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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾壱章 想定離脱
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拾壱之参拾陸 疑問

「あー、そうだ。リンちゃん、もう一枚カード置いて貰って良い?」

「もう一枚ですか?」

 私が聞き返すと、結花ちゃんは頷きつつ「その二枚は同じコーデの同じ部位のカードだから、別のカードもあった方がいいよね?」と返してきた。

 確かにと思って、ゲームに使ったコーデを手にした私は疑問にぶつかる。

「あの、結花ちゃん?」

「ん?」

「今持ってる他のカードって、この『ミル・セレニィ』の魔女服のヤツしかなかったんだけど……」

 私の言いたいことがわかったのか、結花ちゃんは「あー」と数回頷いた。

「確かに『ミル・セレニィ』のコーデだと、読み取れないね」

 結花ちゃんがそう口にしたところで、横に立っていた舞花さんが「お姉ちゃん、これは?」と言って、カードを一枚取り出す。

 カードを見た結花ちゃんは「あ、いいね」と頷いて受け取ると、私が手にしていた『ミル・セレニィ』のコーデから抜き取ったスカートと合わせて、私のスカートの上に並べる。

 縦横二枚ずつ、綺麗に四枚のカードを置くと、結花ちゃんは「じゃあ、QRコード読み取るから見ててね」と口にして、ゲーム機のカメラをカードの方に向けた。

 ゲーム画面の中央に、スカートとその上に置かれた四枚のカードが映し出される。

「じゃあ、まずはオリジナルのクールドレスのスカート」

 結花ちゃんはそう言って、四枚の内の一枚、彼女自身が提供してくれたカードのQRコードにピントを合わせた。

 すると、画面上にピンクの四角が描画され、ピロンという電子音が鳴る。

 ゲーム画面上には『テクノステージコーデのボトムスを読み取ったよ!』というメッセージが表示され、このまま読み込みを続けるかどうかを問う『はい』『いいえ』の選択ボタンが表示された。

 結花ちゃんは手慣れた手つきで、選択肢を選ぶのでは無く、mキャンセルボタンでカメラモードに戻る。

「じゃあ、次は『ミル・セレニィ』のボトムスね」

 そう言ってカメラを動かして『ミル・セレニィ』のボトムスカードのQRコードを真ん中に捉えた。

 ピロンという電子音の後、表示されたのは『このカードは読み取れないよ!』というメッセージと、デフォルメキャラが頭を下げる姿である。

「見た感じだと、ちゃんとしたQRコードに見えますけど、このカードのQRコードは読み取れないんですね」

 私の発言に頷きながら、結花ちゃんは「魔女服もそうだけど、リンちゃんと作ったトレーニングウェアも読み取れないのよ」と追加の情報を教えてくれた。


「じゃあ、次ね」

 そう言って結花ちゃんが次にQRコードを読み取ったのは、さっき排出したばかりの『ウーノ』のカードだった。

 おなじみになってきた電子音の後で『テクノステージコーデのボトムスを読み取ったよ!』というメッセージが表示される。

「あー、これは普通に読めるんですね」

 私の言葉に、結花ちゃんは「どうしてなのかはわからないのよね」と首を傾げた。

「わからないですか?」

 どこが引っかかってるんだろうと思いながら口にした言葉に、那美ちゃんが応えてくれる。

「魔女服のカードは読み取れなかったけどぉ、今読み込んだカードは読み取れたでしょぉ?」

「そうですね」

 魔女服は元のゲームにないので読み込めないし、逆にテクノステージコーデのドレスは元のゲームにあるので、当然の話だ。

 そう思って頷いたのだけど、続く那美ちゃんの言葉で、それが思い込みだったことに気付く。

「ユイちゃんが引っかかってるのはぁ、今読み込んだカードのぉ、QRコードが何故正しいのかなってことなのぉ……だって、リンちゃんの出してくれたゲーム機でぇ、排出されたカードのQRコードが全部読みとれなければぁ不思議じゃ無いんだけどぉ、ちゃんとぉ、正確なQRコードが印刷されてるカードが排出されてるんだものぉ」

 確かに全部無効の方が納得しやすい……というよりも、無効でないものがある方がおかしいという理屈は言われればまさにその通りだった。

 元々のゲームにあるコーデのカードだから印刷できる……と、そこで思考を止めていたがよくよく考えるとキャラクター名や構図などと違って、見ただけでは読み取れないQRコードが、ちゃんと有効になっている仕組みがわからない。

 これはちゃんと考え直さないといけないのではと思ったところで、那美ちゃんが「リンちゃん」と私を呼んだ。

「那美ちゃん?」

「そもそもぉ、元々のゲームにあるとはいえ~、読み込ませた以外のコーデがぁ、クリア報酬として印刷できること自体が不思議なんですよぉ」

 答えを示してくれるのでは無いかと都合の良いことを考えていた私は、那美ちゃんの言葉に強い衝撃を受ける。

 那美ちゃんの言葉を『確かにそうかも』と受け入れそうになったところで、志緒ちゃんが「そうかな?」と呟いた。

 私が興味を引かれて視線を向けたタイミングで、志緒ちゃんは「だって、リンちゃんは『アイガル』を出してくれたんだよ? ゲームそのものが再現されているなら、その中にキャラクター情報もステージ情報も、曲のデータも、印刷される時のデータ、つまりQRコードだって含まれているのは当たり前でしょう?」と言い切る。

「むしろ、リンちゃんの『アイガル』は新衣装や新キャラが追加されたアップデート版だと考えれば良いのよ!」

 そう断言する志緒ちゃんは自信に満ちた笑みを浮かべていた。

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