表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾壱章 想定離脱
359/814

拾壱之肆拾 中断

 両手を通じて流れるエネルギーに淀みは無かったのだが、機能をイメージしたところで、大きな波が訪れた。

 ヘルメットを通じて、人形と感覚を共有させる仕組みは再現の難易度が高いらしい。

 とはいえ、出来ないという感覚は無いので、少しずつ、無理をせずにエネルギーを動かしていけば問題なく送り込めるはずだ。

 そう思ってエネルギーを送り続けてしばらく、エネルギーの流れが途切れてしまう。

 急に切断されたというよりも、徐々に流れが細くなって、最終的に詰まってしまった感じだ。

 ただ、集めたエネルギー自体は霧散したわけでは無く、腕に溜まり続けている。

 これまでの経験から判断すると、恐らく『ガイド・ギア』のイメージが足りてないのだ。

 その証拠に、外観を似せたヘルメットを出現させるのに抵抗はほとんど無かったが、人形との感覚の共有をイメージした後、急に流れが悪くなったのである。

 どうしたものかと考えていると、不意に那美ちゃんの声が耳に届いた。

「リンちゃん、大丈夫? 一度、中止しない?」

 那美ちゃんにそう提案された私は、なんとなく素直に従おうと思う。

 なので、那美ちゃんに「そうですね、一度、中止します」と告げて、具現化をストップするイメージを脳裏に描いた。

 直後、球体上に集まっていたエネルギーが、逆流して腕から入り込み全身に散っていく。

 全てのエネルギーが私の体へ戻り、私は「ふぅ」と息を吐き出しながら体の緊張を解いた。

 少し間を開けて、ゆっくりと目を開けると、私をのぞき込む那美ちゃんの顔があって、思わず「えっ?」と声を上げてしまう。

 対して那美ちゃんは動じる様子も見せずに「予想外だったわぁ」と口にした。

「予想外?」

 私の返しに那美ちゃんは真面目な顔で頷いて「てっきり、そのまま続けますって言うと思ってた」と言う。

 戯けた様子も無い那美ちゃんの発言は、まごう事なき本心そのものに違いなかった。

「折角、那美ちゃんに提案して貰ったので、いっそ二人に相談した方が良いかなと思ったんですよ」

 那美ちゃんに向けて話していたので、背を向ける形になった東雲先輩が、ボソリと「頼ってくれて嬉しいよ」と口にする。

 完全に不意打ちだったのもあって、心臓が大きく跳ねた。

「し、東雲先輩!?」

 これ以上暴れないように心臓の上に両手を重ねてから、振り返って目にした東雲先輩は真剣な表情で私を見詰めている。

 その目に見られたせいか頭の中が真っ白になってしまった。


「凛花、オレはどうしたら良い?」

 名前を呼ばれて、質問をされて、私はようやくそこで我に返った。

「え、えーっと……」

 ただ、我に返ったからといって、即座に頭が動くわけじゃ無い。

 返事を待つ東雲先輩を前に、私はオロオロすることしか出来なかった。

 そんな私を見かねてか、那美ちゃんがフォローに入ってくれる。

「リンちゃんの体感でぇ、何が起こったかぁ、説明して貰ってもぉ良いかしらぁ?」

「あ、はい」

 那美ちゃんが具体的に私から聞きたいことを示してくれたことで、私は冷静さを取り戻すことが出来た。


「なるほど……外観は問題なかったが、昨日の方が引っかかったってことだな」

 説明を聞いた東雲先輩のまとめに対し、私は「はい」と頷いた。

「つまりぃ、そこのイメージがぁ、足りてなかったってことねぇ?」

「そうなりますね」

 那美ちゃんの言葉にも頷いたところで、東雲先輩が「なあ」と声を掛けてくる。

「なんですか?」

 私が聞き返すと、東雲先輩は「あのゲーム……『アイガル』の時は躓かなかったのか?」と尋ねてきた。

 東雲先輩に言われて『アイガル』の筐体を出現させた時のことを思い返す。

「あ、そう言えば、志緒ちゃんにサポートをして貰ったので、私はそれほど苦労しなかった気がします」

「サポート?」

 即座に尋ねてきた東雲先輩に「はい」と答えた後で、一拍置いて頭の中で整理した説明を口にした。

「筐体を出現させた時は、ゲームの仕組みとか、志緒ちゃんにイメージして貰ったんですよ」

 そこまで口にしてから、私は自分の言葉の選択に誤りがあったことに気が付く。

「いえ……基本的な部分は志緒ちゃんのイメージにお任せだったので、私の方がサポートかも知れません」

 よく考えると頼り切りだったことに気付いた私は、せめてもの思いで「でも、志緒ちゃんのイメージのお陰でスムーズに具現化出来たんですよ!」と志緒ちゃんの活躍を強調してみた。


「ん~~。話からすると、凛花はエネルギー管理に集中して、志緒のように、誰かがイメージを送り込んだ方が上手くいくってことか……」

 東雲先輩のまとめの巧さに驚きながら「そう……なるのかな、うん」と私は頷いた。

「那美、試しに、オレ達がイメージを送ってみるか?」

 私越しに、東雲先輩は那美ちゃんに声を掛ける。

 反応を確認するために振り返ろうと思ったのだけど、那美ちゃんの返事の方が先だった。

「とりあえずぅ、まーちゃんが試してみてぇ、私はリンちゃんの様子を見ておくわぁ」

 那美ちゃんの発言に対して、東雲先輩は「了解だ」と短く答える。

 その後で私の顔をのぞき込みながら「それじゃあ、凛花、やり方を教えてくれ」と東雲先輩は声を掛けてきた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ