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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾参章 試行錯誤
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拾参之肆拾陸 実感

「汗はかいてないと思うけど……」

 そう言いながら、舞花ちゃんは脱ぎたてのヘルメットを私に手渡してくれた。

 私はまったく気にしてなかったのに、指摘されたことで、思わずヘルメットの内部に目が向いてしまう。

 すると、そんな私の視線の動きを見た舞花ちゃんは、ピクリと体を震わせた。

 妙な意識をさせてしまったなと思った私は「舞花ちゃんだって、私や志緒ちゃんの後に被ったけど、平気だったでしょ?」と考えすぎだよという思いを込めて、苦笑してみせる。

 けど、舞花ちゃんはネガティブ思考のスイッチが入ってしまったのか渋い顔で「リンちゃんとしーちゃんよりも興奮してたし……舞花だけ……」とブツブツ言い始めた。

 これは言葉を尽くしても駄目だと判断した私は、思い切ってヘルメットの中に頭を突っ込んで、大きく息を吸い込んでみせる。

「えっ? リンちゃん!?」

 流石に予想外だったのか舞花ちゃんが声を裏返らせた。

 安心して貰うために、なるべく明るい声で報告をしてみる。

「大丈夫です、汗のにおいどころか、電子機械のような匂いしかしないですよ」

 これで大丈夫と思っていたのだけど、舞花ちゃんは予私の予測に反して真っ赤になって固まっていた。

「あ、あれ……」


「その……ごめんなさい」

 予想外の反応に動揺してしまったがM、確実に私の生なので、まずは心を込めて謝った。

「お、怒ってるわけじゃないよ。ま、舞花もビックリしただけだし……」

 頬を赤く染めたまま、顔を手で仰いで言う舞花ちゃんの視線が、スッと私から逸らされていく。

 このまま話を続けても、事態が好転することはなさそうだと判断した私は「えっと、私も制服を脱がせますね!」と口にしてヘルメットを装着した。

 直前にいろいろあったせいで、少し顔が熱い。

 なんとなく汗ばんできた気もしてきて、ヘルメット内に熱が籠もっているような感覚も芽生えてきた。

 と同時に、ヘルメット内部からモーター音が聞こえてくる。

 機械を冷却するための機構だと思うけど、もしかしたら蒸してきたヘルメット内の熱気を払ってくれているのかもしれないなと考えたところで、うっかり、このまま熱が籠もったままだとどうなるのかを考えてしまった。

 考えに方向性が生まれると、加速度的に思考が進み出す。

 熱が籠もれば、自然と汗をかくだろうし、そうなればヘルメットの中に汗の匂いや湿気が籠もることになるのは自然なことだ。

 問題はそのヘルメットを三人で実験のために使い回していることだと、恐らく舞花ちゃんも考えたであろう考えに思い至った。

 次に使う人がいるという事実とこのまま汗をかいたらどうなるかという思考が重なり合って、体が熱をより帯びていく。

 直後、私はヘルメットをも0のスゴイ勢いで取り外していた。


「舞花ちゃん。遅ればせながら気持ちがわかりました」

 申し訳ない気持ちになりながら、舞花ちゃんにそう告げて頭を下げた。

 顔を上げると、苦笑交じりの優しげな舞花ちゃんの顔が出迎えてくれる。

 言葉を交わさぬまま、ギュッとお互いの右手で握手を交わした後、私はヴァージョンアップに取りかかった。

 イメージする機能は二つである。

 一つはヘルメットの内部をやや涼しいくらいに保つ温度調整機能だ。

 そして、もう一つは匂いを残さない脱臭……空気清浄機能である。

 アップデートするのは人形とのリンクに使っているヘルメットだ。

 マットに座った状態で足を伸ばす、スカート越しに太ももの上に置いたヘルメットに向けて両手を翳す。

 目を閉じて意識を集中すると、すぐに必要量のエネルギーが両手足の甲から出現した。

 閉じた目の視界、黒一色の世界に浮き上がった私の姿を、パソコンの中の3Dモデルのように視点を変えて状況を確認する。

 既に、コンタクトレンズと志緒ちゃんによる制服のアップデートと、多くのエネルギーを必要とした具現化に比べて、冷却と空気清浄の機能はそれほどエネルギーを必要としていないらしく、ソフトボールよりやや大きい程度のエネルギー球四つで足りるようだ。

 これをヘルメットに流し込むよう意識すると、四つの球はそれぞれに近接する甲から体内に入り込んで、掌に移動を開始する。

 真っ先に掌に移動するのは両手の甲から入り込んだエネルギーで、足から体を伝ってくるエネルギーが未だ手に到達する前に、ヘルメットに向かって注がれ始めた。

 足の甲に全てのエネルギーが入り込み、体を伝って手に移動している間に、ヘルメットは光り輝き宙に浮き上がる。

 全てのエネルギーが掌を離れヘルメットに吸収されたところで、私は間を置かずにアップデートをスタートさせた。

 まったく滞ることなくエネルギーを吸収したヘルメットは、アップデートの終わりを告げるかのように光を徐々に失っていき、やがて輝きの全てが失われる。

 太ももに、舞い降りたヘルメットの感触に遅れて、重量が伝わってきた。

 ゆっくりと目を開くと頭の中で描いていたのと同じ太ももの上に着地したヘルメットが目に入る。

 見た目はまったく変わっていないものの、アップデートは成功しているという確信があるので、私は早速装着してみることにした。

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