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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾弐章 構築新生
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拾弐之肆拾参 空へ

「空を飛ぶ……ですか?」

 翼の件でやらかしたばかりなので、那美ちゃんの提案に、すぐに頷くことは出来なかった。

 そんな私の反応を見て、何か言おうとする東雲先輩を遮るように、那美ちゃんは「急にぃ脈力無く提案したわけでは無いわぁ」と主張する。

 どうやら、那美ちゃんの中では筋が通っている展開らしいけど、予測が立たなかったので、素直に聞くことにした。

「説明して貰っても良いですか?」

 私に向かって頷いた那美ちゃんは「リンちゃんはぁ、台風が体感出来る施設を作りましたねぇ?」と妙な言い回しで聞いてくる。

 その意図するところはわからないものの、出現させたのは事実なので「はい。具現化しました」と頷いた。

 すると、私の回答に満足そうな表情を見せた那美ちゃんは「台風といえばぁ、なんですかぁ?」と今度は質問というか、クイズのノリで聞いてくる。

「も、猛烈な、雨と風ですよね……」

 私は那美ちゃんが何を言わせたいのかわからなかったので、仕方なく、正解かどうかもわからない答えを口にして反応を窺うことにした。

 すると、那美ちゃんはとっても上機嫌に「そのとおりよぉ」と満面の笑みを見せる。

 どうやら正解を出せたようだけど、今ひとつ『空を飛ぶ』との繋がりはわからなかった。

 そう思ったことを読み取ってくれたのか、那美ちゃんは私に向かって「説明するわぁ」と言ってくれる。

 私は余計なことを考えず、那美ちゃんの説明を素直に受け止めようと、その発言に注目した。


「私がぁ、空を飛ぶことにぃ、考えが辿り着いたのはぁ、風の力なのよぉ」

「なるほど」

 那美ちゃんの編み出してくれた吸着する気体のお陰で、吹き飛ばされることは無かったけど、強い風の力なら体を浮かすことは絶やしなと頷けた。

 そのタイミングで、東雲先輩が「そういえば、擬似的に地上でスカイダイビングを体験出来る施設があったな」と言う。

 東雲先輩のその言葉でピンと来た私は「なるほど、台風の施設で風を起こした機械を応用すれば、体を浮かせることが出来そうですね」と口にしてみた。

「実際にある施設だ」

 そう言いながら、東雲先輩は手にしたバッドで素早く検索して、該当のページを見せてくれる。

「こんな感じだ」

 東雲先輩はパッドw更に操作して、サイト内にある体験動画を再生した。

 台風体験施設は横からの風だったが、スカイダイビングの体験施設は下から強烈な風が吹き出して、その風に乗ることで宙を舞う仕組みらしい。

 那美ちゃんは動画を確認した上で「そぉ! これをイメージしたのよぉ」と嬉しそうに手を合わせた。

 サイトを見つけ出した東雲先輩はパッドを操作しながら「この筒状の中でしか、体感出来ないみたいだが……」と説明に目を走らせる。

 那美ちゃんは「私もぉ、テレビで見たからか、大きさはわかるわぁ」と言った後で、私に視線を向けた。

 那美ちゃんに向けられたのは、何を期待しているかはわからないものの、何かを期待しているのはわかる目だったが、どう返したら良いのかわからず「な、何? 那美ちゃん」と思い切って聞いてみる。

「人間が入れるサイズで作ればぁ、人形なら自由自在に飛べるんじゃないかしらぁ」

「あー、なるほど」

 那美ちゃんの考えがわかって、私は素直に頷いた。

 だが、東雲先輩が「人形なら飛べるかもしれないが、逆に軽すぎて危なくないか?」と言う。

 私は確かにそうだと思って「そうですね」と頷いた。

 その上で「人間が浮けるように調整されているなら、人形だと吹き飛ばされちゃいかねないですね」と頷きながら那美ちゃんを見る。

 那美ちゃんは私たちがそう言い出すのを見越していたかのような澄まし顔で「風の強さを~調整出来れば大丈夫じゃないかしらぁ~」と言い切った。

「確かに、風力を調整出来れば、空を飛ぶ体験は出来そうですね」

 私がそう言ったのをゴーサインと取ったらしい那美ちゃんが「早速アップデートしましょ~!」と言い出す。

「あ、アップデート!?」

 てっきりスカイダイビング施設を位置から具現化すると思っていたのだが、那美ちゃんは台風施設を改造するつもりらしかった。

 私の驚きの声を感じ取ったのであろう那美ちゃんは「確かにぃ、一つ一つ施設を~具現化していく方法もあると思うわぁ」と言う。

 その上で「でもぉ、いくつも施設を作るのはぁ、どうかと思うのよぉ」と続けた。

 一つ一つ検証しながら体験施設を増やしていくのは堅実で失敗の少ない方法だと思う。

 一方で、那美ちゃんの言うとおり、検証の度に施設を増やすのはトテモじゃ無いけど、効率的とは言えないのは間違いなかった。

 場所的な問題もあるし、私自身の限界が存在する可能性もある。

 既に出現させたものをアップデートで手直ししたり、機能を加えていく方が問題は起き難いはずだ。

 そう考えたところで、那美ちゃんは「任せて頂戴ぃ~ちゃんと改造のぉ~アップデートのイメージはぁ、頭の中に浮かんでいるわぁ」と胸を叩いてみせる。

「まあ、無理な場合は、エネルギーが散ってアップデートがキャンセルされるからな……一度試してみるって言うのはありかもしれないな」

 私が相談の言葉を口にするより前に、東雲先輩は苦笑気味にそう言った。

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