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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾参章 試行錯誤
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拾参之弐拾 端末

 朝食を済ませたところで、花ちゃんに結花ちゃんに言われた連絡アプリの件を相談してみると、すぐに説明があった。

 連絡アプリはなんとこの学校の関係者専用のものらしい。

 神世界や神格姿など、いろいろと秘密が多いため、その漏洩を防ぐには一般の連絡用アプリの使用は厳禁ということで、代わりになるものが用意されたということだった。

 また、このアプリは学校……というか、国に識別番号を管理登録されているスマホやタブレットでないと、使用どころか、インストールすら出来ないらしい。

 そのため、個人専用の端末が出来るまで、私の分は見送りとなっているそうだ。

 理由は簡単で、私用の端末が『教師用』ではなく『生徒用』に変更になったからである。

 用意周到な雪子学校長や花ちゃんの手配なら、予備くらいありそうだと思ったのだけど、生徒用の端末には様々な機能が付与されていて、製造コスト的に言うと、予備を準備しておけないくらいの金額になるそうだ。

 簡単に説明して貰った機能だけでも、小さな破損や衝撃でもアラートが発信される機能や、学校の敷地内を一歩でも越えると現在位置情報を複数の通信方法を用いて常時発信する機能など、過剰とも思えるものが搭載されている。

 更に常時持ち歩くスマホからは、一日の行動を追える様に、校内移動やその際の歩数、歩幅、移動速度などの様々な行動データの記録送信なども行っているそうだ。

 ちなみに、そんな厳重監視を受けている生徒の中で、唯一私だけが野放しの状態なので、校内設置のカメラなどで、逐一行動を見られているので、雪子学校長、月子先生、花ちゃんのいずれかが、即座に対応出来る状態になっているらしい。

 ただ、安全を確保し、緊急時に即応するための監視状態というのは、相手に伝えない方が良いのでは無いかと思い、花ちゃんにストレートに聞いてみたところ、曖昧な笑みで応じられた。

 その上で「だとしたら、何故教えたかわかりますか?」と質問される。

 単純に考えて思い浮かんだのは『皆知っていること』だからじゃ無いかと思った。

 なにしろ、生徒の中には那美ちゃんがいるので、データを取っていることは簡単に伝わっているだろう。

 本来は伏せて置いた方が良い事であっても、筒抜けならば隠す必要が無いし、むしろ隠す方が信頼を損なう危険性が高いのではと、私は推測した。


「私の勘ですが……」

 急に花ちゃんがそう切り出したので、私は思考を止めて視線を上げ、彼女を見た。

 何を言うのだろうと思っていると「リンちゃんのことなので、きっと的外れなことを考えてそうなので、ちゃんと言っておくことにしますね」と、言い出す。

「的外れって……」

 流石にそれはないだろうと思った私は『ことはない』と続けようとしたのだけど、それより先に花ちゃんの発言が遮った。

「皆見てるんだから、むやみやたらに着替えを始めてはいけないんです! 良いですか、リンちゃん。行動が録画されているんですよ? 私の動画コレクションにリンちゃんの玄関でのお着替えを追加されたいんですか?」

 それは想定外の一言に尽きる発言で、私は思わず目を丸くする。

 私がそのまま固まっていると、花ちゃんは「まあ……是非にってことなら、話は別ですが?」と言い出した。

 腰を落として、下からのぞき込む様な上目遣いをして「そ、そういう要望があるのなら、私もやぶさかではないのですけど……」と続ける。

 そこで我に返った私は「今後は気をつけるので、辞めてください」と丁寧に断わることにした。


「というわけで、リンちゃんの端末が出来るまでもう少し掛かるから待ってね」

 不服そうにいう花ちゃんに、私は「わかりました」とだけ返した。

 下手に指摘したりすると、想定外の方向に話が向かっていきそうなので、間違っていないと思う。

 そう思って花ちゃんの次の行動を待っていると、盛大に溜め息を吐かれてしまった。

 花ちゃんはその後でキリッと表情を引き締めてから、真っ直ぐ私を見る。

「動画の管理、遠慮無くまかせてくれて良いのよ?」

 そう言われた私の頭に、一つの閃きが訪れた。

 私はそれをそのまま口にする。

「動画の管理は『オリジン』に任せることにします!」

 花ちゃんは私の発言を聞くなり、目を丸くしてから、再び大きな息を吐き出した。

 その後で花ちゃんは「連絡アプリは使えませんが、リンちゃん用の機材が揃うまではこれを使ってください」と溜め息を繰り返しながらも、私にタブレットを手渡してくれる。

「昨晩、リンちゃんに預けたものですよ」

 花ちゃんにそう言われて、そういえば、保健室に置きっぱなしにしてきてしまったなと、手元のタブレットに視線を向けた。

 タブレットを受け取った私は「じゃあ、しばらくお借りします」と伝える。

 すると、花ちゃんは「今後、授業で動画を用いると、月子先生が言っていたので、これもお渡ししておきます」と、イヤホンを手渡された。

「授業で動画を使うんですか?」

 私がイヤホンを受け取りながら聞き返すと、花ちゃんは「いつまでも問題集ってワケにはいかないということで、授業風景を録画した動画を見ながら授業を進めるそうです」と説明してくれる。

「なるほど」

 私がそう口にして頷くと、花ちゃんは「動画は月子先生が用意したもので、出てくる講師は月子先生だけで無いそうなので、楽しみにと言ってました」と伝言を伝えてくれた。

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