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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾壱章 想定離脱
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拾壱之参拾参 不意打ち

 一時、水泳の授業があるという花ちゃんの情報開示で盛り上がったが、苦手な志緒ちゃんが可哀想なので強制的に話題を戻すことにした。

「あ、あの、皆。脱線しすぎだよ? 今は二台目の『アイガル』の検証中なんだよ!」

 そう訴えると、口々に「そっか」とか「そうだった」とか、脱線していたことに気付いたことを示す言葉が上がる。

 スイ絵に対する話の流れが止まってるうちに、追い打ちを掛けた。

「えっと、それで新体操の道具が、何か関係しているんですよね?」

「あ、そうだった。その話の途中だった!」

 脱線の切っ掛けになった舞花ちゃんがそう言いながらチロリと小さく舌を出す。

 そんな舞花ちゃんに変わって、結花ちゃんが説明してくれた。

「衣装チェンジの演出は、新体操の演技になってて、キュートがリボン、ポップがボール、セクシーがロープで、クールがクラブ、フリーがフープね」

「じゃあ、セレニィの衣装はクールだから、クラブになるんですね?」

 私の確認の言葉に、結花ちゃんは「そういう事ね」と笑顔で頷く。

「というわけで、早速やってみましょう! ステージは初級の『テクノ・シティ』が良いと思うわ」

 画面を指さす結花ちゃんの指示に従ってカーソルを動かして、オススメの『テクノ・シティ』を選んだ。

「ここはクール系衣装と相性が良いのよ」

 結花ちゃんノ説明を裏付ける通り、画面上に『ウーノちゃんのコーデと相性バッチリバッチリ!』という表記が出現している。

「流石、結花ちゃん!」

「ま、まあ。しーちゃんの次くらいにやってるからね」

 頬を赤らめて少し自慢げに見えるリアクションが、可愛いなと思ってしまった。

 そんな私の視線に、結花ちゃんが「な、なによ」と尋ねてくる。

「あ、可愛いなと思って」

「ちょっ! やめなさいよっ!」

 結花ちゃんは盛大に狼狽えてバシバシと私の背中を叩き始めた。

 大ぶりなのでなかなかに痛い。

「お、お姉ちゃん! 照れてもリンちゃん叩いちゃ駄目だよっ!」

 舞花ちゃんが慌てて仲裁に入ってくれたことで、結花ちゃんの強打は終わりを迎えた。


「これだけ可愛い子が集まっているのに、褒め慣れている子が少ないのは不思議ねぇ」

 花ちゃんの発言に、思わず乾いた笑いが出てしまった。

「リンちゃんもだと思うわよぉ」

 那美ちゃんの不意打ちに、思わず「へっ!?」と声が出てしまう。

「皆心から褒めてるのに、自分の能力の影響だと思ってるでしょぉ?」

 悪戯っぽい笑みを浮かべて、那美ちゃんが私の胸を人差し指で突いた。

「それは……そう能力があるからというか……」

 なんとか返そうとは思うのに、上手く言葉にならない。

 そんな私に向かって、那美ちゃんは強めの声で「リンちゃん!」と呼びかけてきた。

「はっはい!」

 思わず背筋を伸ばして答えると、那美ちゃんは「それ、問題ないと思うわぁ」と言い出す。

「え?」

「ねぇ、リンちゃん」

 人差し指を縦ながら那美ちゃんは「皆がリンちゃんを好きになるのは、能力のせいじゃないと、私は思うけどぉ。別に能力だって良いと思うわぁ」と言いながらニッと笑った。

 那美ちゃんの雰囲気にそうかもと思いかけた私は、慌てて頭を振ってその考えを振り払う。

「全然良くないよ、那美ちゃん!」

「なんでぇ?」

「な、何でって……気持ちを無理矢理変えるのは、いけないことでしょう?」

 私の言葉に、那美ちゃんは「でもリンちゃん、自分の能力で好きになったかどうかわからないでしょぅ?」と指摘してきた。

「それは……確かに……そう……ですけど……」

「じゃあ、無理矢理心を変えているわけでは無くて、単純にリンちゃんが魅力的なだけってこともありうるよねぇ?」

「それは、そう……かも、だけど……」

 会話が進む毎に、那美ちゃんの言葉を否定しにくくなってきている。

「そもそもぉ、リンちゃん手そこを気にしすぎてぇ、その先を考えてないじゃない?」

「へ?」

 急に話の流れが変わったせいで、間の抜けた声が出てしまった。

「もしもリンちゃんが能力を使っててぇ、そのせいで、私たちがリンちゃんを好きになったとしてもねぇ。それを利用して何かをさせようなんて、リンちゃん考えてないでしょぅ?」

 思わず目が点になる。

「だから、別にいいんじゃ無いってことだよぉ」

 那美ちゃんの言葉に、私は返す言葉を思い浮かべることができなかった。

 好意を能力で勝ち得ていたのだとしても、その先悪用しなければ、良いのでは無いかと、思ってしまったのだから仕方ない。

 そんな私の思考の変化を感じ取ったのであろう那美ちゃんは「ね?」と笑みを深めた。

 魅了の能力の発動を止める方法を悩んでいた私は、那美ちゃんへの感謝を苦も得て深く頷く。

「悩んでいたのが……ちょっと、バカみたいです」

 散々『能力』は使い方次第だと言われたり、私自身も考えていたはずなのに、思いつけなかったことが情けなかった。

 だからこその言葉だったのに、那美ちゃんはあきれ顔で「何を言ってるのぉ」と言う。

「自分では思いつけないこともぉ、教え合えるノがぁ、お友達の醍醐味よぉ」

 那美ちゃんの言葉に『まさに』としか思えず、私は完全敗北を悟った。

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