

 これまで数回踏み止まっていたアップデートを開始することを頭に描いた。

 エネルギー球の光が強すぎて、頭の中のイメージでは直接焦点を向けられていないので、現状どうなってるかを視認することは出来ない。

 にも拘わらず、現状がなんとなく頭に浮かんでいた。

 その浮かんできたものと全く同じ事が起こっているなら、今光の球は三つに分かれ、私、舞花ちゃん、志緒ちゃんの人形の制服に、それぞれ入り込んだらしい。

 輝きについてはどうなったかはわからないけど、三つに分かれて宿ったのなら、直接観られるかもしれないと考えた私は、小さな可能性に賭けて、視点を動かしてみた。


 視点の移動を選択したのは正解だった。

 既に制服に宿ったからなのか、それとも三つに分かれたからなのか、先ほどまでの全く観られにということは無く、光を纏ってまるで線画のように色を失った私の人形が身に付けている制服が目に入る。

 ただ、それ以上の変化は起こらず、時間と共に輝きは消え元通りの色が戻っていった。

 私の人形が来ているのは志緒ちゃんの人形の制服で、舞花ちゃんのものが私の、そして、畳まれておかれているのが舞花ちゃんのもので、視点を切り替えて確認した所、全ての制服がアップデートを終えたようで、光は消えている。

 見た目ではアップデートは完了したようだし、エネルギーが動いている気配も感じないので、私は思いきって目を開けてみることにした。


「リンちゃん!」

 私が目を開けると、待っていたのであろう舞花ちゃんが、キラキラと期待に満ちた目で声を掛けてきた。

 声には出してないけど、終わったのかを確認しているのは、雰囲気だけではっきりとわかる。

「一応、エネルギーの流れは止まってますし、暴走したり、途中でエネルギーが拡散したって事はありませんでした」

 私自身も明確に自分の能力とその動きを把握出来ていないので、どうにも要領を得ない内容になってしまった。

 当然、舞花ちゃんにとってもわかりにくかったのだろう。

 舞花ちゃんに真顔で「つまり?」と、説明の続きを催促されてしまった。

 とはいえ、情報不足は私も感じていたことなので「恐らくなんですが……」と前置きをしてから結論を口にする。

「無事、アップデート出来たと思います」 

「やったね! リンちゃん!」

 すぐに喜んでくれたことは嬉しかったが、本当に成功したかどうかは確認するまでわからなかった。

 そんな心理が表情に出ていたのか、それとも既に推測していたのか、舞花ちゃんは「じゃあ、触って試せば良いよね?」と笑う。

 その質問に対して、思わず硬直してしまって反応出来なかった私と違って、ここまで状況を見ていた志緒ちゃんが「成功したかどうか、リンちゃん自身もわかってないみたい……というか、確証がないだけみたいだから……」と口にした。

 その後の言葉が肯定に進むのか、否定に進むのか、予測が立たず、私も舞花ちゃんも志緒ちゃんを、ジッと見詰める。

 志緒ちゃんは私たちの視線を受け止めた後で「試して良いと思う。そもそもリンちゃんが触る人に悪影響が出るような機能を付けるわけがないしね」と言い切った。

 ウィンク付きで急に振られた私には「むっ」と声を詰まらせることしか出来ない。

 一方で、舞花ちゃんは「だよね! じゃあ、試しても良いかな!?」とワクワクした様子で()()()()()()尋ねた。

「悩んでいても仕方ないし、試してみましょう……ただ、最初は人形を使ってね」

 完全に主導権を握った志緒ちゃんの提案に、舞花ちゃんは「了解!」と元気よく敬礼付きで答える。

 対して志緒ちゃんは、私抜きで「制服の大きさが変わるか確認するために、私の人形を使って」と話を進めてしまった。

「それで、舞花のお人形が来てた制服に触ればいいんだね?」

「そういう事」

「了解っ!!」

 軽快な会話を交わした後で、舞花ちゃんは勢いよくマットの上に飛び乗ると、迷うことなくリンク用のヘルメットを装着する。

「じゃあ、リンクするね!」

 ヘルメットを被って数秒後にはそう宣言して、マットの上で横になろうとした舞花ちゃんを、志緒ちゃんが止めた。

「待って、マイちゃん!」

「え、なに?」

 止められると思ってなかったからか、舞花ちゃんの反応からは、不満と言うよりは驚きの方が強く感じる。

 志緒ちゃんは動きを止めた舞花ちゃんに対して「録画の準備をするから少し待って」と苦笑した。

 それを聞いて、暴走気味だった自分に気付いたのか、舞花ちゃんは「ごめん、慌ててた」とすぐに非を認める。

 志緒ちゃんは「気持ちはわかるわ」と返してから、ヴァイアの皆に配置の指示を出し始めた。

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