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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾弐章 構築新生
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拾弐之弐拾壱 実験終了

「台風体験施設はとりあえず具現化出来たということで良いな」

 東雲先輩のまとめの言葉に、私は大きく頷いた。

「最初の目標は達成したと思って良いと思います」

 那美ちゃんも「私もぉ、良いと思うわぁ」と同意してくれる。

 そのタイミングで、廊下にやってきた花ちゃんが「それじゃあ、次のステップね」と口にしてとびきりの笑顔を浮かべた。

 花ちゃんの発言に何か不穏なものを感じた私は「つ、次のステップ?」とつっかえながらも聞き返すことには成功する。

 そんな私に笑顔でつかつかと歩み寄ってきた花ちゃんは「さて、問題です」と言い放った。

「も、問題ですか?」

「大問題です」

 スッパリと返ってきた花ちゃんの言葉に、もの凄い違和感を覚える。

「なんか、意味が変わってません? 出題じゃないんですか?」

 違和感の元をそのまま言葉にして聞くと、花ちゃんは「フフフ」と軽く笑ってから、肌が触れそうな程顔を近づけてきた。

 急な展開にドキッとしてしまったが、そのタイミングで花ちゃんは口を開く。

「では、改めて問題です。校内の通路を塞ぐようにコンクリートの建物を出現させたらどうなるでしょうか?」

「えっ?」

 顔は笑顔なのに、花ちゃんの目はまったく笑っていなかった。

 チラリと視線を向けた那美ちゃんが、四角を象るように手を動かして、持ち上げて横に動かすジェスチャーをする。

 それでピンと着た私は「じゃ、邪魔……ですよね?」と尋ねると、花ちゃんは「だとしたらどうしますか?」と聞いてきた。

「つ、次のステップは、移動させるか、消す勝手事ですね?」

 私の返しに花ちゃんはゆっくりと頷いて「おめでとうございます。正解です」と笑みを深める。

「あ、ありがとうございます」

 そう返しながら、私は先ほど移動させた時の手順を必死に思い出していた。


 校庭を歩きながら、少し前をいく花ちゃんに「わざわざ、来て貰ってすみません」と声を掛けた。

 花ちゃんはその場で立ち止まると、こちらを振り返りつつ「危ないですからね」と言う。

「危ない……ですか?」

 花ちゃんに合わせて私も足を止めた。

 背後には私を追うように付いてきているエネルギー体に戻った台風体験施設が浮かんでいる。

 那美ちゃんと東雲先輩は、その更に後ろについて、異常が無いか確認してくれていた。

 そんな二人に視線を向けていると、花ちゃんは「この学校には結界が張られているのは覚えていますか?」と尋ねてくる。

 翼を出して飛んだ時に、その結界を突破して、雪子学校長に時間を戻して貰うという大失敗をやらかしたばかりなので、当然忘れていなかった。

 あの一件が頭に浮かんだせいで、もの凄く申し訳ない気持ちになると共に、花ちゃんが付いてきた理由に察しが付く。

「もしかして、結界を出ないように付いてきてくれたんですか?」

 私の問いに対して、花ちゃんは「それと、いざという時の護衛を兼ねてね」と言って、校庭の後ろに広がる森と、そこから続く山を視界に収めた。

 この緋馬織小学校を囲む結界に張り付く穢れの恐ろしさは、一度触れてただけなのに、私の中に根付いてしまっている。

 少し思い出しただけなのに、左手の震えを止められずにいた。

 そんな私を一瞬だけ見た花ちゃんは「と言うわけで、早く設置して帰りましょう」と校庭のはし、森との境界付近を指さす。

 那美ちゃんが花ちゃんの指さした方を見ながら「あそこにぃ、施設を出現させるのねぇ?」と確認してくれた。

 花ちゃんは那美ちゃんに頷いてから、私へと視線を向けて「リンちゃん、お願い出来るかしら?」と尋ねてくる。

「はいっ」

 私は返事をした後で、台風体験施設を花ちゃんの指さした場所へと移動させた。


 下に何も無いことを花ちゃんに確認して貰った上で、エネルギーの塊に戻っていた台風体験施設を再度具現化した。

 光が散って空に消え、灰色の無機質なコンクリートの姿が現れる。

 入る時に、結界のギリギリまでいかなくても済むように、施設の入口は校舎などのある側に向けた。

「ところで、操作方法を聞いてもいいかしら?」

 ペシペシとコンクリートの外壁を叩きながら、花ちゃんは私に尋ねてくる。

 花ちゃんが尋ねたのが自分だとわかっていながら、私は何故か視線を東雲先輩に向けてしまった。

 私が視線を向けてしまった東雲先輩は、嫌な顔も見せずに「USBに挿入出来る施設専用のアンテナがあるんで、それを接続すると、自動でPCに操作用のアプリケーションが展開します」と淀みなく答える。

 押し付けてしまったと思っていた私も、綺麗な説明を聞いて、東雲先輩に頼んで正解だったと考えが改まった。

「なるほど、通信用のモジュールがあるワケね」

 花ちゃんはそう言って頷くと、元来た校舎を見る。

「廊下のPCに挿したままよね?」

 東雲先輩は花ちゃんに頷きつつ「はい、取り付けたまま、置いてきましたけど、一応これでリモートで動かせますよ」と手にしたパッドを軽く振って見せた。

 そんな東雲先輩に対して、花ちゃんは少し驚いた顔を見せて「この距離でもリモートで動かせるの?」と尋ねる。

 東雲先輩は「あー」と口にしてから、花ちゃんに歩み寄ると、その耳に何事か囁いた。

 花ちゃんは東雲先輩から何かを聞き終えると、こちらを見て何度か頷く。

 二人が何の話をしているのかもの凄く気になったのだけど、そんな私の視線を遮るように那美ちゃんが目の前に立った。

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