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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾壱章 想定離脱
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拾壱之弐拾玖 準備

 元通りのエネルギーの流れを強く意識しながら掌の間に球体を作り出すことに成功した。

 既に、完成形である『アイガル』の筐体のイメージはできあがっているので、球体に全てのエネルギーを送り込むと、すぐに変化が起こる。

 光を纏った状態で球体から、私たちの出現させた本来のモノとは少し違う筐体へと姿が変わり、形が整うにつれて光が散っていった。

 具現化が成功したことを感じ取った私は、目標を達成した安堵感で長く息を吐き出す。

「無事、出現させられたと思います」

 私の報告に頷いた雪子学校長は「ふむ」と頷いてから「では早速やって見せてくれ」と指示を出した。

「わかりました」

 同意してから『アイガル』と言えばこの二人だろうと思って「志緒ちゃん、結花ちゃん」と声を掛ける。

 が、そこで雪子学校長に「待ちたまえ」とストップを掛けられた。

「え? どうしました?」

 止められた理由がわからず困惑している私に、雪子学校長は「卯木くんが実演してくれたまえ」と笑む。

「何故、私が?」

 どうせ披露するなら、達人の二人がふさわしいと思ったのだけど、雪子学校長は「職人が商品を世に出す前に、出来栄えを確かめないのかね?」と言い出した。

「あんまり、上手くないですよ?」

「動作テストに巧さは関係ないのでは無いかな?」

 雪子学校長にそう尋ねられた私は改めて息を吐き出して覚悟を決める。

「じゃあ、やってみます」

 そう口にしてから「志緒ちゃん、結花ちゃん」と二人に声を掛けた。

「ホントはテストプレイをして貰おうと思ったんだけど、私がやるね」

 手を合わせて頭を下げると「全然気にしなくて良いですよ。リンちゃんのプレイ見たかったですし~」と志緒ちゃんは言う。

 結花ちゃんは「ウーノ連れてきたわ」といつの間にか両手に『ウーノ』を立たせていた。

 志緒ちゃんは、結花ちゃんの手の上に立つ『ウーノ』を見て「そうだ」と手を叩く。

 何かを思い付いたらしい志緒ちゃんは「リンちゃん、これ、使ってくれる?」と言いながら『アイガル』のカードを取り出した。


 新たに出現させた二台目の筐体に机をくっ付けて、その天板の上に『ウーノ』を立たせた。

「この人形が、君の出現させたゲームに参加して、衣装を変えていくわけだね?」

 机の横に立って興味深そうに『ウーノ』を観察する雪子学校長に、そう尋ねられた私は「はい」と答える。

「君にそっくりだが、分身を応用しているわけだね」

「そうです」

 私が頷いたところで、東雲先輩が「学校長」と声を掛けた。

 どうしたんだろうと視線を向けると、東雲先輩の手の上には、魔女姿のままの東雲先輩の人形が立っている。

「これは……」

「オレの『神格姿』を模した人形です。凛花が出してくれました」

 東雲先輩の説明に「なるほど」と口にしたのは、月子先生だった。

 月子先生は、東雲先輩の手の上の人形から目を外さずに「シミュレーションでの使用を見越して『神格姿』で人形を用意したのだね。さすが、凛花さん」と口にして笑みを浮かべる。

 直接言われたわけでは無い……というよりは、言われなかったからこそ、月子先生の『さすが』がくすぐったく感じられた。

 月子先生とは反対側から、東雲先輩の手の上の『神格姿』の人形を観察し始めた雪子学校長が「それにしても、自身の姿で無くともかなり精巧に作れるモノなんだね」としみじみ言う。

「雪ちゃん、ユイも作って貰ったわ!」

 雪子学校長に声を掛けた結花ちゃんの手の上には、自身を模した人形と私を元にした『ミー』が乗っていた。

 雪子学校長は「ほほう」と口にしながら、月子先生は「なるほど」と言いながら、結花ちゃんを取り囲み観察を始める。

 流石に、その状況は想像していなかったのか、二人に詰め寄られて結花ちゃんは表情を引きつらせた。

 助け船を出さなければと、口を開こうとした瞬間、雪子学校長が「あー、卯木くん、初めてくれていて構わないぞ」と言い放つ。

 出鼻をくじかれたのもあるが、その内容に私は目を点にした。

「過程は花子が録画してくれているから安心してくれたまえ」

 観察に集中しながら、そう言われた私はなんともモヤモヤしたものを感じてしまう。

 その間に、自分の人形と『ミー』を机の上に移動させた結花ちゃんはスルリと状況を脱してしまった。


 なんとなく面白くないと思いながら、私は筐体の前に設置した椅子に座った。

 無言で肩を叩いてくれた那美ちゃんの優しさが嬉しくもあり悲しくもある。

「あ、凛花さん、ちょっと待ってくださいね」

 横から声を掛けてきた花子さんは何本かの三脚を手にしていた。

 三脚の先端にはカメラらしきモノが設置されているので、いろんな角度から撮影するつもりらしい。

 そんな私の観察する視線に気付いた花子さんは「一応教室に備え付けのカメラで、プレイ状況はモニタリングしていたんですが、手元の映像やプレイ中のキャラクター……人形に起こる変化を観察するにも直近で撮影した映像も欲しいので」と説明してくれた。

「準備できたら教えてください」

 私がそう伝えると花子さんは「すぐ設置するので、待っていてくださいね」と応えてくれる。

 結花ちゃん人形と『ミー』に夢中な雪子学校長と月子先生は頭から追い出して、花子さんのために頑張ろうと私は心の中で誓った。

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