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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾参章 試行錯誤
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拾参之参拾漆 驚愕

 二人と、二人の手にしたそれぞれの人形を見て私が気付いたのは、足下の違いだった。

 舞花ちゃんの人形は膝丈の紺の靴下に茶色の革靴なのに、志緒ちゃんの方の人形は、黒いタイツを履いていたのである。

 二人の人形が『ミルキィ・ウィッチ』の制服を着ているのは、舞花ちゃんがイメージしたからで、そのイメージを与えられた人形から分裂させた志緒ちゃんの人形が、同じ制服を着ているのは、ある意味当然と言えば当然の話だ。

 けど、細部が違う以上、二体の人形のイメージが違っているということになる。

 一応、舞花ちゃんが予め私たちそれぞれに似合う靴下やタイツといったイメージを頭に描いていた可能性はあるけど、アップデートの時に送り込むとは思えなかった。

 それよりも、もう一体自分の人形を出現させることをイメージしていた志緒ちゃんが、靴下からタイツにイメージを変えたと考えるのが自然だと思う。

 でも、そうだとすると、志緒ちゃんは舞花ちゃんの想像した衣装を予測していたことになって、それはそれで驚きだった。

 これが那美ちゃんなら、舞花ちゃんのイメージを読み取ったと考えられるけど、志緒ちゃんは読み取る能力はない……と、思う。

 まさかの可能性を頭に浮かべて、志緒ちゃんを見ると、まさにそのタイミングで私を振り返り、にこりと笑った。

 体から飛び出すんじゃないかという勢いで心臓が脈打つ。

 そんな私に対して志緒ちゃんは「舞花ちゃんのイメージした服が水着とかだったら、合わなかったね。勘が当たったよ」と言って笑みを深めた。

 志緒ちゃんの話を聞いて、流石に確信があったわけじゃ無かったのかと思ってしまったが、その後で『私が何を考えていたのか』を完璧に見抜いていることに気付いて、背筋が冷える。

 やっぱり、志緒ちゃんも那美ちゃんと同じ能力を持っているんじゃないかと私が考えたところで「私のは、()()()()()()()」と断言された。

 正直、それが本当かどうか判断が付かない。

 もしも確かめるなら……そう考えた私の頭に、スカートのポケットにしまい込んだままの存在が過った。

 偶然の産物とは言え、考えを文章化出来るコンタクトレンズなら、真相を知ることが出来る。

 そう思ってポケットの中に手を突っ込んだが、指がコンタクトレンズのケースに触れたところで、流石に誠実じゃないなと考え直した。


 舞花ちゃんの人形から分裂させた自分の人形の足下を変更し、心を読んだかのように的確に私の考えを推測したことに、志緒ちゃんが心を読めるのではと思い、それを確認するために、人の考えを文章化して映し出せる機能があるコンタクトレンズを使おうとしたことを包み隠さず伝えると「別に使っても良いのに」と笑われてしまった。

「でも、ちゃんと伝えないと誠実じゃないと思うし……」

 私がそう返すと、志緒ちゃんは「リンちゃんって、ホント真面目だねー」と言われてしまう。

 けど、如何に親しくなっても人の気持ちをのぞき込むのは良くないことだ。

 それに、私は今はこんな姿でも、元々は教師である。

 一応と言われてしまうかもしれないが、それでも聖職者なのだ。

 だからこそ、この一歩は踏み込むわけにはいかないし、踏み込まず好奇心を満たすために、わざわざ包み隠さず伝えて、素直に真相を聞くことにしたのである。

「それで、志緒ちゃんは人の考えが読めるの?」

 いろいろ考えて話を複雑化しても意味がないので、さっさと踏み込んでしまった。

 志緒ちゃんは目を丸くしてから「そう来たか~」と笑む。

 その後で表情を引き締めた志緒ちゃんは「一応、さっきも言ったけど、予測というか、勘で

動いていたのが、正解かな」と言い切った。

「まあ、舞花ちゃんが『ミルキィ・ウィッチ』の制服を選ぶことまでは予測してなくて、ただ、思いつきで、タイツだけだったら、舞花ちゃんのイメージする服にまっったくあわないことはないだろうし、検証の実例を増やせるんじゃないかと思ったの」

 志緒ちゃん目線での説明を聞くと、確かに、考えを読む必要はないなと思う。

 なにしろ、制服を別の服に替えるという前提で考えると、靴下をタイツに変えるというイメージの書き換えは、志緒ちゃんが例えで言っていた水着でもない限り、有効になる可能性は高く、実際、違和感なく履かせることに成功した。

 予測の範疇はそう大きくないし、その中でも外れの少ない選択をしたと考えると、志緒ちゃんの付与したイメージは、もの凄く適したものだといえる。

 しかも、志緒ちゃんは、人形を一体から二体に分裂させるだけでなく、舞花ちゃんの人形をそのまま複製するのではなく、自分の容姿に変えて見せた。

 それに加えて、舞花ちゃんが提供してくれた新たな服のイメージを引き継いでいながら、靴下をタイツに替えるというアレンジまで効かせている。

 これに加えて、志緒ちゃんは私にもそのイメージを隠していた。

 つまり、終わってみれば完全に志緒ちゃんの手の内で転がされた形になるわけで、その手腕には恐ろしさすら感じてしまう。

 改めて志緒ちゃんの凄さに、私は思わず「志緒ちゃんって、本当にスゴイね」と呟いていた。

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