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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾弐章 構築新生
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拾弐之陸 施設の中へ

「これは……」

 全ての反応が終わり、コンクリートの箱が新たに取得した入口を見ながら、東雲先輩は途中で言葉を失った。

 固まってしまった東雲先輩に代わって、那美ちゃんが「何かぁ、スゴイ頑丈そぉ~」と感想を口にする。

 イメージがアクション映画の向上からイメージを持ってきたせいか、かなり重厚になってしまった。

 やり過ぎたかも知れないと思っていると、那美ちゃんが「凄く格好いいわぁ」と言い出す。

「そうですか?」

 私が窺うように尋ねると、那美ちゃんは東雲先輩に顔を向けて「ねぇ、まーちゃん?」と同意を求めた。

 どういう反応が返ってくるのかと思い、私も慌てて東雲先輩に視線を向ける。

 急に二人の視線が集まったせいか、東雲先輩は少し困った顔をして「そうだな」と頷いた。

 反応が少し怪しく思えたので、思わず「えー」と口にしてしまう。

 そのまま歩み寄って、顔を見上げながら「本当ですか?」と首を傾げて尋ねてみた。

 すると、東雲先輩は大きく溜め息を吐き出してから、隔壁を指さす。

 指に釣られて視線を向けると、東雲先輩は「頑丈な見た目もそうだが、あの塗装の擦れや汚れが良い味を出してると思う」と感想を教えてくれた。

 同時に、少し疑ってしまったのが申し訳なくなってしまう。

 それを誤魔化すために「えーと、それじゃあ……」と言ったところで言葉に詰まった。

 上手く頭が回らず、言葉が出てこない私を見て、東雲先輩は「どうした?」と尋ねてくる。

 話を振られてしまった以上、早く答えなければという焦りが生まれ、言葉が出て来なくなってしまった。

 仕方が無いので恥を忍んで「どうしたら良いですか?」と尋ねる。

 すると、東雲先輩は少し驚いた表情を見せた後で「そうだな、まずは中を確認するのが良いだろうな」と真面目な顔で答えをくれた。


「それで、リンちゃん、どうやって扉を開けるの?」

 那美ちゃんの質問に私は新たに出現した隔壁の周囲を確認した。

 すると、コンクリート壁に埋め込まれる形で、青と赤の突起が付いた長方形のプレートが見える。

 イメージ通り委細言されているなら、その突起が開閉ボタンの筈だ。

 だけど、人形サイズで作ってしまったために、正確に押すのはかなり大変になってしまっている。

 どうしようかと思っていると、那美ちゃんが私の横から顔を出して「なるほどぉ、扉の横のプレートに付いている突起がぁ、開閉ボタンなのねぇ」と口にした。

 隠したところで仕方ないので「そうですね」と頷くと、那美ちゃんは「ボタン押すならぁ~人形の大きさじゃ無いとぉ、難しそうねぇ」とボタンを観察しながら言う。

「そうですね」

 同じ返しになってしまったが、私の返事に那美ちゃんはにっこりと笑みを浮かべて「じゃあ、これ!」と隠し持っていたらしい『コリンちゃん』を取り出した。


 内部確認のために、一度教室に戻ってきた私たちは、撮影用機材、机や椅子を持って、具現化させた台風体験施設であるコンクリートの箱が見える廊下に陣取った。

 施設の内部確認をするために、まず私が廊下で、ヘルメットを着用して『コリンちゃん』にアクセスをする。

 那美ちゃんは同じく廊下で私の横に立ち、私のサポートを担当、東雲先輩はコンクリートの箱付近に陣取る予定だ。

 内部を撮影するための機材と『コリンちゃん』を連れて、私のリンク開始を待ってくれている。

 一応廊下と、そのすぐ外側なので、窓越しに会話も成立する距離だけど、人形の姿だと聞き取れないといった可能性もあるので、新たに那美ちゃんと東雲先輩はトランシーバーで会話をするようだ。

 そんなわけで、私は持ってきた廊下の椅子に座り、机の上に置いて置いたヘルメットを装着する。

 耳元の電源ボタンを押し込むと、ヘルメットは無事起動を果たした。

「無事、起動しました」

「はぁい」

 私の報告に対して返事した後で、那美ちゃんは「まーちゃん、ヘルメット起動したよぉ」とトランシーバーで東雲先輩に連絡してくれる。

 その返答を待っていると、那美ちゃんから「了解だってぇ~」と報告が上がった。

「じゃあ、リンクします」

 そう宣言してキャラクター選択に入る。

 元の実験をしていた教室からは距離があるせいか、選択肢は『コリンちゃん』のみの一択になっていた。

 リンク後に報告する手順になっているので、私は意識を『コリンちゃん』の体に移す。

 机の上に立つ『コリンちゃん』の体で、ヘルメットを付けて座っている私の体を確認してから、那美ちゃんに声を掛けた。

「那美ちゃん、リンク完了です!」

「はぁい」

 返事をした那美ちゃんはそのままトランシーバーを手に、私のリンクが終わったことを東雲先輩に伝えてくれる。

 ややあって、トランシーバーからノイズ混じりの声で「了解」という東雲先輩の返事が聞こえてきた。

 那美ちゃんは頷いて、『コリンちゃん』(わたし)の横にトランシーバーを置いてから「それじゃあ、乗ってぇ」と掌を上にして私の前に手を差し出す。

 私はジャンオプスるようにして、那美pちゃんの手の上に乗ると、その場で素早く腰を落として指を支えに座った。

 那美ちゃんが「リンちゃん、柔らかいねぇ」と感想を口にしたので、私は「多分、サイズはともかく肌の質感は普通の人間と変わりなく再現出来てると思います」と伝える。

 対して、那美ちゃんは「そういう事じゃ無いんだけどなぁ~」と呟いた。

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