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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾弐章 構築新生
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拾弐之陸拾参 ワイヤー

『慌てるのはわかるが、相談してからにしてほしいな』

 スピーカー越しの月子先生の声が穏やかな口調で言うが、その間の入れ方は経験上、少し怒っている時の口調(もの)だった。

 とはいえ、切っ掛けは私だし、月子先生が軽い怒りを抱いているのも、心配を掛けた結果なので、申し訳ない気持ちで」「軽はずみな行動でした」と謝罪する。

 対して、月子先生は『まあ、何かが途絶えたって感覚からの連想で、自分との体の繋がりが切れたと連想したなら、慌てるのは理解出来るけどね』とフォローしてくれた。

 それから少し間を置いて、月子先生は『実験再開と言うことで良いのかな?』と質問を投げ掛けてくる。

 ウーノの体に意識を戻したのも、そのつもりだからなので、私は気持ち大きめの声で「はいっ!」と返事を返した。


 施設を稼働して貰い、それぞれの掌に発生させた吸着する空気で体を浮かせた私は、足が地面と平行な状態から上に浮き上がらないことが、おかしいことに気が付いた。

 始めに試した時は、それこそ吹き飛ばされなかったことに安心していて考察が足りていなかったけども、強烈な風圧を受けながらも足の浮上が地面と平行で留まっているのがおかしい。

 実際、動画で確認したスカイダイビング体験施設の映像では、足は曲がっていて、少なくとも力を入れなければ真っ直ぐな状態に出来そうに無かった。

 風圧を受けているので常に後ろにそらそうとする力が働いているはずで、骨のある部分はともかく、関節部分には曲げようとする様に力がかかるはずである。

 にも拘わらず、床に寝そべる様に力を込めずに足を真っ直ぐ伸ばしていられるのは、おかしいと言わざるを得なかった。

 私はこれらのことから、その原因というか理由は、那美ちゃんの気体の服にあるのでは無いかと思う。

 一般的なスカイダイビング用のスーツよりも、高性能何だろうなと思うと、那美ちゃんの想像力のたくましさに尊敬を覚えた。

 エアバッグを含めて、護って貰っているという事実に、嬉しさと安心感を覚えたが、ふと視線を体に向けた時に見える肌色に、これだけのことが出来るのに、透明で見えない仕様にしてしまった那美ちゃんに、何故という思いを抱いてしまう。

 今度からはちゃんとした服にして貰おうと改めて思ったところで、次のステップに進むことにした。


 もの凄い風圧の中にあっても、私の発した声はしっかりと届いているのは既に確認しているので、特に声を張り上げること無く、次のステップに進むことを宣言した。

「今から、左手の吸着を解除します」

 対して、月子先生から『了解』という声が返ってきたが、風圧と送風機の轟音で少し途切れて聞こえる。

 この事態を既に想定していたのであろう月子先生からは、正面の数字を映し出すライトでもアラビア数字の『8』が表示されゴーサインが出されていた。

 それらを確認した私は左手に視線を向けて、頭の中で吸着の解除を命じる。

 直後、ピッタリと金網にくっついていた左の掌が浮き上がり始めた。

 やはり那美ちゃんの気体で出来た服の効果なのだろう、急激に跳ね上げられることは無く、足と同じく位置まで持ち上がると浮上することも圧を感じることも無くなる。

「左手が安定したので、右、生きます」

 私が続けて右手も離すことを宣言すると、目の前の数字が一度『1』に戻ってから『8』に変わった。

 その上で『了解』と月子先生からの声が届く。

 一度、腰に巻いた安全帯に自由になった左手で触れ、その損材を確かめた。

 具現化した時のイメージ通りに安全帯から先の床の金網と繋がるワイヤーは、最短に縮んでいる。

 那美ちゃんのイメージで具現化させたものと違い、自分でイメージしたものだけに、実証は出来ていないが、ここまでは想定通りに機能しており、信じるにアタイするはずだ。

 そう考え、一拍置いて覚悟を決め直してから、私は右手の吸着を解除する。

 だが、可能性の一つとして考えていた急激な浮上や弾き飛ばされる様なことは無く、左手と変わらないゆっくりとした速度で右手が浮き上がってきた。

 風圧に支えられ少し浮いた状態で私は大の字になる。

 床の上や布団の山に飛び込むのよりも、さらに柔らかな感触が胸やお腹だけで無く、手足からも伝わってきた。

 一方で、肌が震える感覚は、気体でできた服からは露出している顔だけしかしない。

 改めて期待の服の凄さを感じながら、自由に動かせる様になった両手で、腰に巻かれた安全帯に触れた。

 覚悟を決める意味も含んで「よし」と口にした私は、手を安全帯に剃って滑らせ、ワイヤーへと触れる。

「伸びろ!」

 声に出して触れた直後、僅かに光を発したワイヤーが伸びた。

 変わらず地面に対して平衡を保っているが、ワイヤーが伸びたことで金網との間に距離が生まれる。

 既に、両手両足を前に向けても、床には届かないであろう距離に離れているものの、安定した状態で体は浮いていた。

 私の意思によって長さを伸ばしたワイヤーは、再び最短となっている。

 私はワイヤーに触れたままで、次の実験を開始した。

「縮め!」

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