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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾弐章 構築新生
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拾弐之肆拾漆 仮説

 役割分担が決まったことで、東雲先輩が手の上に『ウーノ』を乗せ、私がそこに向けて手を翳し、那美ちゃんが私の肩に手を乗せてイメージを送るというは位置に付いた。

「いつでも始めてくれ」

 月子先生の言葉に私は素直に従って東雲先輩に視線を向ける。

 東雲先輩が無言で頷いたのを確認してから、私は背後の那美ちゃんに振り返った。

「イメージはバッチリよぉ」

 にっこりと笑う那美ちゃんの笑顔に、なんだか引っかかるものを感じたが、ほんの一瞬僅かな感触だったので、気にしないことにして頷く。

 目を閉じながら意識を掌の先に集中し『ウーノ』の衣装の変更、アップデートを開始した。

 これまで何度もアップデートをしているけど、体感施設やはさみなど、これまでにないものを挟んだお陰か、おあっh脳がかなり早くスムーズになっている。

 これを自分の成長と捉えて良いかは悩ましいが、慣れたのは間違いなかった。

 調子に乗らない様に意識していると、エネルギー漏れを起こさなければ、上手くアップデートを終わらせられる確信が強まる。

 それを絶好のタイミングだと判断した私は「那美ちゃん」と呼びかけた。

「はぁい、いくねぇ」

 那美ちゃんの声が聞こえた直後肩に手が触れ、流れるエネルギーの勢いが増す。

 頭に浮かんでいる『ウーノ』の首から下が光に包まれ、衣装の変化が始まった。

 盛り上がる様に首の後ろに、ネックピロー状のエアバッグと思われる塊が出現する。

 衣装のアップデートなので、顔や髪は元のままで、首から下では、体のラインにピッタリ沿う様にエネルギーの光が纏わり付いていた。

 そんな全身を包み込むエネルギーの光に変化が起こる。

 手足の先端から、体に向かって光が散り『ウーノ』の肌が露出し始めた。

 手首から二の腕、くるぶしから膝、太ももと、手足を登る光のイメージを見ながら、私はとんでもないことに気が付く。

 はさみの時はアップデート中に光っている部分は消えていた。

 体験施設の時は確認していないが、今頭にイメージが浮かんでいる『ウーノ』は衣装のみの変化なので、顔も髪も変化は無く、手や足は、エネルギーの光が覆う範囲が狭まったことで、露出している。

 では、エネルギー状になっている……私には体を覆っているとように見えている、光るエネルギーの全身タイツは自分にしか見えていないのでは無いかと思った時、私は「わあああ」と大声を張り上げていた。


 月子先生が口元を震わせながら「なるほど、確かに、乙女としては、由々しき問題だね」と頷いた。

 衣服をエネルギー化してしまったことで、東雲先輩に見て貰っている『ウーノ』が裸になっているのでは無いかということに気づいた私は、大声を上げてしまい集中が途切れ、アップデートを中断することになってしまったのである。

 ちなみに『ウーノ』が裸になっているんじゃ無いかという仮説は、幸いなことに否定された。

 衣服だったからか、エネルギーに包まれた光る部分は透明化すること無く、私が思い浮かべているイメージと同様に光を放ちその身を覆っていたらしい。

 なので、私が何故か大声を張り上げて、突然取り乱した理由を説明することになったのだけども、それに対する月子先生の答えが先ほどの発言だった。

 散々、私は私、ウーノじゃ無いと主張していたのに、取り乱してしまったのは、かなり恥ずかしい。

 月子先生の『乙女』呼ばわりにも面と向かって言い返せないし、三人から向けられる『仕方ないよね』という同情と納得といたわりの混じった生暖かい視線が、心を容赦なく抉ってきた。

 馬鹿にされてたわけでも、否定されたわけでもないので、起こることも出来ず、ただただ恥ずかしさに耐えるしか無い。

 そんな私の肩を叩いて、那美ちゃんは「多分だけどぉ、アニメの変身のイメージが反映されているんじゃ無いかしらぁ」と話を振ってくれた。

「アップデートはぁ、しーちゃんが最初にしてくれたでしょ~? その時に衣装が光って変化するイメージを見てたからぁ、それが基本になったんじゃ無いかしらぁ」

 明らかに話題を変えてくれているとわかる那美ちゃんの優しさに目が潤みそうになるのを感じながら、その助け船に全力で乗っかって「その可能性が高いですね」と力強く頷く。

「最初に目にしたイメージがデフォルトになるというのは、今後の実験でも重要なファクターになりそうだな」

 東雲先輩も話の流れに乗っかって、真面目な顔で頷いてくれた。

 が、その手に乗ったままの『ウーノ』が視界に入ってしまったことで、私の全身は急激に温度を上げる。

 熱冷ましを兼ねてブンブンと頭を振ってから「と、ともかく、那美ちゃん、もう一回、エアバッグを出しましょう!」と那美ちゃんに声を掛けた。

 私の訴えを苦笑で受け止めた那美ちゃんは「そうねぇ」と頷いてくれる。

 そこで、月子先生が「今、しっぱ……いや、エネルギーを霧散させてしまったばかりだが、インターバルを置かなくても体に負担は無いのかい?」と尋ねてきた。

 私を気遣って言い回しを改めた上で、不安そうな目を向けてくれたことに、嬉しさがこみ上げてくる。

 なので、ちゃんと不安を解消できるように、明るい表情で「エネルギーが霧散した場合は、アップデートを成功させた時と違って一部が体に戻るみたいで、負担は少ないんですよ』と感じて居るままを伝えた。

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