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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾壱章 想定離脱
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拾壱之弐拾陸 草案

「では、卯木くんの分身を人形化する案については検証を進めていくことにしよう」

 雪子学校長は「異論はあるかな?」と皆を見渡しながら問い掛けた。

「無いようなら……」

 全員を見渡し終えた雪子学校長が締めの言葉に入りかけたところで、舞花ちゃんが手を挙げる。

「雪ちゃん先生。リンちゃんを助けるために、舞花達はどんなお手伝いが出来ますか?」

 真剣な表情で尋ねてくれる舞花ちゃんの姿に、胸がジンとなった。

 私を思ってくれているんだと感じる程に、私は改めて舞花ちゃんたちを生徒ではなく、同じ立場の仲間と思えるようにならなければと強く思う。

「舞花くんの質問は、卯木くんの検証を皆で進めることを決めた後に話すべき内容だね」

 優しい口調で諭すように雪子学校長は舞花ちゃんにそう答えた。

「というわけで、先に結論の話をしたいが良いかな?」

「ご、ごめんなさい! 慌てちゃった」

 雪子学校長の指摘に、直前の丁寧な言葉遣いも吹き飛んでしまったらしく、舞花さんはわたわたしながら頭を下げる。

 対して、雪子学校長は「意見を言うことは大事だし、友達を思うあまり気が急いてしまうことは仕方の無いことだ。だが、物事には順序や段取りがある。それも疎かにしてはいけないよ」と穏やかな口調のままで告げた。

 舞花ちゃんは「うん」と口にしつつ、雪子学校長の言葉を重く受け止めたようでしっかりと頷く。

 その上で「段取りは大事だよね」と切り返した。

 私にはその返しが不思議に思えたのだが、よくよく考えれば『種』に挑む為には、未だ私の知らない儀式や手順があるのかも知れないと気が付く。

 危険に挑む以上、これまでの経験値を元に構築されたであろう『段取り』を重視するのは当然だ。

 改めて、私より舞花ちゃん達の意識の方がしっかりしているなと思うと共に、生徒だからと、つい自分より経験不足だったり、考えや行動に幼さが覗くのではと思い込んでいた自分に気付いて、その浅はかさに羞恥心が湧いてくる。

「では、改めて、卯木くんの計画を皆で後押ししていくこととする」

 そう雪子学校長が宣言して、議題は舞花ちゃんも気にしていたこれからのことについてに移った。


「それで、凛花さん。君の計画では、どう進めていく予定だったのかな?」

 月子先生にそう振られた私は「はい」と席から立ち上がってから、自分の頭が真っ白に鳴っていることに気が付いた。

 どうしようかと思うと体が小刻みに震え出す。

 そのタイミングで那美ちゃんが「リンちゃん、落ち着いてぇ~」と声を掛けてくれた。

「リンちゃん、ゆっくり話せば大丈夫だよ!」

「そうね。まだまだ時間輪あるわ!」

 舞花ちゃん、結花ちゃんと順番に声を掛けてくれた後で、自分のタブレットを手に志緒ちゃんが「何か映像出す? 手伝うよ?」と口にしつつ立ち上がってくれる。

 東雲先輩もそれに合わせるように立ち上がり、舞花ちゃん、結花ちゃん、那美ちゃんも立ち上がってくれた。

 私はそこで慌てて「ちょっと待ってください!」と皆に制止を掛ける。

「えっと、まずは自分で説明をしてみて……その、必要なところはお願いするので、一旦座って貰って良いですか?」

 心配して皆を立たせてしまったことは恥ずかしいが、同時に皆が私を気遣ってくれたことがもの凄く嬉しかった。

 仲間だと思ってくれてるんだという気持ちが強くなり、生徒だから、年下だからと無意識に対等に見れていなかった自分が心の底から恥ずかしい。

 心の中で絶対に改めると誓い直しつつ、皆が座るのを待った。


「えっと、実は、東雲先輩と作ろうとしていたゲームというか、システムが応用できるんじゃないかって考えていました」

「具体的に説明して貰って良いかね?」

 雪子学校長に頷いてから、私は口を開いた。

「えっと、まず、東雲先輩の要望として、剣術を学べる様なシミュレーションがあったら良いと言われたんです」

 私の言葉を裏付けるように、東雲先輩が「オレの武器は五本の刀ですが、剣術をちゃんと収めたわけじゃないので、どうにか習得できないかと考えました」と説明を加えてくれる。

 東雲先輩にお辞儀で感謝の意を伝えつつ、私は説明を続けることにした。

「最初はヴァーチャルのゲームを考えたのですが、刀の使い方を学び、実践で反映させるにはそれでは不十分……というよりは危険と思いました」

 私の意図するところを正確に読み取った月子先生が「質量が無いことを危険視したんだね?」と確認してきたので、これに頷きで応える。

「どうしようかと思っていた時、舞花ちゃんのアイデアで人形に意識を飛ばす方法を思い付きました」

 私の言葉に、舞花ちゃんが「え!? 舞花はアニメの話をしただけで!」と慌てだした。

「お陰で助かりました」

 笑みを加えてそう伝えると、舞花ちゃんは「……うん」と口にして、なんだか気まずそうな顔をする。

 少し反応が気になったものの、説明の途中なので舞花ちゃんに話を聞くのは後回しにすることに決めた。

「それで『アイガル』で人形を生み出した人形に意識を飛ばせないかと思ったんです」

 私の説明に対して、花ちゃんが「何故、人形なんです?」と質問をしてくる。

「最終目標は等身大ですけど、まずその前段階として、小さな人形で仕組みを作るつもりなんです」

 花ちゃんは私の答えに「なるほど、理解しました」と笑顔で頷いた。

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