表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾壱章 想定離脱
373/814

拾壱之伍拾肆 密着

「あ、あの、志緒ちゃん!?」

 とりあえず状況を改めようと声を掛けたのだけど、当の志緒ちゃんに「リンちゃん、ちゃんと集中しないと危ないよ」と返されてしまった。

 なんだかもの凄くモヤモヤするのだけど、確かに余計なことを考えて集中が切れるのは良くないので、ここは引くことにする。

 目を閉じていて志緒ちゃんが見えていない以上、気配しか感じないのだから、集中出来るはずと、自分に言い聞かせて、エネルギーの制御に意識を集中させる。

 手早く終わらせてしまえば、密着も終わるはずなのでエネルギーの操作が粗くならないように気を配りながらも可能な限り早くエネルギーを送り込んだ。

 すると、速度調整を意識していないのに、エネルギーの流れがドンドンと加速していく。

 思わず暴走状態なのかもしれないと思ったのだが、流れる速度は速くなっていても乱れがほとんど無く、エネルギーが暴発するような気配は一切無かった。

 単純に流量が増加したという感じで、理由が上手く思い付かないうちに、アップデート作業は終わりを迎えてしまう。

 必要なエネルギーが流れきった感覚と共に、那美ちゃん人形からの発光が収まった。


「どう? リンちゃん」

 耳元で尋ねる志緒ちゃんの声がくすぐったくて、ゾクゾクとした感触が背中に走った。

 変な声を出さないように軽く咳払いをしてから感想として「エネルギーの流れがいつもより早く感じましたし、何より安定してました」と思ったままを声にする。

「じゃあ、この密着スタイルは成功ね」

「そう……なんですけど……」

 結果だけ見れば、確かに、間違いなく成功なのだけど、心情的にはそうはいかなかった。

「なぁに?」

 まるで那美ちゃんを思わせる熱の籠もった志緒ちゃんの問い掛けに「あ、あの、志緒ちゃんがどうとかじゃなくて、わ、私の! 私の気持ちが落ち着かないので!」と絞り出すようにして言葉にする。

「落ち着かないの?」

 そう尋ねられた私は、いろいろ伝えたいというか、言葉にしたいことはあるけども、それよりも何よりも、大事故に繋がる可能性を理解して貰いたかったので、その気持ちを込めて「密着されてることに意識が引っ張られて、制御をミスしてしまいそうです!」と正直に伝えることにした。

 すると志緒ちゃんは「じゃあ、しょうがないか~」と言いながら私から体を離す。

 どうにか理解してくれたようだとホッとして目を開くと、ひょいと志緒ちゃんに横から顔をのぞき込まれた。

「当面は急いでやらなきゃいけない緊急事態用の手段だね」

「と、当面?」

 一番気になった言葉を反復すると、志緒ちゃんは大きく頷きながら「だって、実用化はしないとd(^-^) デショ?、有効なら」と至極当然のことを言う。

「……確かに」

 そう答えるしかなかった私の頭を撫でて「大丈夫だよ、触れ合うことが普通になれば良いんだから」となんだかウキウキした声で言う志緒ちゃんに対して、乾いた笑いで応えることしか出来なかった。


「どうだ? 感覚に変化は無いか?」

 東雲先輩の質問に対して、那美ちゃんは「感覚的にはぁ、何も変わらないわぁ」と人形の体を動かしながら答えた。

 アップデート済みの人形に再度アクセスしての動作テストは、今のところ問題はなさそうに見える。

 腕を振ったり、脚を上げたり、腰を中心に体を大きく回転させたりと、様々な動きをしていた那美ちゃんは、その場で小さくジャンプを始めた。

 ぴょんぴょんと跳ねる度に、髪とスカートがふわふわと揺れるごく。

 それを少しの間繰り返したところで那美ちゃんは、急に自分の胸……といっても人形の体でだけど、ともかく、鷲掴みするように手を当てた。

「那美ちゃん?」

 思わずその行動の意図を確かめるために声を掛けた私は、とんでもない発言を耳にする。

「ねぇ、リンちゃん。後でぇ、コリンちゃんのぉ、胸の揺れを~確認させてぇ?」

 那美ちゃんが何を言っているかはわかっているのに、脳が理解を拒んだせいで、思わず私は瞬きを繰り返すだけになってしまった。

「リンちゃんの代わりにぃ、私がリンクしてもぉいいわよぉ!」

 那美ちゃんは人形の体なのにはっきりとわかる言い笑顔でそう提案してくる。

 私は思わず遠い目をしながら、那美ちゃんは本当に胸が好きで興味津々なんだなぁと思うことしか出来なかった。


 どのくらい遠い目をしていたのか、私が我に返ったのは「そう言えばぁ、アップデートしてくれたのよねぇ?」と那美ちゃんに声を掛けられたからだった。

 質問を口にし終えた那美ちゃんは、呆けていた私を見た後で、志緒ちゃんへと視線を向ける。

 視線を向けられた志緒ちゃんは大きく頷きながら「リンちゃんとの密接な共同作業でね」と言ってのけた。

 密接なというワードで体の密着を思いだしてしまった私の体が火照る。

 言葉選びは気をつけて欲しいと思いつつも、なるべく平静を装っていると、那美ちゃんが「リンちゃんに触れてる面積が大きい程イメージをたくさん伝えられるのよねぇ」と追い打ちを掛けてきた。

 その後で見つめ合う形になった志緒ちゃんと那美ちゃんの人形が大きく頷き合ウノを見て、私の頭の中を猛烈な嫌な予感が過る。

 こちらに二人の視線が同時に向き、二人が同時に「「検証が必要ねぇ」」と言い放った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ