拾弐之参拾捌 再起動
「ああ」
頷く東雲先輩に、私は「手順はわかってますよね?」と尋ねてみた。
「一応、な」
東雲先輩は頷きながらそう答えてから「まずは……」と那美ちゃんや他の子達のやりとりから学び取ったのであろう手順を口にしていく。
時折、内容が正しいか確認するために東雲先輩が向けてくる視線に頷き、それを確認して改めて続きを話すというのを幾度か繰り返した。
「それで、イメージの送り方なんだが……」
急に東雲先輩が言い読んだ感じがしたので、私は同化しましたかという気持ちを込めて「はい?」と首を傾げた。
そのまま東雲先輩の反応を待っていると、一度先払いをした後で「凛花に手で触れれば良い……のか?」と険しい顔で尋ねてくる。
私に触れるだけなので、そんなに顔を険しくする内容でも無いと思ったのだが、ここで東雲先輩が思慮深いという事実に思い当たった。
おそらくだけど、私のどこに触れるかで、イメージの伝達に影響があると考えたのだと思う。
「なるほど……さすが、東雲先輩です」
思わずそう呟いてしまった私に、東雲先輩は「お、おぅ」とぎこちなく頷いた。
急に褒められるのは、動揺するのでもの凄く気持ちがわかるが、私と違って慌てふためかないのは流石だと思う。
と、そんな感動に浸っていては、東雲先輩を困惑させるだけなので、私は説明をすることにした。
「えーとですね」
そう切り出すと、東雲先輩は一瞬で真面目な表情を浮かべる。
聞く姿勢が表情だけで読み取れるのはスゴイなと思った。
「未だ検証していないのではっきりとは言えませんが、両手で触れて貰ったり、片手で触れて貰ったりしてますけど、どちらも問題なくイメージを送って貰えました。もしかしたら触れてる面積が多い程、伝わりやすい可能性はありますけどね」
私がそう説明すると、東雲先輩は「なら、まずは片手で、試してみるか」と口にする。
その後で「那美は肩に触れていたが、エネルギーを送り出す腕周りが良いのか?」と尋ねてきた。
触れる場所も、よく考えると検証していなかったので、改めて東雲先輩の着眼に尊敬の念を抱きながら「そこも、未だ検証してないです」と正直に答える。
頷きながら「そうか」と言う東雲先輩に対して、私は自分なりの考察を伝えた。
「イメージを受け取るために触れて貰うと言うことは意識してませんでしたが、東雲先輩の言うとおり、肩や腕周りだから、功を奏していたのかも知れませんね」
私の話が進みにつれて、東雲先輩の表情に困惑が混じりだした気がするが、理由がよくわからないので、自分の考えを伝えることを優先する。
「もしかしたら、ですけど、頭に触れた方がイメージが伝わるかも知れません!」
口にして思ったけど、イメージを送るなら頭に手を乗せるのが一番じゃ無いかと思ってしまったせいか、少し興奮気味に訴えてしまった。
それが良くなかったのか、東雲先輩は私を見たまま絶句してしまう。
私としては大したことをいったつもりはなかったんだけど、何が行けなかったのか振り返ろうとして、気付いてしまった。
「し、東雲先輩! あ、頭に触れてほしいとかじゃ無いですよ、か、可能性、可能性の話ですからね!」
東雲先輩が頭に手を置いてほしいと、私が催促したと思ったのではないかと気が付いた私は、頬から火が噴き出しそうになりながらも、慌てて訂正の言葉を掛ける。
が、口bな知ってから、違う可能性にも気付いた私は、訳がわからなくなって、とにかく誤解をさせないことだと、無理矢理言葉を絞り出した。
「あ、えっと、東雲先輩に頭に触ってほしくないとかじゃ無いですからね! 私は触って貰うのは嬉しいんですけど、いや、嬉しいのでは無く、嫌嬉しくないわけでも無く……」
「リンちゃん、落ち着いてぇ」
ポンと肩を叩かれて振り返ると、那美ちゃんが私を見て苦笑を浮かべている。
「那美ちゃん?」
「少しはぁ、落ち着いたかしらぁ?」
苦笑のままでそう問われた私は、直前の取り乱しっぷりを思い返して、体中から熱を吹き出すことになった。
「はい、リンちゃんは席に素わってぇ」
「は、はい」
「まーちゃんは。左手をリンちゃんの肩に置くぅ」
「わ、わかった」
那美ちゃんの指示に従って、私と東雲先輩はアップデートの配置についた。
私たちが妙なやりとりをしていることで、落ち着きと普段を取り戻した那美ちゃんは、有無を言わせぬ迫力で場を仕切っていく。
先ほど東雲先輩が座っていた席に着くと、パソコンを操作して、撮影状況の確認を始め、僅かな弛緩で作業を終えてしまった。
どちらかと言えば、私寄りの機会が得意では無い印象があったので、正直意外である。
そんな感想を抱いた阿智ミングで、那美ちゃんの視線がこちらに向けられた。
怒られるかもと身構えそうになったが、那美ちゃんは「録画の準備は出来たからぁ、いつでも始めて良いよぉ、リンちゃん」と微笑む。
怒られるどころか、私の意外という感想に触れもせず向けられた笑顔は、何故か喉がなってしまうような圧を感じるものだった。
それに触れてはいけないと私の本能が訴えたので、ここはすぐにでも実験を開始しなければと思い、東雲先輩を振り返る。
「初めていいですか?」
私の問い掛けに東雲先輩が「ああ」と頷いたのを確認してから、私は集中に入った。




