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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾壱章 想定離脱
357/814

拾壱之参拾捌 三分

 雪子学校長、月子先生、花ちゃんの三人は動画のデータやカードを元に専門的な機械などを用いての解析に入ることになり、舞花ちゃん、結花ちゃん、志緒ちゃんは二機の『アイガル』筐体を使って、カードの量産に入ることになった。

 残った私と東雲先輩、那美ちゃんの三人の担当は、当然、疑似体感シミュレーターである。

 シミュレーターの構築の第一段階は、人形へ意識を飛ばす仕組みの開発だ。

「それじゃあ、舞花ちゃんから教えて貰った作品をちょっと見てみましょう」

 私の提案に対して、東雲先輩が「意識を移してスポーツをするってヤツか?」と確認してくる。

 東雲先輩に頷きつつ「はい。その作品で使っている道具を参考にさせていただこうかなーと思いまして」と答えた。

 作中の品物を盗用しようとしているのも同然なので、少し東雲先輩の反応が怖い。

 どう判断するんだろうと思いながら、東雲先輩の反応を待っていると、意外にも「なるほどな」という納得の呟きだった。

 想定していなかったアクションに、東雲先輩が何に対して納得したのかわからず、私は「なるほど、ですか?」と首を傾げる。

 すると、東雲先輩は私を見ながら「そうやって出現させるモノのイメージを固めていくんだなと思ってな」と納得した部分をかみ砕いて教えてくれた。

 なんだか急に照れくさくなって「私は、その、想像力に乏しいので……」と視線を逸らしてしまう。

 一方、東雲先輩は私の反応を気にする様子も見せずに「だから、ちゃんと目で見てイメージを補ってるんだろ? 流石凛花はしっかりしてるな」と言われてしまった。

 視線を逸らした先では、私を見る那美ちゃんのニヤニヤ顔が見えて、照れくささがより増してしまう。

 このままだと、暴走してしまいそうなので、大きく頭を振って、気持ちを立て直した。

「とりあえず、まずはホームページで情報収集しますよ!」


 舞花ちゃんに直接聞くという方法も考えたのだけど、頼り過ぎるのも良くないと思った私は、聞くのは最終手段にすることにした。

 その代案が『ネットにある作品のホームページをみる』である。

 私の自前のパソコンは()()()()()なので、事情を説明しパソコン室の鍵を花ちゃんから借り受けた。

「そ、それじゃあ、手早く調べましょう」

「……そ、そうだな」

 私と東雲先輩のやりとりがぎこちなくなってしまったのは、鍵を借りる際に、花ちゃんから『エッチなサイトは見られないからね!』と余計な一言を添えられたせいだと思う。

 つい言葉を掛けられたタイミングで東雲先輩と目が合ってしまったのが不味かった。

 東雲先輩の方が同化はわからないけど、私の方は彼の声が聞こえたり、目が合うだけで瞬時に気まずくなってしまう。

 一方で、那美ちゃんも一緒にいたのに、こちらは特に気まずくなったりはしなかった。

 ただ、私が東雲先輩とのやりとりで、気まずくなると、何故かにまにましてくるのが困る。

 それを怒るのも違う気がするし、何よりもそこを突っ込むのは駄目な気がして、那美ちゃんは放置しておくしかないなと、私は諦めて作業を進めることにした。


 私は検索サイトの入力欄に『スポルティボディ アニメ』と入力すると、舞花ちゃんの言っていたと思わしきアニメの公式サイトが見つかった。

 迷わずリンクをクリックして公式サイトにアクセスする。

「えっとぉ、この『アルティメット・リーグ~疾風の足跡~』が、舞花ちゃんの言っていた作品かしらぁ?」

 パソコン画面を見ながら、那美ちゃんが首を傾げた。

「ちょっと待ってくださいね」

 私は那美ちゃんにそう告げてから『STORY』の項目をクリックする。

 作品イメージというか、劇中シーンと思われるイラストを背景に、作品説明が一気に表示された。

 ザッと文章を斜め読みをして、内容を軽く確かめた私は「おそらくですけど、これであってますね」と那美ちゃんに伝える。

 その後で一通り公式サイトの内容を確かめていくと『Item』の項目で、作中の道具についての説明が表示された。

「あー、このヘルメットみたいなモノが、意識を移す装置みたいですね」

 私の発言に対して東雲先輩が画面を見ながら「『ガイド・ギア』か……」と呟く。

 その後で、私の方を見て「いけそうか?」と質問してきた。

 ジッと見詰めてくる東雲先輩の真剣な表情に、何故か耐えられなくなってしまった私は、画面に視線を戻して操作すると、『ガイド・ギア』を前後左右上下から描いた画像が表示される。

「こ、これだけ、あ、あればイメージは大丈夫、そ、うです」

 動揺で途中でつっかえながらも、私的に、言いたいことは言い切った。

「そうか」

 東雲先輩は多少辿々しくとも、私の話を受け止めてくれたらしい。

 そう考えると、ちょっと胸型高くなったのが、不思議だ。

「それで、どうする?」

 東雲先輩が何を聞きたいのかわからず、私は思わず「どう?」と聞き返してしまう。

 そんな私に対して、東雲先輩は柔らかい口調で「そろそろ夕食の時間だからな。作業はここまでにした方がいいと思うんだが、どう思う?」と丁寧に尋ね直してくれた。

 私は慌てて教室に掛けられた時計を見る。

 確かに、東雲先輩の言う通り、夕食直前だったので、迷わず結論を出した。

「名残惜しいですけど、続きは明日以降ですね」

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