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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾弐章 構築新生
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拾弐之拾漆 ウーノ・アップデート

 頭を護るためのエアバックと、全身を覆うだけのエアバックが同じエネルギー量で構成出来るわけは無く、私は思った以上に多くのエネルギーを絞り出すことになった。

 とはいえ、難易度が高いわけでは無く、落ち着いてエネルギーの流れを調整すれば、暴走することはないし、私も力尽きる事は無いだろう。

 ただ、必要なエネルギーが大きいので短時間で集めると、気を失う可能性もあるので、かなり長めの集中が欠かせなそうだ。

 意識の集中を切らさずに、状況報告として現状を伝えると、東雲先輩から「了解した」という言葉と共に、記録していることを示すキーボードの打鍵音が聞こえてくる。

 その後、私は意識を集中するために目を閉じているので、東雲先輩は「那美も了解しているようだ。頷いている」と追加で教えてくれた。


 那美ちゃんの協力もあって、エネルギーの送り込みは程なく終了した。

 もうエネルギーを送る必要が無くなったので、私はそれを伝えるために「必要なエネルギーが送れたので『ウーノ』のアップデートに進みます」と口にする。

「了解だ」

 東雲先輩の声と打鍵音を耳にしながら、私はアップデートを開始した。

 目は閉じたままなので、視界は黒一色に塗りつぶされている。

 そんな黒い世界に『ウーノ』の姿が浮かび上がった。

 これまでも対象の姿が浮かび上がっていたが、私は意識を集中する時、必ず目を閉じているので、進行状況を視覚的に認識するために備わった能力だろう。

 私は既に那美ちゃんのイメージに沿って変化するように命じているので、浮かび上がった『ウーノ』にはすぐに変化が起きた。

 軽く浮き上がると共に体が光に包まれていく。

 手が顔が髪が、そして身に付けている制服が靴が白い光に包まれて、輪郭だけがわかる姿となった。

 次に起こった変化はスカートが徐々に消えていく変化で、輪郭だけでも十分に変わっているのが見て取れる。

 丈が短くなり、足のラインが鮮明になり、腕周りも細まりブラウスのシルエットから生身の腕のシルエットに変わっているのがわかった。

 体のラインが足でも腕でも胴体でも明確になっていく一方で、首元から背中に掛けてリュックとネックピローが合体したような物体が出現し始める。

 恐らくこれが、那美ちゃんのイメージした全身対応のエアバックの筈だ。

 それを示すように背中のシルエットを大きく変えるように、お尻までするすると拡大を続けている。

 が、お尻の膨らみに届く前にその拡大はピタリとともあってしまった。

 リュックのイメージを合わせたからか、那美ちゃんがそれで十分だと思ったのか、それ以上の変化は起こりそうに無い。

 それを証明するように、背中に背負ったエアバックから光が失われ、リュックに似た黒い本体が姿を現わした。

 次いで『ウーノ』の髪も元の黒色を取り戻し、腕や足は肌色を取り戻す。

 そして、顔も首も肌色に変わるのを見て、私は思わず「ちょっと待って!!」と叫んでしまった。


「あはははは、そんなわけないでしょぉ~」

 おかしそうに笑う那美ちゃんに、私は「だって」と返すことしか出来なかった。

「流石にぃエアバックだけ背負わせてぇ、裸なんてしないわよぉ」

 冷静に考えれば、それはそうなのだけど、光が消えて露出した『ウーノ』の体は肌色ばかり……というか衣服がまったく出現しなかったので、焦ってしまったのである。

 あと、那美ちゃんならやりかねないとちょっぴり思ってもいた。

「あらぁ~リクエストぉ?」

「ちっ違いますっ!」

「冗談よぉ」

 ケラケラと笑う那美ちゃんに完全に揶揄われているが、状況を妥協する方法は思い付かない。

 そんな私の目の前には、肩紐が幅広の紺のワンピース水着を着た『ウーノ』が立っていた。

 胸には白い布で出来たゼッケンが取り付けられていて、まさしく『スクール水着』である。

 気になるてんとしては『ウーノ』なのに、ゼッケンに書かれた名前が『りんか』な所だ。

 ゼッケンの名前だけで、容姿が私と同じ『ウーノ』のスクール水着姿が、将来の自分の姿に思えてくるのが、妙に恥ずかしい。

 とはいえ、体育の授業は当然あるわけで、不意打ちで遭遇することになったが予行練習だと思えば、受け入れられない程では無かった。

 むしろ気恥ずかしさを克服しておかないといけないと思う。

 というわけで、なんだかもの凄く恥ずかしいものの、スクール水着姿にエアバックを背負った裸足の『ウーノ』を見ながら、私は話を進めることにした。


「ところで、裸足というのは、大丈夫なんでしょうか?」

 私の疑問に、東雲先輩が「大丈夫じゃ無いんじゃ無いか? どう考えても危ないだろう」と返してきた。

「そう……ですよね」

 アップデートした結果、裸足になってしまったので、一応確認したのだけど、普通に考えて、素足で金網なんて危険この上ない。

 人形であったとしても、それは変わらない筈だ。

 けど、那美ちゃんは「大丈夫よぉ、そこは対策済みだからぁ!」と言い放つ。

「対策済みなんですか!?」

 思わず声が大きくなってしまったが、那美ちゃんは笑みを浮かべて「澄みなのよぉ」と改めて断言した。

 その後で、那美ちゃんは「というわけでぇ~『ウーノ』ちゃんにリンクしてみてぇ」と言う。

 チラリと見た東雲先輩が頷いたので、私は苦笑気味に「わかりました」と頷いた。

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