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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾壱章 想定離脱
377/814

拾壱之伍拾捌 こだわりの

「意外とぉ、特別な感じはしないのねぇ」

 なんだか残念そうに『コリンちゃん』は自分の胸に手を当てて溜め息を吐き出した。

 触れたくないというか、触れない方が良い気がする……けど、この場には他に東雲先輩しかいない。

 話題が胸である以上、ここは私の出番だと、覚悟を決めた。

「人形だからかも知れませんね」

 私がそう言うと、那美ちゃんは頷きながら「なるほどぉ、『コリンちゃん』は人形として出現させているからぁ、人間とは感覚が違うってことねぇ」と口にする。

 的確に言わんとすることを理解してくれるのは本当に助かるなと思いながら、私は「そうです。元々は『アイガル』用に準備した人形なので、東雲先輩の神格姿の人形とは仕様が違うんだと思います」と返した。

「なるほど、確かに、オレの人形は、疑似特訓が出来るように感覚は実際の体を目指して貰ったからな。リアルな人間の体って感じだった……まあ、実際の神格姿と比べるといろいろ力は足りてなかったが、少なくとも、自分の体の感覚には近かった感じがするな」

 私と東雲先輩の言葉に対して、ふむふむと頷いた那美ちゃんは「じゃあ~、アップデートをすれば、このおっぱいの重さをリアルに体感出来るのねぇ」と言い放つ。

 話題が胸なので、東雲先輩が踏み込むのは大変だろうと思い、私は敢えて地雷を踏み抜くつもりで口を開いた。

「えっと、その、アップデートって必要ですか?」

 そんな私の発言に対して、那美ちゃんは「何を言っているのぉ! 必要に決まってるでしょ~」と人形の体なのにも拘わらず、頬を膨らます。

 想定外の反応に、戸惑っていると、今度は冷静な物言いで那美ちゃんの人形に「冷静に考えてぇ、リンちゃん」と声を掛けられた。

 急な状況の変化について行けず、思わず「は、はい」と返事をしてしまう。

「将来ぃ、大人になった時にぃ、おっぱいが大きくなるかも知れないでしょ~? その時を見据えたイメージトレーニングは必須なのよぉ」

 力一杯自分の主張を言い切った那美ちゃんの人形は、なんだか誇らしげに見えた。


 しばらく余韻に浸っていた那美ちゃん人形は、急にこちらへと視線を向けた。

「リンちゃん!」

「は、はいっ!」

 勢いに押されて返事をした私に向かって、那美ちゃんの人形は「というわけで、アップデートをするわよぉ」と言い放つ。

 少し間が空いたこともあって、『コリンちゃん』は那美ちゃんの担当だし、本人が強く希望しているのならと考えることが出来た私は「わかりました」と頷いた。

 胸の重さを実感出来るような機能の追加が必要とは思わないけど、ただ、筋肉や骨の感覚を体感出来るようになるのは、何かに役立つかも知れない。

 情報自体もそうだし、出来ることを把握するためには、胸の重量を感じられるようにアップデート出来るか試すのは無意味ではない筈だ。

 ただ、問題として、那美ちゃんも、私だって今のベースになる体は子供の体なので、実際体感出来るようになったとして、実際との違いを知ることが出来るかはわからない。

 そんなことを考えていると、那美ちゃんの人形は「なるほどぉ、一理あるわぁ」と深く頷いた。

 私はその流れで、アップデートを辞めるのかと思ったのだけど、那美ちゃんは平然と「でもぉ、私はリンちゃんの能力ならぁ、完璧な再現が出来ると信じているわぁ」と言い切る。

 すでに、受け入れるつもりだったのもあって私は「わかりました」と頷いた。


「その、胸の重みを感じられるようにする……ってことでいいんだな?」

 記録係をしてくれている東雲先輩が、ほぼ無表情でそう確認してきた。

 流石に、平然としてはいられないのだろう。

 東雲先輩は口元を僅かに引きつらせているように見えた。

「それでいいと思います」

 居たたまれない気持ちで頷くと「そうか」と東雲先輩は口にして、カタカタと恐らく口にしたそのままを打ち込む。

「おっぱいが大きいとぉ、おっぱいが邪魔でぇ、足下が見えないっていうのはぁ、体感出来たしぃ。次は重さだよねぇ」

 横に立ってウキウキで言う那美ちゃんに、私は「そ、そうですね」と口にして、曖昧に頷いた。

「ちゃんとぉ、リンちゃんにも体感させてあげるからねぇ!」

「あ、ありがとうございます」

 那美ちゃんにそう返した私は、すぐに目の前に設置した『コリンちゃん』に向けて手を伸ばす。

「それじゃあ、意識を集中させます」

 集中開始を宣言した私は目を閉じると、そのまま体中からエネルギーを集め始めた。

 足先から、頭の先から、移動を開始したエネルギーが胸に集まってくる。

 そのエネルギーを腕を経由させて、掌から『コリンちゃん』に送り込み始めると、間もなく、最低限必要なエネルギーの送り込みが終わりを迎えた。

「那美ちゃん、イメージを」

 私の合図に、那美ちゃんは「はぁい」と返事を口にしつつ、肩に手を乗せる。

 直後、新たに、体中から那美ちゃんのイメージを形にするのに必要なエネルギーが集まり始めた。

 とはいえ、その量はとても少ない。

 元々アップデート用に集めていたエネルギー日本の少し加える程度で、難易度は想定よりも更に低かったようだ。

 とはいえ、油断して失敗するのは良くないので、最後まで集中を斬らさないように気をつけながらエネルギーを流し込む。

 必要量の全てを飲み込んだ『コリンちゃん』はエネルギーを帯びて一瞬だけ輝くとすぐに元の姿に戻った。

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