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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第弐章 変化変容
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弐之弐拾壱 連想ゲーム

 髪を結び終えて、一段落した後、結花さんと舞花さんは軽く話してから部屋を出て行った。

 別に二人と過ごすのが嫌だったわけじゃ無いけれど、それでもぼろが出ないようにと意識していたせいか、二人が帰ってからしばらくしたところで、私は盛大に溜め息を零してしまう。

 すると、クスクスと笑いながら花子さんに「お疲れ様でした」と労いの言葉を掛けられてしまった。

「……上手く立ち回れた自信が無くて、情けなくなります」

 今更隠すことでもないので、素直に感想を口にすると、花子さんはまたも笑う。

 それから私の肩に手を置いて「女の子初心者にしては十分合格点だったと思いますよ」と評価してくれた。

 花子さんの評価に、嬉しさ少しと大きな安堵の気持ちが湧いてくる。

 気持ちが落ち着いたところで、僕は気になっていたことを花子さんに聞いてみた。

「えっと、私の名前、勝手に決めちゃって良いんですか?」

 言外に雪子学校長に相談しないでという意味を込めて尋ねると、花子さんは「まだ国の方には報告を上げていませんから、問題ないですよ」とシレッと言い放つ。

 普通の話の流れで『国』と言われるとつい身構えてしまうけど、自分の身に起きた事や子供達がやっていると言うことを考えれば、むしろ出てきて当然の存在だとも思えた。

 なので、私はそれ以上『国』に対して考えるよりも次の話題に移ることにする。

「ところで、私の名前は、何で卯木凛花なんですか?」

 私の質問に対して、花子さんは「話の流れで思い付いたモノにしちゃいました」と小さく舌を出した。

「じゃあ、直感……みたいなことですか?」

「直感というか、話の流れで、リンちゃんに決まりそうだったので、『花』を付けてみたんですよ。結花さんも舞花さんも、リンでは終わらないと思ってましたし、自分たちと同じような感じの組み合わせだと親近感が増すと思ったので」

「なるほど、確かにそうですね」

 あの短時間でそこまで考えていたのかと、花子さんの言葉に私は深く頷く。

 咄嗟にそこまで考えられるなんて本当にスゴイと、私は心から感心した。

 そんな私を見ながら、花子さんはクスリと笑う。

 何だろうと首を傾げると、花子さんは「あの二人とだけじゃ無くて、私ともお揃いなんですけど、ね」と笑みを深めた。

 全然思い至ってなかった事実に、私は「あっ」と声を漏らす。

 申し訳なさを感じながら花子さんを見れば、拗ねたような顔で「気付いてなかったんですね」と言われてしまった。

「ご、ごめんなさい! 別に花子さんのことを忘れてたとかじゃ無くてですね。いや、忘れてたのかな? いや、共通項に頭が回ってなかったというか?」

 花子さんにわかって貰おうと口にした言葉は、しどろもどろで文章をなしていない。

 そんな私に花子さんは「大丈夫ですよ、落ち着いてください」と肩に触れながら囁きかけてくれた。

 直後、理解して欲しいという焦りで状況が見えていなかった自分に気が付いて、私は呆然とする。

「また気持ちに……」

「それもゆっくり慣れていけばいいですからね。未だ女の子になったばっかり何です」

 私の前にしゃがみ込んで、視線を合わせてくれた花子さんが優しく頭を撫でてくれた。

 頭に感じる優しい手つきを感じるだけで、私はホッと胸を撫で下ろす。

 自分が少し落ち着いたのを実感して「花子さんありがとうございました」と告げてから、もう一言付け足した。

「花子さんと同じ『花』の字が名前についてるの……凄く嬉しいです」

 少し気恥ずかしかったけど、ユウキを込めて付け足した言葉に、花子さんはフッと微笑む。

 それから「私もですよ。だから名付けたのです」とポンと自分の胸を叩いた。


「ところで、卯木は何か由来があるんですか? 確か、舞花さんが言ってたと思いますけど十二支由来ですか?」

 私の質問に対して、花子さんはクスクスと笑いながら「リンちゃんがウサギさんみたいだからです」と返してきた。

「え?」

「その少し臆病に見える小動物みたいな可愛らしさ。護って上げたい気持ちにさせる雰囲気がウサギさんみたいだなって思ったんです」

 スラスラと花子山岳地にする内容があまりにも恥ずかしくて、私の顔に血が上っていって、体温が急激に上がっていく。

 ボーッとしそうな沸騰寸前の頭で、私は花子さんの言葉を止める為に浮かんだセリフをそのまま解き放った。

「花子さん、私キツネです!!」

 直後、私の目論見通りに、花子さんはピタリと動きを止める。

 それから少しの間を挟んで「そこですか?」と目を幾度も瞬かせて尋ねてきた。


「う~~~」

「済みません。揶揄いすぎました」

 自分の行動の恥ずかしさに唸る私に、花子さんが困り顔で謝ってきた。

 私は少し不機嫌にナリながら「揶揄ってたんですか?」と聞き返す。

 すると、花子さんは「連想ゲームだったんですよ」と口にした。

 どういう意味だろうと思いながら「連想ゲーム?」と聞き返すと、花子さんは静香に頷く。

「京一、林田先生のお名前『きょう』から『きのう』を連想したんですよねー」

「あっ!」

 花子さんの言葉に、私は想像もしなかった裏側に辿り着いた。

「きのうを逆さから読んで、うのき……ですか!?」

「正解です!」

 花子さんはふふふと笑って頷いたけど、まさかそんな理論展開で自分の名前が決まったとは思っていなかったので、私は驚きで目を瞬かせる。

 でも、段々おかしさがこみ上げてきて、いつの間にか私は大笑いしてしまった。

 笑い終えた頃に、花子さんに「嫌でしたか?」と尋ねられたけど、自分では悩んで決まらなかっただろうし、とっさの機転に助けられたし、そもそも面白かったので、嫌ということは無い。

 だから、私の答えはこれしか無いという思いを込めて、私は返事をした。

「いえ、気に入りました!」

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