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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾壱章 想定離脱
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拾壱之肆拾弐 二度目

 ヘルメットの具現化を再開するために、改めて東雲先輩に声を掛けたところ、少し心配そうに「もう、いいのか?」と尋ねられた。

 その声を耳にしただけなのに、妙に体が緊張してしまう。

 どうにか「は、はい」と頷いた私は、続けて「早速試させてください!」とお願いした。

「わかった」

 東雲先輩は一言そう言って立ち上がると、先ほど、一回目の具現化を挑戦した席に戻っていく。

 背中を目で追ってしまったせいで、その場に置いてけぼりになってしまった私は、慌てて東雲先輩を追い掛けた。


「それじゃあ、二回目いきます」

「はぁい」

「了解だ」

 私の宣言に、那美ちゃんと東雲先輩がそれぞれ返事をしてくれた。

 座席の配置は前回同様で、東雲先輩は機器の動作確認後、私に触れてイメージを補助して貰う。

「東雲先輩、イメージの方は出来ていますか?」

 先ほど、呼びに行った時に異論が出なかったので、大丈夫だとは思うけど、一応確認をしてみた。

「完璧と言えるかどうかはわからないが、前にプレイしたことがあるゲームで、一人称視点のモノがあったから、そのイメージをアレンジして送り込んでみようと思う」

 東雲先輩の返答に、私は「アレンジですか?」と聞き返す。

「普通にコントローラーを使うゲームだったから、その代わりに自分の体の動きをトレースするような仕様に変えないとだろう?」

「確かに……コントロールは得そうですね……最初はそれでもいいような気もしなくも無いけど……」

 何気なく口にした考えに、東雲先輩は「なるほど」と大きく頷いた。

「確かに、一回で成功までいかなくても良い訳か……」

 何度も頷きながら言う東雲先輩の発言に対して、那美ちゃんが「そうだねぇ」と同意する。

 私が那美ちゃんに視線を向けると、軽く頷いてから「アップデート」と言って笑みを浮かべた。

 なるほどと思う私に、那美ちゃんは「リンちゃんの出現させたモノはぁ、アップデート出来るわけだからぁ、一歩一歩形にしていけば良いんじゃないかしらぁ」と言って首を傾げる。

 確かにその通りだなと思った私は、一つの事に気が付いた。

「あ……」

「どうした、凛花?」

 東雲先輩にそう尋ねられて無視するのも違うなと思った私は、恥ずかしさを感じながらも思い付いたことを口にする。

「いや、アップデートできるんだから、まずは外見だけでも出現させて、被り心地とかを確かめても良かったなと思って……」

 そこで全員が黙ってしまった。


「と、ともかく、だ。今から具現化するモノは、機能で詰まっても出現させれば良いということだ」

 フォローの言葉で沈黙を破ってくれた東雲先輩に、私は「そうですね」と頷いた。

 やってしまったことを考えても仕方ないと自分に言い聞かせる。

 私は特に起きてしまった出来事に意識を奪われて、固まってしまう悪癖があるので、しっかりと意識しなければと思った。

 ここまで、神世界での戦いで、私は危険な目にはあっていないものの、戦いの場で思考停止は命取りになりかねない。

 足を引っ張ることにならないためにも、切り替えの早さは身に付けなければと強く思った。

 少なくとも、皆がコメントやリアクションに詰まって固まった時に、私が率先して場を動かせるようになら無いといけない。

 そう思っていたら、那美ちゃんに夜話敷く肩に触れられて「ガンバッてぇ」と言われてしまった。

 完全に無理だと思われているのは悔しいが、現時点では否定できる要素が全くないので、絶対にやり遂げると一人心の中で誓う。

 もう一度飛んできた那美ちゃんの「ガンバッてぇ」に、私はやる気を込めて深く頷いた。


 改めて『ガイド・ギア』具現化に挑む為に、席について目を閉ざした。

 既に、一度は具現化直前までいっている工程をなぞるだけなので、不安は無い。

 今回はイメージ提供をして貰うので、第一段階として、外観を構築するイメージだけを頭に描いて必要なエネルギーを手の間に集め始めた。

 具現化までいかなくても、エネルギーを集めたことが経験になるのか、スムーズな流れでエネルギーが球体にまとまる。

 感覚的にいけると確信したタイミングで、エネルギーの流れを止めるイメージを頭に浮かべた。

 すると、イメージに従ってピタリとエネルギーの流れが止まる。

 大分コントロールになれてきたなと自分の成長を感じつつ余韻を振り切って「それじゃあ、東雲先輩お願いします」と声を掛けた。

「触るぞ」

 そう断りを入れてから東雲先輩の手が肩に触れる。

 東雲先輩の手の感触を感じつつ、私は「イメージを頭に浮かべてください」と告げた。

「了解だ」

 短い返しの後、動きを止めていたエネルギーが私の制止を振り切るように波を起こし始める。

 東雲先輩のイメージが送り込まれたことで『ガイド・ギア』の具現化が再活性化したのだ。

 腕から溢れ出さないように細心の注意をしながら、蛇口を捻るようにゆっくりとゆっくりとエネルギーに動き出すことを許可する。

 私の腕を通り抜け、掌から飛び出したエネルギーは、両手の間に浮かんでいた球体に入り込むその体積を増やしていくと、徐々に形が球体から『ガイド・ギア』の姿へ変化を開始した。

「良いですよ、東雲先輩、そのままイメージを保ってください」

「了解だ」

 短いやりとりでも、東雲先輩とやりとりできただけで出来そうだという思いが強まる。

 私の確信はそのまま変化の速度に比例して、一気に変化が早まった。

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