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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾参章 試行錯誤
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拾参之伍拾弐 仕切り直し

 舞花ちゃんの説明によると、主人公の双葉が変身シーンを覗かれそうになった時に、ステラに『待った!』と伝えて変身を止めたことがあったそうだ。

 つまり、ステラに私も待ったを掛ければ変身を止められるのでは無いかと二人は考えたらしい。

 とはいえ、本当に止まるかは試していないので、まずは止まるかを確かめることになった。

 そんなわけで、一端リンクの担当は舞花ちゃんに代わり、一度脱いだ制服を着直している。

 正直、舞花ちゃんの制服を着たままで試せば良いと私は考え、主張したんだけど、変身が止まったのか、変身が出来ないかの確認が出来ないという志緒ちゃんの指摘を覆すことが出来なかった。

 それならばと、私が自分の制服に着替え直す手も提案したものの、また脱いで着替えてを二回繰り返すことになるので、着るだけの舞花ちゃんがいいとなったのである。

 ちなみに舞花ちゃんの人形が試すのは、志緒ちゃんの制服は私の人形が着ているからだ。


『リンちゃん、しーちゃん、着終わったよ!』

 明るい声で舞花ちゃんの人形が報告してくれた。

「舞花ちゃんごめんね。折角脱いでくれたのに、また着てもらって」

 お手伝いで、舞花ちゃんの人形のお世話をしていた志緒ちゃんの横からそう声を掛ける。

 舞花ちゃんの人形はブンブンと大きく左右に首を振ってから、なんだか恥ずかしそうにもじもじしながら制服のリボンの上で両手を重ねて上目遣いで私を見てきた。

 どうしたんだろうと目を瞬かせると、舞花ちゃんの人形は『制服を着るの、双葉ちゃんになった気分で、楽しかったから……』と言う。

 人形の体なので、頬に赤みが挿したりはしないのに、真っ赤になったのが幻視出来るぐらいその仕草で恥ずかしそうな心境が伝わってきて、ちょっと可愛く思ってしまった。

 別にやましい気持ちではなかったけども、教師として……そう、教師として良くないと思ったので、可愛いという感想は飲み込んで心の奥に押し込んで封印する。

 今の私は、人形ではなく、元の体なので、声が震えないように気をつけて「楽しかったなら良かったです」と伝えると、前かちゃんは『えへへ』と笑いながら頬を掻いた。

 子於呂の奥底に封印した可愛いという思いがムクムク大きくなってきたが、ここで勢いに乗って解放すると花ちゃんになりかねないので、違和感がない程度の速度で視線を逸らす。

 問題は視線を逸らした先に、リンリン様がいて、前足で口元を隠し、こちらを窺っていた事だった。

 明らかに笑っていますという様子に、気持ちを見透かされた気がして、羞恥心で体が震える。

 が、それは私の思い込みでしか過ぎないので、目を閉じて心を落ち着けて、視線を舞花ちゃんに戻した。

「えっと、それじゃあ、もう試しますか?」

 無理矢理話を進めてしまおうという思惑で発した声には、思いの外、落ち着いていて、内心でホッとする。

 すると、舞花ちゃんはステラの方を見て『スーちゃん、変身出来そうかな?』と声を掛けた。

 ステラはその問いに対して『いつでもいけるよ、マイちゃん!』と短めの右腕で胸を叩く。

 舞花ちゃんの人形はステラに頷きで応え、志緒ちゃんと私を順番に見ながら『いつでもいけるよ!』と宣言した。


 志緒ちゃんがステラとシャー君を舞花ちゃんの人形を挟むように配置して、変身の過程を見守り、私とリンリン様が舞花ちゃん自身の体のそばに待機する形で、変身の途中終了が出来るかの実験に挑むことになった。

 具現化ではないので、どれほど感覚が正しいかはわからないけど、なんとなく変身の中断は出来そうな気がする。

 ただ、中断が出来るからといって、何か不測の事態が起こらないとはいえいないので、舞花ちゃん自身の安全のためにも、何かおかしな事が起こらないか気合を入れて見張るつもりだ。

 とはいえ、意識も感覚も人形の方に移しているからか、舞花ちゃんは見た限り寝ているように見える。

 そうして観察していた私の頭に、ふと、球魂はどうなっているんだろうという疑問が浮かんだ。

 これまではそんな疑問を抱いても、体の中にある時は、見えなかったけど、今朝、新たな道具を生み出している。

 試してみたいという衝動に背中を押された私は、変身をすぐにでも進めそうな志緒ちゃんたちに待ったを掛けた。


「特殊なコンタクトレンズなのね」

 志緒ちゃんに「そうですね」と返しつつ、片目ずつコンタクトレンズを装着した。

『特殊って、なにが特殊なの?』

 舞花ちゃんの純粋な問い掛けに、どう答えようかと思った時に、頭に閃きが起こる。

「えっと、エネルギーが見えるようになるんです」

 これはコンタクトレンズに備わっている機能の一つだ。

「具現化する時に頭の中では、エネルギーの流れやエネルギーが集まっているのを映像で見ることが出来るんですけど、肉眼では見ることができていなかったんです」

 映像などを通じて確認したことだけど、エネルギー状態を見られるのは私を含めて誰もいない。

 唯一私が目を閉じて瞼の裏に浮かべるイメージだけが、光の塊状態のエネルギーを見ることが出来た。

「なるほど、変身の途中で何か、エネルギーに乱れが出るか持ってことね」

 志緒ちゃんは私の話からそう結論付けたらしい。

 それを敢えて否定せずに「念を入れすぎかもですけど、舞花ちゃんの変化を見逃したくないですから!」と私の考えの根本にあるものを口にして応えた。

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