拾弐之弐 安全機構
水の循環設備など、必須ではないものの、より仕組みを具体的に形にするための情報を付加することで、より一層エネルギーの集まりは良くなった。
施設内の照明には、天井部に取り付けた金網の裏側にアクリル製の透明板を配置し、更にその中に熱を発しにくいLED電球をイメージする。
実際の施設そのままの仕様だが、逆に変化を付けていないからか、抵抗はほとんど感じること無く進めることが出来た。
そこで一息ついてから、頭の中で動画で確認した施設の稼働状態を思い浮かべる。
建物の稼働状態をイメージしたことで、エネルギーの流れに変化が起きることは無かったが、強烈な疲労を感じる程のエネルギーが全身から絞り出された。
「エネルギーの……お、送り込みが……終わりました」
疲労感のせいで言葉が途切れ途切れになってしまった。
当然、私の異変引きが突いた東雲先輩は、すぐに「どうした、凛花!」と強めの口調で呼びかけてくる。
下手に隠すよりも素直に言った方が良いと判断した私は「具現化させるのにもの凄いエネルギーを使うみたいで、思ったよりも体力が持って行かれました」と状況をそのまま言葉にした。
すると、みるみる東雲先輩の上場が険しくなり始める。
私はその変化に慌てて、東雲先輩に「大丈夫です!」と訴えた。
「何がだ?」
いつもとは違う固い声で東雲先輩が切り返してくる。
ここで折れないように気持ちを強く持って、私は「全力疾走をして息切れした感じなので、すぐに回復します!」と言い切った。
それ以上は何も言わず、ジッと東雲先輩を見詰める。
お互いそのままで数秒見合ったところで、東雲先輩が大きく溜め息を吐き出した。
「凛華自身の子Tだから、凛花の言葉を信じるしか無いが……無理はするなよ?」
気を遣ってくれているのと同時に、あまり私の言葉を信用していないのがわかる一言に、思わず顔が引きつりそうになる。
ただ表情に出してしまうと、認めるも同然なので、表情を見られないように慌てて「心配掛けてごめんなさい」と口にしながら頭を下げた。
「今から具現化していこうと思います」
疲労感が多少減ったところで、私は東雲先輩と那美ちゃんにそう伝えた。
すると、東雲先輩に改めて「無理はするなよ」と念を押される。
那美ちゃんにも「ダメだと思ったらぁ、即中止だからねぇ?」と笑顔で迫られてしまった。
自分の信用の無さに、若干へこみそうになったものの、実績で認識を改めて貰うようにする敷かないなと、無理をしないことを改めて心に誓う。
すると、私の考えが筒抜けの那美ちゃんが、その通りだと言わんばかりに大きく頷いたのを見て、思わず苦笑してしまった。
とはいえ、心配してくれるのは嬉しいし、心配を掛けたいわけじゃないので、無理な時はエネルギーを霧散させて作業を止める事をしっかり意識する。
すると、それを切っ掛けに僅かなエネルギーが私の体から腕を伝わり手の先から放出された。
私が思わず驚きで「……これって……」と呟くと、すぐに東雲先輩が「どうした?」と声を掛けてくる。
あくまで推測だったので、少し口にするのに躊躇いがあったが、情報は共有した方が良いなと考えて「今、私から新たにエネルギーが流れ出たんです」と状況を伝えた。
その上で「丁度、私の体では無理な時は、エネルギーを霧散させて具現化を止めようと思ったタイミングでした」と付け加える。
東雲先輩はそれを聞いて「安全機能を追加したってことか……」と呟いた。
「私はそうだと思いました」
頷く私に対して、東雲先輩も頷きながら「もし、安全機構が追加できているなら、かなり安心だな」と表情を和らげる。
「ですけど、多分、確かめる方法が、私には無理な具現化になった場合だけなので……」
あまり意味が無いかも知れないと続けようとした私を遮って、那美ちゃんが「お守りみたいなことねぇ」と口にした。
東雲先輩はそんな那美ちゃんの言葉に頷いて「そうだな。頼り切りになるといけないが、存在してくれるだけで多少安心出来る……確かにお守りみたいだ」と同意する。
頷く二人き見ながら、私は素直になるほどと感心した。
使えない機能は意味が無いというのは合理的な考えかTらだと思うけど、お守りとして安心の材料になるという考え方は、精神衛生的にとても良いと思える。
無駄だと思っていたすぐ後に、考えを翻すようで恥ずかしいが、それでも『お守り』という捉え方で考えると、新たな安全機能の存在意義は想像よりも大きいのかも知れないと思った。
少なくとも、二人には『安全機能』の方が『私の断言』よりも、信頼が置けるようなので、その点だけでも有効ということになる。
考えれば考える程、自分の信用の無さが情けなくなるので、具現化に意識を集中させることにした。
すると、私の身長と同じくらいの大きな球体に成長したエネルギーの塊から、幾本かの細い光の線が飛び出る。
エネルギー体から放出された線は、その軌跡に光を残しながら、それぞれ直線上を進み、私の胸ぐらいの高さの直方体の輪郭を描いた。




