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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾壱章 想定離脱
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拾壱之伍拾漆 次のステップ

 スカートの変化が終わったところで、霧散した水のドーナツは、細かな水の球に変わるだけで無く、シャボン玉のような球や、あるいは虹を投影するような水のスクリーンと様々な姿に変わった。

 アニメでも似たような演出になっていた気がするので、物理現象で再現されているのが驚きでしか無い。

 そんな様々な側面を見せた水は、那美ちゃん人形の杖の動きに合わせて、その頭上へと集まっていった。

 無数の水球が集まり巨大な水の塊になった直後、滝のように流れ落ちる。

 那美ちゃんの人形を囲む円柱状に流れ落ちる水は、ベールのようにその姿を包み隠した。

 だが、それも一瞬のことで、ベール越しに見える那美ちゃんの人形のシルエットが下から上へ杖を振り上げると、それに遅れてベールに下から上へ流れを分断するように裂け目が生まれる。

 左右に分かれた水のベールの隙間から、那美ちゃん人形が前に踏み出した。

 ベールの隙間を通り抜け円柱の外へ出た部分に水が纏わり付き、マントと三角帽子が主Tる限する。

 完全に延長うを踏み込めたところで足を止めると、那美ちゃんの人形が身につけた魔女服の至る所に青みがかった銀色の紋様が刻まれた。

 身に纏う魔女服の変化が終わると同時に、那美ちゃんの人形は妖艶な笑みを浮かべる。

「全てを包む水の魔力を導く魔女ミル・ウェンディーよぉ~」

 那美ちゃんの人形はそう名乗りを上げると、胸に杖を手にした右手を当てて、左手は自らの腰に当てた。

 それを合図に背後に残されたままだった水のベールが、大小様々な水球へと分裂し、その場に輝きだけを残して、空中に溶けて消えていく。

 何度見ても綺麗だなと思わせる変身の終了を目の前に、私は思わず拍手をしていた。


「いやぁ、私じゃ無いけどぉ、ちょっと照れるわぁ」

 私の拍手に対して那美ちゃんはそう言って笑みを浮かべた。

 その後で「できればぁ、お人形の視点で体験してみたかったわぁ」と呟く。

 那美ちゃんの発言に、東雲先輩が「そういえば、体調とか、大丈夫か?」と問い掛けた。

「急にぃ、体に戻った時はぁ、吃驚したけどぉ……それだけかしらぁ」

 首を傾げてはいるようだけど、確かに見る限り不調はなさそうに見える。

 そんなことを思っていると、こちらに顔を向けた那美ちゃんと、近距離でしっかり目が合った。

 小首を傾げながら「ん?」と口にした那美ちゃんに、動揺しないように気をつけながら「もし、何か不調があったら言ってくださいね」と伝える。

 那美ちゃんはフッと柔らかな表情になって「心配してくれてありがとぉ」と言ってくれた。

 少し照れくさくなってしまって、私は少しだけ視線をそらせて「『ほう・れん・そう』は大事ですからね」と返す。

 那美ちゃんはクスクスと笑いながら「『報告・連絡・相談』ねぇ」と言いつつ頷いた。


「このまま私がぁ、コリンちゃんとリンクするわぁ」

「いえ、私が那美ちゃんの人形に!」

 那美ちゃんも無事リンク出来たことで、私たちは次のステップに進むことにしたのだが、誰が被験者になるかで意見がぶつかってしまった。

「あらぁ、リンちゃんにぃ、私の人形に入って貰えるのはぁ、嬉しいけどぉ、まだぁ、しーちゃんもぁ、ユイちゃんもぉ、マイちゃんもぉ、観察中よぉ?」

 確認のために視線を向ければ、那美ちゃんの言葉通り、未だ魔女姿の那美ちゃん人形は三人に囲まれたままで、様子からしてすぐに終わりそうに無い。

 ならばと、私は次の手を打つことにした。

「それじゃあ、東雲先輩の神格姿の人形に!」

 私の次の手を、即座に「待て」と口にして東雲先輩がストップを掛ける。

 東雲先輩に視線を向けると、おでこを軽く掻いた後で「体格差が大きい」と止めた理由を口にされてしまった。

 そこに乗ってきたのは那美ちゃんである。

「私のお人形がぁ、未だ相手無いのでぇ、まーちゃんがリンクするなら『ウーノ』ちゃんか、『コリン』ちゃんだけどぉ、体格差が大きいわよねぇ。実際の体と比べてもぉ、神格姿と比べてもぉ」

 満面の笑顔でそう言い切られてしまった私に、那美ちゃんを止めるだけの言葉は思い浮かばなかった。


「絶対、おかしいなって思ったら、途中でリンクを切ってくださいね!」

 私の言葉に、ヘルメットを手にした那美ちゃんは「もちろんよぉ、怖い思いはしたくないものぉ」と頷いた。

 そして、ヘルメットを被りながら「それにぃ、リンちゃん達にぃ、心配を掛けたくないものぉ」と言う。

 とても共感出来る言葉に、私は「信じてますからね」とだけ告げて、これ以上は那美ちゃんに任せることに決めた。

 ヘルメットを被った那美ちゃんは「それじゃあ、起動するわぁ」と口にして、スイッチに触れ、電源を入れる。

 ヴィンといういくつかの駆動音が重なるように響き、ヘルメットの各所で淵源が入ったことを伝える淡い発光が起きた。

「起動したわぁ」

 二回目だからか、那美ちゃんは落ち着いた様子でそう報告を入れると、続けて「キャラクター選択に移動したわぁ」と状況を口にする。

 その後で、那美ちゃんは声を弾ませて「それじゃあ~『コリンちゃん』を選ぶわねぇ!」と高らかに宣言した。

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