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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾壱章 想定離脱
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拾壱之肆拾壱 支え

「イメージを頭に浮かべながら、凛花に触れればいいんだな?」

「は、はい」

 東雲先輩の質問にただ答えただけなのに変に声が裏返ってしまって恥ずかしかった。

 けど、私の心情など関係ないと言わんばかりに、東雲先輩は平然としている。

 少し面白くないなと思った。

 とはいえ、ここで怒り出すのは何か違う気がするので、頭を振って面白くないという余計な感情を振り払う。

「どうした、凛花?」

 想定外のタイミングで声を掛けられたせいで「にゃっ!」と喉から変な声が出た。

 取り戻そうと気持ちが焦ったせいで「 なんでもないでふ!」と噛んでしまう。

 痛恨のミス連発に、私は日が出そうな顔を押さえて、恥ずかしさに身悶えることになった。


「別にぃ、可愛かったから良かった思うわぁ」

「よ、良くないです~」

 私が動揺してしまったので、東雲先輩は一旦席を外してくれて、那美ちゃんと二人きりになっていた。

 出来る感じのやりとりに憧れていたのに、真逆のポンコツな姿を見せてしまったのがもの凄く情けない。

 しかも、こうして気持ちを立て直してる間も、東雲先輩はイメージを明確にするために、動画を検索したリ、映像を確認したりと、準備してくれているのも申し訳なかった。

「ちょっと、リンちゃん!」

 急に強めの声で那美ちゃんに名前を呼ばれて、私は「へ?」と間抜けな声を出してしまう。

「カッコ良く行動したいのに、つい可愛くなっちゃうのを悩むのは良いけどぉ、自分が何も出来てないって思い込んで、申し訳ないとか考えるのは駄目よぉ!」

「な、なんかもの凄く聞き捨てならない言葉が頭に付いていたような気が……」

「リンちゃん!」

「は、はい」

「そんなことはどうでも良いのぉ」

 反射的にどうでも良くないんじゃないかと考えたのだけど、続く那美ちゃんの発言で私は固まることになった。

「大事なのはぁ、まーちゃんは、リンちゃんの助けになるべく動いてくれているってことよぉ!」

 すぐにどういう意味ですかと切り返したいと思ったのに、体が硬直して反応を示すことが出来ない。

「つまりぃ、リンちゃんがメインなのよぉ」

「え、あ、う……そう、ですかね……」

 私の妙な返しに那美ちゃんは力強く頷いて「そうに決まってるでしょう!」と言い切った。

「ヘルメットを出せるのはリンちゃんだけぇ、その手助けをするためにぉ、まーちゃんはイメージをより正確にしようとしてるわけでしょぉ?」

「え、まあ」

 ピッと人差し指を私に向けながら、那美ちゃんは「つまりぃ、リンちゃんを助けるためじゃない?」と問うてくる。

「うっ」

 言葉に詰まった私に、那美ちゃんは「リンちゃんは何でか自己評価が低いから、はっきり言うけどぉ。リンちゃんが本当に何も出来なくて、迷惑をかけるだけの子ならぁ、誰も協力しようとは思わないわぁ。少なくとも、イメージを高めようなんてしない……じゃあ、何でするかといえばぁ、リンちゃんが頑張ってることをわかってるからよぉ」と言ってくれた。

 頑張ってると言って貰ったことに、胸がじわりと温かくなる。

 思わず自分の表情が緩むのがわかった。


「まあ、あとはぁ、りんちゃんの負担を減らすためねぇ」

 想像もしてなかった那美ちゃんの続きの言葉に、私は「え? 負担?」と驚いた。

 那美ちゃんは、コクリと頷いてから、再び私を指さして「気を失ったよねぇ?」と背筋がゾッとするような笑顔を見せる。

 やらかしたばかりなのに、すっきり忘れていた私は、どうにか躱せないかとも考えたが、買わせるわけもなく「はい」と頷いた。

「リンちゃんが能力を使うのにぃ、どのくらいの力が必要なのかぁ、わからないでしょぉ?」

 那美ちゃんの言葉に素直に頷く。

 熟練度やイメージによって難易度は変わるし、その難易度によって必要なエネルギーの量は変化するが、具体的な分量は那美ちゃんの言う通りはっきり把握できていないのが現状だ。

 今あるのも出来そうだって言う感覚だけで、具現のためにどの程度のエネルギーが必要で、それを放出した後、私にどんな反動が起こるかかまではわからない。

 そんな私の考えをしっかり読み取った上で、那美ちゃんは「だからぁ、まーちゃんはぁ、少しでも負荷を減らそうとぉ」イメージをしっかり固めようとしてるわけねぇ」と説明してくれた。

 いつもの通りの考えなら、不甲斐ない私の為に申し訳ないと考えさせただろう言葉が、今は不思議と違って受け止めることが出来る。

「東雲先輩も私を応援……支えてくれようとしてるんだ……」

 それは身勝手で自分本位な受け止め方かも知れないけど、それでも私には心強かった。

 先ほどよりも、気持ちが前向きに、そして大きく強くなっているのがわかる。

 今すぐ試したいなと思ったところで、那美ちゃんが「良い傾向だと思うけどぉ、まーちゃんだけじゃ無くてぇ、私たちも同じ気持ちなんだけどぉ?」と少し不機嫌そうな声で私にジト目を向けてきた。

 私は慌てて「ちゃんと、わかってますよ!」と返すものの、那美ちゃんは「まあ、仕方ないことかも知れないけどぉ~」と口にして、取りあってくれない。

「もう、わかってください~~」

 私は自棄になって、そう言って懇願することしか出来なかった。

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