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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾参章 試行錯誤
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拾参之伍拾漆 交代

 マットから舞花ちゃんの手を借りて立ち上がった私は、そのまま立ち位置を入れ替えた。

 私と入れ替わりにマットに立った舞花ちゃんに手を差し出す。

 舞花ちゃんは私の手を取り、それを支えにしてマットに腰を下ろした。

 足を伸ばしスカートを整えて、マットに座った舞花ちゃんは、ゆっくりと上半身を倒していく。

 マットに横になった舞花ちゃんは、ヘルメットを弄ってリンクの準備に入った。

『次は主様が見守る側じゃな』

 言いながらリンリン様が頭に飛び乗ってくる。

「なんで私の頭の上に乗るんですか、リンリン様」

 別に首に負担が掛かるとか、嫌だというわけではないけど、一度はちゃんと聞いておかないとという思いで尋ねてみた。

『居心地が良いからじゃな』

 端的でサラリと言われた言葉だったけど、妙に心にジンと響く。

 ちょっと嬉しくて返す言葉を見つけられずにいると、リンリン様は『まぁ、舞花の本体を見守り記録する役目は果たせるのじゃ、居場所はどこでも良いじゃろ』と付け足してきた。

 どこか不安そうと言うか、私の反応をうかがっているような気がしたので「そうですね」と同意する。

 それで安心したのか、リンリン様は『うむ。どれ、早速記録を始めようかのぉ』と口にして私の頭の上でお座りの姿勢を取った。


 少し遠目になるが、志緒ちゃんが立ち、シャー君とステラが見守る机の上では、舞花ちゃんの人形が再び制服を脱いでいた。

 実験の第二弾として、舞花ちゃんは私の制服を着て、セレニィへの変身が出来るかをテストする。

 既に私の人形がアースリィに変身出来ているので、恐らく問題なく変身出来るはずだ。

 それは舞花ちゃんも理解しているので、制服を脱ぐ様子はどこか楽しげで、期待を胸いっぱいに抱え込んでいるのが伝わってくる気がする。

 私がそんなことを考えながら遠目に見詰めていると、舞花ちゃんが突然「そういえば」と口にした。

 一番近くにいる志緒ちゃんが、すぐに「どうしたの、マイちゃん?」と聞き返す。

『リンちゃんと舞花のは、同じ白のパンツとシャツの組み合わせだったけど、しーちゃんのは、黄色かったよね?』

 想像していなかった単語の登場に、思わず私の目は丸くなった。

 一方、志緒ちゃんは「ふっふっふ」と変な笑い方をし始めている。

「設定資料にあった秋穂ちゃんの下着のイメージを盛り込んだからね!」

 どこか勝ち誇った様な志緒ちゃんの言葉に、舞花ちゃんが『あーーーっ!』と声を張り上げた。

『舞花も見たことある! そうだよね、設定資料集に載ってたよね!』

 自分の発言に大きく頷いた志緒ちゃんを見た舞花ちゃんは『そっか、双葉ちゃんの設定もあったのに、失敗したぁ』と、わかりやすく落胆する。

 そんなタイミングで、チラリと私を見た志緒ちゃんが、舞花ちゃんの人形に視線を戻した後で「マイちゃんとリンちゃんがお揃いなのは、学校支給のパンツとシャツだからだよね」と口にした。

 まさしくその通りで、少なくとも私の人形が着ていた下着類は、普段着ているものと同じだと思う。

 意識していなかった部分なので、自動的にイメージが補われた結果、普段のものになったのだろうと想定したところで、私は不都合な真実に気が付いた。

 多分、舞花ちゃんの方も、学校から支給されていて着慣れているのがあって、私と同じようにいつもの組み合わせが再現されたんだと思う。

 そして、舞花ちゃんと私のものが一緒ということは、つまり、女児用の下着類だということだ。

 変に京一の時の下着になら無かったのは、幸いだと思うのだけど、一方で、私の普段が凛花用のものに切り替わっているということだと思う。

 無意識までが書き換わっていることに、今までの自分が消えていくような気がして、体が僅かに震えた。

 そんな状況に困惑している私に、舞花ちゃんの人形が『リンちゃん~』と声を掛けてくる。

 なるべく平静を装って、声に抑揚を付けないよう気をつけながら「なんですか?」と返した。

『あとで、下着もアップデートで替えられないかな?』

 ワクワクが伝わってくる舞花ちゃんの人形の発する明るい問い掛けに、私は平静さを保ちつつ「出来ると思いますよ」と告げる。

 すると舞花ちゃんの人形は即座に『それじゃあ、今、お願いしてもいいかな?』と両手を合わせて聞いてきた。

 私としては内心の動揺はあるものの、拒否する理由はないので「いいですけど……」と口にしつつ緯線を志緒ちゃんに向ける。

 その視線をどう受け取ったのか、志緒ちゃんは少し唸ってから舞花ちゃんの人形に向けて「青のアップデート、私がイメージを送っても良い?」と尋ねた。

『しーちゃんが?』

 自分でやるつもりだったのであろう舞花ちゃんの人形が首を傾げる。

「人形にリンクした状態で、アップデートをしたらどうなるか……試せたら良いかなって思ったんだけど……」

 志緒ちゃんが自分の考えを伝えると、舞花ちゃんの人形は『なるほど』とその意図を理解して頷いた。

「マイちゃんが自分でやりたい気持ちもわかるから……」

 志緒ちゃんがそこまで言ったところで、舞花ちゃんの人形は『うんうん。実験出来ることがあるなら、やっちゃおう! このままアップデートされたらどんな感じなのかも知りたい!』と言い切る。

 その後で二人揃ってこしらを見てきたので、私は頭にリンリン様が乗っているので、頷く代わりに目を閉じて「わかりました」と返した。

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