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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾参章 試行錯誤
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拾参之参拾参 舞花人形

 計測が終わると、具現化よりも大きな疲労感に、私は思わずマットの上で両手、両膝を突いて四つん這いになってしまった。

「リンちゃん、大丈夫?」

 そんな私を見かねてか、舞花ちゃんが心配そうに声を掛けてくれる。

 心配を掛けまいという思いもあって体を起こした私は「大丈夫です、ちょっと疲れただけです」と無理に笑顔を作って返した。

「なら、いいんだけど」

 困り顔の舞花ちゃんは少し間を開けてから息を吐き出す。

 私は気合で立ち上がって「大丈夫! 気持ちがゴリゴリ削られただけで、人形ならまだまだ具現化出来るから!」と明るい声で伝えることで、どうにか舞花ちゃんの困り顔を苦笑くらいまでには変えられた。

 が、私の発言に対して、想定外の動きが起こる。

「リンちゃん、余裕があるなら、私とマイちゃんのお人形を1/8サイズで作って貰っても良い?」

 一瞬何を依頼されたのかわからず「え?」と返してしまった。

 ただ、それだけでも私が理解していないことが伝わったらしく、志緒ちゃんは「私やマイちゃんがリンクした情報や、他の人が元になったお人形とリンちゃんのリンクの情報を追加したいから、未だ作っていない1/8サイズの私とマイちゃんのお人形を作って欲しいの」と言い直す。

 丁寧な言い直しのお陰で、私は素直に「なるほど」と頷くことが出来た。

 そうなれば、やることは自ずと決まる。

 舞花ちゃんに視線を向けて「じゃあ、まずは舞花ちゃんの人形から具現化したいと思います」と伝えた。

 最初こそ「えっ」と戸惑った声を上げた舞花ちゃんだったけど、すぐにその表情は笑顔に変わる。

「じゃあ、リンちゃん、よろしくお願いします」

 頭を下げた舞花ちゃんに頷きで応えてから、重要なことを確認することにした。

「舞花ちゃんは自分で仕上げをしますか? それとも、私が具現化した段階で完成にしますか?」

 一応、考え得る二択を出したのだけど、舞花ちゃんは少し悩んでから「あの、リンちゃん」と窺うような上目遣いで声を掛けてくる。

 どうしたかなと思いながら、首を傾げて「どうしました?」と尋ねてみた。

 舞花ちゃんはそこで、まるで意を決するように強く深く頷く。

 そして私をしっかり見詰めてから「あの、リンちゃん、アップデートって、負担が大きいかな?」と聞いてきた。

 私はその質問で舞花ちゃんがなにを聞きたいかを察したので、その予測を元に返事をする。

「一度具現化した後の微調整なら、負担はほとんどないですよ」

 舞花ちゃんはその返しに「じゃあ、リンちゃんが出してくれたお人形を見てから決めてもいい?」と再び上目遣いで尋ねてきた。

「もちろんいいですよ」

 私が快く頷くと、ようやく安心してくれたのか、舞花ちゃんの表情がフッと緩む。

 私は良かったと思いつつ「それじゃあ、早速具現化してみますね」と舞花ちゃんに伝えた。


 意識を集中し、私の中の舞花ちゃん像に従って、集めたエネルギー体に変化する目標の情報を注ぎ込んだ。

 サイズに関しても三体目なので、引っかかりはほとんどなく、変化はとてもスムーズに進む。

 球体から五つの突起が出現し、それぞれ頭と手足へと変化していった。

 合わせて球体も縦方向に伸び、胴体へと変化していく。

 今回作ってるのは美佳ちゃんという女の子をもした人形なので、私の時よりも気持ち早めに光のシルエットに制服を着せることにした。

 体のラインを隠すように制服で全身を包み込み、真っ先に具現化していく。

 あっという間に光が散っていったので、恐らく私の手の間には、透明なマネキンに着せられたように、制服だけが具現化しているはずだ。

 一応、光るまいかちゃん素体を上下左右に回転させて、制服が全て具現化したことを確認してから、靴下に靴を出現挿せて、正面やや上からの状態に固定する。

 続いて、光る体を舞花ちゃんの肌の色をイメージしながら着彩し実体へと変えていった。

 髪を生やし、髪を結び、顔立ちを思い浮かべ、小さな舞花ちゃんを形にしていく。

 そこで、未だ着せていない下着類をどうしようかと思ったが、敢えていろいろ考えずに、私が支給されているのと同じものを着せることにした。

 もし気に入らなければ、後で舞花ちゃんにアップデートして貰えば良いと割り切っての判断である。

 そうして、脳内のイメージの舞花ちゃん人形は纏っていた全ての光を散らして、本物そっくりの姿を出現させた。


 一息つき、目を開いたタイミングで、ステラが『スゴイ、マイちゃんとそっくりだね!』と燥ぐような声を上げた。

 対して、舞花ちゃんも「うん!」と嬉しそうに同意する。

 改めて具現化成功を実感した瞬間だが、ここでシャー君が余計な一言を口にする。

『オイラの計測と計算によると、舞花さんの人形の縮尺が1/8よりもやや大きいですシャー』

「どういうこと?」

 シャー君の発言に、舞花ちゃんが、コテンと首を傾げる。

 なんとなく、私の直感が嫌な気配を感知したタイミングで、リンリン様が『つまりじゃのう』と切り出した。

 途端に嫌な予感がもの凄い勢いで強まるが、リンリン様は視線が自分に集まったのを確認すると続きを口にする。

『舞花に身長を抜かされたくない主様は、縮尺を大きくすることで、舞花の人形が自分の人形より()()()小さくなるようにしたわけじゃ!』

 リンリン様の断言に、私は違うと反射的に抗議しようとしたのに、何故過去が出せなかった。

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