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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾弐章 構築新生
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拾弐之伍拾捌 変化

 体のあちこちからエネルギーが絞り出されて、体を伝って流れ出す感覚を、私は確かに感じ取っていた。

 頭の中で描いているイメージでは、足先や頭から、小さな光の粒が出現し、くるぶし、すね、ふとももと上がってくる光、頭から顔、首とさがってくる光が胸の辺りで合流して、腕に流れていく。

 光量は明らかに普段より少なくその光点の数も簡単に数えられる程少なかった。

 が、逆にこれまでと違うという事実が、元の体では無く『ウーノ』の体で起きていると思わせてくれる。

 そのままエネルギーを流し続けていると、段々と具現化に辿り着けそうだという感覚が強まってきたので、考えるのは辞めにしてより意識を集中させた。


 元の体よりか細いエネルギーの流れは暴走の恐れこそ感じないものの、逆に途切れてしまいそうなのが難しく、意識を集中したお陰で、どうにか乗り越えられそうといった状況だ。

 能力の使用にはイメージが大きく影響するのは、これまでの経験で間違いないことなので、大丈夫、成功すると自分に言い聞かす様に頭の中で繰り返す。

 それが功を奏したのか、体から集まってくるエネルギーの流れに少し力強さが出てきた。

 流れが出来ると、そこからはあっという間に状況は進む。

 両手の間に集めたエネルギーの塊が、想像したビーチボールよりもやや小さいサイズで光る球体として、手の間に出現し、それと共に体を伝うエネルギーの流れが止まった。

 ここだと思った私は、手の間のエネルギーの塊に、ビーチボールに変化することを命じる。

 ビニール特有の艶のある表面とつるつるした手触り、空気を送り込む挿入口とその蓋部分の構造、絵柄はベタかもしれないけど、最初に浮かんだスイカ模様で、緑一色の全体に黒の帯が入り、一カ所だけ赤い果肉と白い縁、黒い種が描かれているデザインでイメージを固めた。

 直後、体全体に何かがのしかかる様な感覚がして、そのすぐ後には感覚毎からだから遠ざかっていく。

 ポスポスというどこか間の抜けた音に、何が起こったのかすぐ知りたいという衝動に駆られたものの、どうにか踏み止まって、頭の中のイメージではエネルギー体が掌の間から消え、具現化が完了しているであろうことを確認してから目を開いた。


「え?」

 音のした方に視線を向けると、そこには床に転がるスイカ模様のビーチボールが転がっていた。

 私が思わず間の抜けた声を発してしまったのは、それが()()()()()()()()()()である。

 手に収まるサイズをイメージしていたのに、出現したのは人形サイズでは無く、人間サイズだったのだ。

「単に、手に収まるってイメージしただけだと、元の体……人間サイズになるみたいです」

 結果的には失敗であっても、新たな情報であることには変わりないので、報告を上げると、すぐに東雲先輩がコメントを打ち込んでくれる。

「とりあえず、その体でも具現は出来ると考えて良いのかな?」

 床に落ちていたビーチボールを拾い上げながら、月子先生がそう尋ねてきた。

 その質問に私はどう答えたものかと私は首を傾げる。

 目を閉じていたので、目撃出来たわけでは無いけども、具現化直後に体に何かが押し付けられる感覚、その後、耳にした音から推測するに、私の上に出現したビーチボールがそのまま私にのしかかる様に落下して、さらに床に落ちて転がった筈だ。

 だとすれば、この体での具現に成功したと良いのでは無いかと思う。

 ただ、エネルギーの供給源として、私の本来の体が動きを見せていた可能性もあるので、そこは確認した方がいいかと考える。

 そのタイミングで、那美ちゃんが「リンちゃんの体は寝たまま動きは無かったわぁ」と教えてくれた。

「ありがとう、那美ちゃん」

 必要な情報を抜群のタイミングで提供してくれた那美ちゃんにお礼を言ってから私は突き古銭制に視線を向ける。

「恐らくですが、この『ウーノ』の体でも具現化が出来たんじゃ無いかと思います」

「根拠を聞いてもいいかな?」

 那美ちゃんからの報告は月子先生も聞いているので、私の体感を中心に答えることにした。

「一番大きな違いは、操れるエネルギーの量に差があったことですね……この少し前に施設のアップデートをしましたけど、その時と比べると、全身から手に集めるエネルギーの総量が少なくなっていた感覚がありました」

 私の報告に対して、月子先生は「それは具現化するものとアップデートするもののサイズの差ということではないのかい?」と尋ねてくる。

「その可能性はゼロでは無いですが、体を移動するエネルギーの流れに淀みというか、引っかかりがあったので……」

 月子先生は頷きながら言葉に詰まった私に代わって「新たに開通させた様な感覚があったと?」と続けた。

「そうです! そんな感じです!!」

 言いたかったのは『まさにそれだ!』と思った私は、少し強めに同意する。

「今のところ、ウーノの体で具現化に成功したと考える方が自然だね」

 月子先生はそう呟く様に言った後で「確定は出来ないけど、その前提で次の実験をしてみよう」と言い加えた。

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