表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾弐章 構築新生
426/814

拾弐之肆拾捌 問い掛け

「那美ちゃん!」

 若干怒りの混じった私の呼びかけに、那美ちゃんは悪びれるどころか、柔らかな笑顔を浮かべて「はい~。那美ですぅ~」と答えた。

「な、なんで、水着が、ビ、ビキニになっているの!!」

 自分では抑えてるつもりなのに、声が勝手に大きくなってしまう。

 そんな私に、むふふと含み笑いを見せた那美ちゃんは、あろうことか「私がぁ、見たかったからか!」ときっぱりと断言した。

 開いた口が塞がらないとんでもない断言に、月子先生が爆笑を始める。

「いいね、那美さん! 素直なのは良いことだよ、あははははは」

 既に頼りになりそうな人は東雲先輩だけという状況に、私は迷惑を掛ける様で申し訳ないなと思いつつ「せ、先輩も注意してくださいよ!」と訴えた。

 だが、助けを求めた東雲先輩は、私から目を逸らして「すまん、関わりたくない」と言われてしまう。

 一瞬ショックだったが、冷静に東雲先輩の立場を考えれば、女性ばかりのこの学校で『水着』について、意見を言うのはかなり危険度が高いし、その上で私側に立つのは高リスク間違いなしだ。

 むしろ、ちゃんと関与を謝罪付きで断れる東雲先輩は大人だと思う。

「し、しかた……ない……ですね」

 苦渋の思いで、東雲先輩の援護を諦めた私は、那美ちゃんとの戦いに挑むことにした。

「那美ちゃん!」

「なぁにぃ?」

「さっき動画で確認したけど、スカイダイブビング体験には、全身を包むスーツとかヘルメットとか、ともかく重装備だったよね!」

「そうねぇ~」

 私の主張に対して、那美ちゃんは動じた素振りも見せずニコニコ笑いながら肯定してくる。

 かなり気持ちに余裕があるのだと感じながら、私は更に踏み込んだ。

「でも、ビキニなんて、手足だけじゃ無くて、お腹も背中も露出多くて、危ないよね!」

 露出が多いというのはそれだけで危険なのだ。

 首の後ろにネックピロー状態のエアバッグを装着しているものの、髪の毛はいつの間にか両耳のやや上でツインテールに結ばれていて、首も全体的に露出してしまっている。

 間違いなく露出が多すぎて、危険としかいえず、これを起点に切り返すつもりだった。

 けど、那美ちゃんは」「大丈夫よぉ」とニッと口角を上げる。

「だ、大丈夫?」

 那美ちゃんの自信ありげな態度に、思わず動揺で言葉に詰まってしまった。

「見た目は水着だけどぉ、空気の服を纏っているのよぉ!」

 それを耳にした私は、那美ちゃんの言っていることの意味がわからず、呆然としてしまったのだが、これに食いつく人が現れる。

「ほぉ! 空気の服か! それは興味深い」

 先ほどまで大笑いをしていた月子先生が、わかりやすく目を輝かせながら、会話に参入してきた。

「足の裏に出現させたという吸着する気体の応用かな?」

 完全に研究者の目になった月子先生は矢継ぎ早に那美ちゃんに質問をぶつけていく。

「応用ぅ……そうですねぇ。空気で体を守れたらって考えましたぁ」

 那美ちゃんの言葉に頷いた月子先生は「となると、首の後ろのエアバッグは、保険的な感じかな?」と尋ねた。

「元々がぁ、エアバッグをもう一度だったのでぇ……イメージしたんですけどぉ、その途中でぇ、空気が直接服になったらなぁって思ったんですぅ」

「なるほど、アップデートの途中でイメージを切り替えたんだね」

 頷いた月子先生は、不意にこちらに振り返る。

「急なイメージの変化による影響も、無難に収めていることから考えても、君の技術は随分と上がっている様だね。スゴイよ、凛花さん」

 想定していなかった月子先生からの褒め言葉に、思わず目が丸くなった。

 それに遅れて頬が熱くなる。

 嬉しいと思ってしまったことを自覚した私は、それを知られるのが何故だか恥ずかしくて「な、那美ちゃんに協力して貰っているのに、失敗なんて出来ませんから!」と気付けば声を張り上げていた。

「少し気負い過ぎかなとは思うけども、自分のためより、他の誰かのために熱くなれるのは、君の美徳だね」

 普段通りのすました顔で月子先生はサラリとそう言い放つ。

 私はその言葉で、いろいろ言おうと思っていたはずの頭が真っ白になってしまった。

 月子先生はそんな固まっている私から今度は東雲先輩に視線を向ける。

「重さや触れている感覚に変化は暖かい? 雅人くん」

 東雲先輩は「変わったかもしれないですけど、感覚的には変化が無い感じですね」と事務的な口調で応えた。

 私に配慮してくれているのか、単にビキニ姿を見続けるのを問題視しているのか、判断はつかないものの、東雲先輩は自分の手の上に乗せたままの『ウーノ』に視線を向けないようにしている。

 主に原因は那美ちゃんの思いつきなので、一応『東雲先輩を追い詰めないでください』と念じて置いた。

 その間にも、月子先生は次の行動に移る。

「あー、那美さん、凛花さん、直接『ウーノ』に触れても良いかな?」

 こちらへの問い掛けに、私より先に那美ちゃんが「多分触っても怪我したりはしないと思いますぅ」と答えた。

「凛花さんも良いだろうか?」

 那美ちゃんとのやりとりで、安全線の確認だと察した私は「特に危険は無いと思います」と追認する。

 が、私の答えに左右に首を振った月子先生はニヤリと笑って「凛花さん。凛花さんには、君をモデルにした君のコピーとも言えるフィギュアに直接指を触れても恥ずかしくないかと聞いたんだよ」と言い放った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ