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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾弐章 構築新生
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拾弐之弐拾肆 落下実験

 場所を学生寮に移した私は『ウーノ』の体で、ハシゴの上に立っていた。

 眼下には、複数の羽毛布団が重ねられたクッションが設置されている。

 背中に手を回してエアバッグを確かめた私は『ウーノ』の体で「それじゃあ、いきます」と宣言した。

 あるかどうかはわからないけど、いざという時に備えて、ハシゴのそばに那美ちゃんが、私自身の体のそばに花ちゃんがスタンバイしてくれていて、私の見ている光景やハシゴ周りの状況を録画するために東雲先輩がパソコンを操作してくれている。

 ちなみにだけど、私が飛び込む前に、花ちゃん所有の人形が実験隊として、羽毛布団のクッションに飛び込んでいるが、特に問題は無かった。

 なので、私……『ウーノ』も無事に済むとは思うのだけど、ハシゴの上から見る羽毛布団は少し遠い。

 多少勇気が要る距離ではあるものの、先に実験体となってくれた人形やその結果を胸に抱いて気持ちを整えた私は、足の裏の吸着を解除して、ハシゴにぶつからないように軽く助走を付けて、空中に飛び出した。


 温度を感知出来る機能はないものの、空中に飛び出した瞬間、下へと落下する感覚と共に、体が急激に冷える感覚があった。

 肝が冷えるという感覚なのかもしれない。

 そんな余計なことを考えながら、私は膝を抱えて体を丸めた。

 那美ちゃんのエアバッグが動作するかも踏まえた実験なので、一応、動作しなかった場合に備えて、ダメージを減らすために体を小さくする。

 落下している間に体が回転して、エアバッグの分、重さがあるからか、背中が下になり、状況を確認するには後ろを振り返るようにするしかなかった。

 とはいえ、状況を確認出来ず、ただ天井が遠ざかっていくのを見るのも不安なので、首を捻って後方を確認すると、羽毛布団は既に目前に迫っている。

、咄嗟に危ないと思った瞬間、視界が黒かグレーかわからない何かに遮られた。

 思わず悲鳴を上げそうになったが、慌てて口を押さえて声を押し込める。

 直後、軽い衝撃と共に、体全体が何かに包み込まれた。


 どこまでも沈み込んでいきそうな柔らかな感触に包まれた私の目には、大分遠くなった天井や足場であったハシゴが映っていた。

 膝を抱えた体勢から足を伸ばしてみる。

 伸ばした足に、柔らかな何かが触れた感触がした直後、ゆっくりと僅かに沈み込んだ。

 おそらく、自分の体だったら、心地よさを感じるであろう軽い締め付けと、どう体を動かしても受け止めてくれそうな安心感がある。

 少し顔を動かして周囲を確認すると、濃いグレーのクッションに包まれているのがわかった。

 恐らくこれがエアバッグの展開した状態なんだろうと考えた私は、ゆっくりと上半身を起こしてみる。

 展開したエアバッグが、どんな体勢だろうと受け止めてくれる仕様のせいで、体を支えようとした手も飲み込むように沈み込ませた。

 とはいえ、底が無いわけではないので、沈み込みが止まったところで、腹筋にも力を入れて上半身を起こす。

 エアバッグの上で上半身を起こしたところで、那美ちゃんが声を掛けてきた。

「リンちゃん、調子はどぅ?」

 私は座った状態のままで、手を閉じたり開いたりして感触を確かめ、軽く肘を曲げ伸ばしして、最後に軽く肩を回してみる。

 元々痛覚の類いは感じないので、動きにぎこちないところが無いかの確認にになるが、動かした限りでは違和感はなかった。

「多分ですけど、問題ないと思います」

 少し曖昧になってしまったが、そう答えると、那美ちゃんは私の目の前に手を差し出す。

「じゃあ、確認するからぁ、乗ってくれるぅ?」

 那美ちゃんにそう促された私は、足をお尻の方へ引き寄せてから、手を付いて慎重に立ち上がった。

 柔らかで適度に沈むエアバッグは、立ち上がるには少し安定性に欠ける。

 だからといって、変に吸着する気体を発動すると、関節を痛めそうなので『ウーノ』の体のポテンシャルに頼ることにした。

 両足に力を込めすぎないように気をつけつつよろめきながら立ち上がる。

 優秀な『ウーノ」の体は、一度立ってしまえば、底からバランスを崩すことはなかった。

 足下まで移動してくれた那美ちゃんの右手に、添えてくれた左手を支えにしながら、右足から順番に乗り移る。

 そのまま那美ちゃんの右手の中心に移動したところで「それじゃ~移動させるよぉ」と声を掛けられた。

「ちょっと待ってください」

 そう返してから、バランスを崩して手から落ちないように、その場で膝を付いてしゃがみ込む。

 が、バランスが悪いので、両手を突いて膝に体重を逸らしながら足を伸ばして正座の姿勢になった。

「リンちゃん」

 那美ちゃんに名前を呼ばれたので「なに?」と返事をする。

「正座よりもぉ、そのまま足を広げてお尻を落とした方が安定すると思うわぁ」

 なるほどと思いながら、言われたとおり正座の状態から足先だけを開くと、滑るようにお尻が那美ちゃんの掌に着地した。

「確かに、凄く安定してる気がします」

 私の答えに、那美ちゃんは「そうでしょ~」と何度も頷く。

 その後で「じゃ~、関節がおかしくないか確認するからぁ、いったんリンクを切ってくれるぅ?」と那美ちゃんは聞いてきた。

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