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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾参章 試行錯誤
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拾参之陸拾弐 イメージ不足

 アップデートに必要なエネルギーは捻出出来たので、続けて触れた人や人形に合わせてサイズを変える機能を盛り込むのだけど、集中が足りないのか、手の甲から捻出されるはずのエネルギーがまったく出てくる気配がしなかった。

 服のサイズを変えること自体普通に考えればあり得ないことなので、難易度が高いのは間違いない。

 ここで出来ないと諦めてしまうのは簡単だけど、できることなら舞花ちゃんの期待に応えたいという思いと、困難を成し遂げたいという挑戦心が、私を踏み止まらせた。

「集中するために、目を閉じます」

 舞花ちゃんと志緒ちゃんにそう宣言して目を閉じる。

 目を閉じることで、視界は黒一色に塗りつぶされ、間もなく私の全身が浮かび上がった。

 掌の間には先ほど集めたエネルギーが集まっているが、服のサイズを変えるのに必要なエネルギーは捻出されていない。

 一瞬、ダメということかとも考えたものの、服のサイズ変更が付与出来ない機能であるなら、最初に集めたエネルギーも霧散しているはずだと気が付いた。

 つまり、服のサイズ変化を付与するのに必要なエネルギーが捻出されていないのは、不可能だからではなく、何かが足りていないということなんだろう。

 急に光明が見えたことで、好奇心を刺激された私の中で、どうにか謎を解き明かして成功させたいという欲求が強くなってきた。


 まず、考えるのは何故エネルギーが出てこないかということだ。

 可能性として、私が一番に思い付いたのは情報の不足……イメージが足りていないのではということである。

 私のこれまでの能力を使った経験を元に考えると、イメージが足りていない部分については、自動で補われていた。

 詳細までイメージが出来ている時よりも、エネルギーが必要になるが、それでも具現化することが出来ている。

 つまり、不可能なものでなければ、エネルギーは捻出されるし、ムリヤリにでも付与してしまうのがこれまでだ。

 でも、今現在、エネルギーは集まらず、かといって不可能であることを示すようなエネルギーの霧散はしていない。

 という事実から考えて、私はストッパーが掛かっているのではないかと考えた。

 これまでの経験に加えて、自分の身を犠牲にするような無謀な挑戦をしないと意識したことで、エネルギー捻出にストップが掛かるという安全装置のようなものが働き出したのではないかと思う。

 だとすると、その安全装置が働かないようにすれば、服のサイズ変更は達成出来るはずだ。

 そう考えた私の中に、一つの解決策が舞い降りる。

『より細かくイメージをする』

 逆説的にはなるけど、イメージが足りていない部分を補うの尼、エネルギーが必要になるならば、詳細がイメージ出来ていればエネルギーは少なくて済むと考えたのだ。

 この考えが正しいかはわからないものの、試す価値は大きいと思う。

 ただ、この難問には情けないことではあるけど、私一人では対処出来そうにないので、頼りになる仲間に助けを求めることにした。


「服のサイズを変更する機能を付与するのに、もう少しイメージを明確化した方が良さそうなんだけど、手伝って貰っても良いかな?」

 自分一人でやるみたいな宣言をしているのもあって、少し言いづらく、また、反応が怖い発言だ。

 けど、そんなことは杞憂だと言わんばかりに、志緒ちゃんは「なに、なに? 何をリンちゃんに伝えたら良い?」と言ってくれる。

「舞花もリンちゃんの役に立ちたいから、わかること何でも答えるよ!」

 続けざまに舞花ちゃんからも同意の言葉を貰えて、ジンと胸が熱くなった。

「二人ともありがとう」

 私が感謝の言葉を伝えると、シャー君が「オイラもいるシャー」と発言し、ステラも「僕にも手伝わせて」と後追いで声を掛けてくれる。

 最後に、リンリン様も「無論、わらわもじゃよ。主様」と全員から協力の言葉を受け取れた。

 それだけでもの凄く嬉しくなって、思わず「うん。チーム一丸で頑張ろう!」と私は口走る。

 対して、誰一人欠けることなく「「おー」」と声が重なった。


「ズバリ、サイズが変わるイメージをしてみたらどうかな?」

 志緒ちゃんの発言だけでは、上手く頭に描けなかったので、私は素直に「詳しく聞いてもいい?」と返した。

 すると志緒ちゃんは、少し間を開けてから「制服に触れた瞬間、触れた人のサイズに合わせて大きくなったり小さくなったりする……その変化の仕方を想像するって言ったら良いのかな……」と、少し歯切れの悪い口ぶりで答えてくれる。

 頭の中のイメージを説明するのはとても難しいので、そうなってしまうのは仕方のないことだけど、残念なことに私の理解力では上手く飲み込めなかった。

 折角、アイデアをくれているのに、活かせないことが歯がゆくて、いっそ、志緒ちゃんにイメージを送り込んで貰う方がいいと考え始めたタイミングで、舞花ちゃんが「パンだ!」と呟く。

「パンダ?」

 耳にした言葉をそのまま疑問符付きで返した私の頭の中には、白と黒の動物の姿が浮かんでいた。

 この話の流れで何故という思いが強かった私に、舞花ちゃんが続けた言葉が、そうじゃないと完全否定する。

「えっと、リンちゃん、パンを焼いたことはある?」

 そう尋ねられた私は、自分の恥ずかしい勘違いを悟られないように「い、一応、ある、よ」と少々辿々しくなりながらも頷いた。

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