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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾参章 試行錯誤
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拾参之弐拾伍 質疑応答

「皆はさっき私が言った『フルダイブ型』のVRが、現状では無理な理由はわかる?」

 志緒ちゃんの問い掛けに、ヴァイアを含めた私たちの視線が志緒ちゃんに向かった。

 頭の中では、いろいろ不足しているんだろうなと、漠然とした理由はわかるが、端的に示す言葉が浮かばない。

 そんな私とは対照的に、何かに思い至ったらしい舞花ちゃんが元気良く手を挙げた。

「はいっ! しーちゃん先生!」

「何かね、舞花君」

 舞花ちゃんの海苔に合わせて少し偉そうに志緒ちゃんが聞き返す。

 対して舞花ちゃんは、真面目な顔で「専用の機械やゲームが未だ発売されていないからです!」と言い放った。

 今この場で求められている答えではないけども、確かにそれはそうだなとは思う。

 このあながち間違いというわけでもない答えを、()()()()()どう裁くのか気になって、私はやりとりの幾重に注目した。

「確かに、それはそうだね」

 まずは頷きから入った志緒先生は「機器類やソフトが販売されていなければ、遊べないのは当然だね」と続ける。

 しきりに頷きで返す舞花ちゃんに、志緒先生は「じゃあ、発売されないのは何故かな?」と尋ねた。

「えっと……」

 舞花ちゃんは少し考えると「未だ機械が出来てないから……だよね?」と自信なさそうに返す。

「そう!」

 大きく頷いた志緒先生は「出来てない機械を商品として作ることは出来ないもんね」と笑みを浮かべた。

 基本肯定スタイルの志緒先生だけど、質問を通じて思考の方向を付けているのは上手いと思う。

 ただ、ヒントを出し続けて、正解を重ねさせることで、自信を与えることは出来る反面、レールの上を進むことに慣れてしまうので、思考力の衰えを招いてしまう可能性が高いのだ。

 流石にそこまでは目が向かないだろう問い予測と、そこも綺麗にフォローしてほしいという希望で、私は内心でワクワクしながら志緒先生の次なる発言を待つ。

「でも、マイちゃんも知ってると思うけど、VRってもうお店で売ってるよね?」

「うん!」

 志緒先生の言葉に、舞花ちゃんは迷いなく頷いた。

 もしかすると、VRだとか最新家電とかに類する知識は、私よりも目の前の二人の方が多いかもしれないと思いつつ、話の進行を見守る。

「でも、フルダイブじゃない」

 志緒先生の言葉に頷きつつ、舞花ちゃんは「えっと、今売ってるVRはゴーグルと、両手に持つコントローラー……だから……」と考えながら、思い付いたであろう事を言葉にしていった。

 その後で、口を閉じて深く考え始める。

 志緒先生は舞花ちゃんの思考を邪魔しないように、熱い視線を向けながらも、ジッと答えが出るのを待っていた。


 私も、志緒先生も、視線を動かすことなく、しばらくの間、舞花ちゃんが考えている姿を見守っていた。

 舞花ちゃんがどんなことを考えつくのだろうかという好奇心に突き動かされて、ずっと傍観姿勢だったが、ここでふと自分も考えた方が良いのではということに気付く。

 翌々考えれば、志緒先生の問い掛けに真っ先に答えたのが舞花ちゃんだったから、二人の会話で状況が進行していたわけだけど、私も出題された側で、自分なりの答えを出さないといけない立場だ。

 ようやくその事に思い至って、慌てて考え出そうとしたところで、舞花ちゃんが少し大きめな声で「匂い!」と口にする。

「匂いですか?」

 思わず聞いてしまった私に、舞花ちゃんの視線が向いた。

 目が合った瞬間頷いた舞花ちゃんは「今のVRとフルダイブの違うところは、匂いだと思ったんだ!」と表情を輝かせて言う。

 その言葉に、何故、匂いなのかという疑問を抱いた私は、同リアクションをして良いのかわからず固まってしまった。

 一方、志緒先生は「アニメの中で、主人公が『風の匂いがする』って言ってましたね」と柔らかく笑いながら頷く。

 劇中のセリフに絡んだことなのかと、納得と共に、すぐに返す志緒先生の感心していると、舞花さんはそれを切っ掛けに話し出した。

「そうだ……後、風……風も感じられるし、走る感覚とか、ジャンプする感覚とか……」

 嬉しそうに言葉を重ねる舞花ちゃんを見ながら、志緒先生は満足そうに頷きを繰り返す。

 そうしているうちに、舞花ちゃんがピタリと発言を止めて固まった。

 舞花ちゃんの突然の変化に、何があったのだろうかという小さな不安が、私の中に芽生える。

 が、その不安が膨らむよりも先に、舞花ちゃんは「今のVRの機械だと、匂いとか、体で感じるものとかがわからない……()()()()()()んだ!」と興奮気味に言い放った。

 それを聞いた私は『再現出来ない』という表現に衝撃と共に『それだ!』という手応えを覚える。

 だが、志緒先生はそんな私よりはるか上の視点で考えていることを示すように、ゆっくりと話し出した。

「そう……今市販されているVRシステムやアミューズメント施設にある様な体感型のシステムでは、未だ再現出来ないものが多い……体感として……体で感じる情報として得ることが出来るのは、視覚と聴覚、一部の触覚……もちろん、今まさに他の感覚に影響を与えるものについては研究が進んでいる……けど、()()()()()そこを再現できる技術はない……だから、現状のVRでは、フルダイブは出来ないってことね」

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