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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾参章 試行錯誤
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拾参之陸拾漆 相談

「そっか、触れないなら、感じ取れてるかどうかはわからないもんね」

 自分の手首をクルクル動かして、様々な角度に動かしつつ、舞花ちゃんはそう呟いた。

 どうにか理解して貰えたらしいので、椅子に座ったまま、お尻で体を回転させる。

「こうして足の甲を向かい合わせにしようとしても、エネルギー球同士はお互いを避けるように位置を変えるんですよ」

 椅子に座った状態だったので足の裏を外に向ける事で、足の甲を内側に向くようにした。

 当然足の甲の真上に浮かんでいたエネルギーは触れ合う方向に移動するのだけど、接触直前でそれ以上は近づかなくなる。

 更に両手は向き合わせているので動かしにくいものの円を描くように右手が下、左手が上に回転させ、右手の甲の上に浮いていたエネルギー球が下に下がるように調整しても、エネルギー球同士はくっつく直前までは近づいて、触れない距離で動きを止めた。

「まだまだ、わからないことが多いってワケだね」

 私の動きを観察していた志緒ちゃんが、苦笑気味にそう呟く。

 その笑みにひかれるように、私は「自分の能力なのに謎だらけだね」と苦笑で答えていた。


「リンリン様が私のエネルギーをどう感じ取っているか解明するのは後回しにするとして、制服のサイズ変更について相談したいんだけど……」

 つい好奇心でリンリン様の動きを話題にしてしまった私が、話を打ち切るのもどうかとは思ったけど、エネルギー球には一時停止を掛けただけなので、いつまでもこのままというのはいろいろ危ないと考えた。

 一時停止なのであって、安定しているわけではないし、未知の部分が多いので、早くアップデート用のエネルギーとして使ってしまうべきだろう。

「それで……今はアップデートに必要なエネルギーが手の甲から捻出されていたんですけど、これまでにない程の大きなエネルギー量だったんで、一時停止をしている状態なんです」

 私の説明に、志緒ちゃんは「ということは拡大縮小のイメージは十分だったてことだよね?」と尋ねてきた。

「そうですね。エネルギーが捻出され、アップデートが始まっていたので、少なくとも拡大縮小については十分だったと思います」

 ただ、やろうとしていることが無謀だったのか、詳細が足らなかったからか、どちらにしても、足りない部分を補うために大量のエネルギーを必要としている。

 アップデートを途中で止めたのは、一つは現状の報告のためで、もう一つは後者の理由なら、志緒ちゃんや舞花ちゃんと相談することで、エネルギーの必要量を減らせるのではないかと考えたからだ。

 というわけで、実に情けない話ではあるものの、二人のアイデアにはとても期待している。

「えーと、舞花達はどうしたらいいのかな?」

 私の期待する気持ちだけは伝わったのか、舞花ちゃんに困り顔で尋ねられてしまった。

 ただ、私としても諦めるつもりはないので、申し訳ないとは思いながらも「エネルギーの必要量を減らすアイデアが欲しいです」と返す。

 ストレートに要望を伝えたつもりだったんだけど、舞花ちゃんは瞬きをするだけで、固まってしまった。

 どうすれば上手く伝わるかと考え始めたところで、志緒ちゃんが助け船を出してくれる。

「制服のサイズが変わるイメージをもっと明確にする方法を考えて欲しいって事だよね?」

 具体的な志緒ちゃんの言葉に、私は「多分そうです!」と全力で頷いた。

「リンちゃん、多分って……」

 志緒ちゃんは吹き出し掛けたのか、慌てて口を押さえる。

 その反応で、私自身がわかってないのが丸わかりな返しをしたことに今更ながらに気付いて恥ずかしくなってしまった。

 そんな私に、舞花ちゃんは「今はどんな風な想像をしてるの?」と真剣な表情で尋ねてくる。

 真面目に考えてくれているんだとわかる舞花ちゃんの表情に、恥ずかしがっている場合じゃないと頭を振って、頭に思い浮かべていたイメージのことを説明した。


 私の説明を聞いた志緒ちゃんが「掌の上に乗った制服と、人形の目線で見た時の着られるサイズの制服……」と顎に手を当てて繰り返した。

「それにパン生地の伸びるイメージと、逆再生を合わせたんだね」

 そう言ってこちらを見た舞花ちゃんに「そうです」と頷く。

「つまり、そのどれかのイメージをより明確にすれば必要なエネルギー量が減らせるか持って事だよね?」

 続く志緒ちゃんの質問にも頷いて「はい。今の量だとちょっと多いなって思えて……」と返した。

 正直に言えば、エネルギーが拡散していない以上このまま進めれば問題なくアップデート出来るとは思う。

 ただ、体を通す時の痛みや、耐えなくてはいけない時間を考えると、もう少し量や時間を減らしたいのが正直なところだ。

 とても私的な理由なので、アイデアが出てこないようなら、諦める覚悟ではあるのだけど、私には思い付かないアイデアを提供してきてくれた二人なら、ひょっとしたらという思いが強い。

 諦めて、アップデートを再開すると宣言するタイミングを探りながら、私は二人の様子をジッと見守ることにした。

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