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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾参章 試行錯誤
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拾参之弐拾陸 確信

「まあ、味覚とか嗅覚はともかく、結構致命的なのは触覚と言うか、体で感じる感覚だと思うのよ」

 志緒先生の発言に、私と舞花ちゃんは顔を見合わせてからほぼ一緒に首を傾げた。

 舞花ちゃんもそうかはわからないけど、私には志緒先生の言いたいことが把握できていない。

 当然、そのことを聞けばいいとは思うのだけど、どう聞けばいいのか自体がすでに分からなかった。

 それが態度に出ていたのか、志緒先生は少し困った表情を浮かべてから、苦笑気味に話し出す。

「えっとね……例えば、物理現象として、エレベーターで上下の高速移動をした際に、どれくらいの圧力が体にかかるとか、気圧がどう変化するとかは、計算できるけど、それを感覚として体にフィードバックするのって、ものすごく難しいって話ね」

 ちゃんと言葉にされると、なるほどそういう事かと、志緒先生の言いたかったことが理解出来た。

 が、当然そこは志緒先生の話のスタート地点でしかないので、こちらの様子を踏まえた上で、話は次に進む。

「で、リンちゃん」

「はいっ!」

 名前を呼ばれるとは思っていなかったので、少し声が裏返ってしまった。

 その事に恥ずかしさを覚えた私だったが、志緒先生は完全スルーで自分の話を進める。

「あのお人形に意識をリンクさせる仕組みは、現状では難しい感覚をフィードバックする方法の一つの答えだと思う」

 志緒先生の発言に、舞花ちゃんが「こたえ?」と首を傾げた。

 対して、志緒先生は「解決策とか、解決方法って意味ね」とサラリと返す。

 端的で簡潔な説明だったが、上手く飲み込めなかったようで、舞花ちゃんの疑問は解消しなかったようだ。

「今のVR技術では再現出来ない部分を、お人形に意識を入れることで解決したのよ、リンちゃんは」

 志緒先生の言葉を聞いて、そんな意図は無かったものの、結果としてはそうなるのかと思っていたら「強引に」と続けられてしまう。

 まさか強引と評されるとは思っていなかったので、思わず固まってしまった。

 一方、志緒先生の話に納得したのか、あるいはようやく飲み込めたのか、私に視線を向けると、舞花ちゃんは「リンちゃん、スゴイね!」と笑う。

 スゴイと言って貰えたのも、笑顔を向けて貰ったのもあって、まあ良いかという気持ちになった。

「ありがとう、舞花ちゃん」

 お礼を伝えると、舞花ちゃんは少しだけ視線を逸らして照れる。

 そんな微笑ましく可愛らしい舞花ちゃんの反応にほっこりしていると、志緒先生がコホンと、少し大きめの咳払いをした。

 咳払いに反応して視線を向けると、志緒先生はどうも少し不満そうに見える。

 直後、志緒先生はそれが気のせいだったのだろうかと思う程、晴れやかな表情を浮かべた。

 思わず瞬きをする私に、志緒先生は「今回、私たちが目指すのは、そのお人形に変わるものをデジタル世界に作り出すことです」と宣言する。

 そして、志緒先生はその場にいるヴァイア達を見渡して「そのために、シャー君、リンリン様、そして、オリジンの力を借りる予定なの」と結んだ。

『オイラたちに任せるシャー』

『そなたらの手に負えぬというなら、力を貸すのもやぶさかではないのじゃ』

 言葉としては対照的になのに、どちらも協力してくれそうなのが微笑ましい。

 そんな事を考えたのが察知されたのか、私に駆け寄ってきたリンリン様が、私の体を駆け上がり頭の上に着地すると、恐らく前足で頭を叩き始めた。

「あ、リンリンちゃん、リンちゃんをイジメちゃ駄目だよ!」

 すぐに私を庇ってくれる舞花ちゃんだが、リンリン様は『これはすきんしっぷじゃ。仲が良いゆえにしておる親愛の情の現れじゃ!』と私の頭の上で悪びれること無く言い切る。

 実際に痛みがあるわけでは無く、この前足で私の頭を叩くのは、不満のアピール程度の可愛いものだ。

 と言うわけで、心配げに私を見るまいかちゃんに「リンリン様の言うとおりだと思う」と返す。

「なかよしだからかー」

 舞花ちゃんの溜め息交じりの呟きに「ちゃんと痛くないようにしてくれてるよ、リンリン様」と安心させるつもりで、そう伝えた。

 目論見通り舞花ちゃんはホッとしたように笑みを浮かべたが、その代わりに私を叩きリンリン様の前足の速度と回数が増える。

 そのまま、しばらくの間、私の頭の上に陣取ったリンリン様の前足が動きを止めることはなかった。


「それで、しーちゃん、どうするかは思い付いてるの?」

 舞花ちゃんの発した質問に、志緒先生は顔全体を嬉しそうな笑顔で一杯にすると「もちろん!」と言いつつ、大きく頷いて見せた。

 それだけで、アイデアへの自信が感じ取れる。

 私や舞花ちゃんの目が話の続きを求めて自分に集まってきたのを感じたのであろう志緒先生は「昨日の実験内容を確認したんだけど」と切り出した。

「このヴァイザーを通じて、お人形とリンクする仕組みなんだけど、この時にデジタルデータの送受信があったのよね、シャー君?」

 説明の途中で名前を出されたシャー君は、今日に前足……前ヒレを手のように動かして『その通りシャー』と返す。

 それに頷いた志緒先生は「このデータを解析して、演算でも出力出来るようになれば、このヴァイザーの能力で、感覚として受け取ることが出来るんじゃないかと思うの!」と言い切った。

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