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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾壱章 想定離脱
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拾壱之弐拾壱 告白

「より早く具現化を出来るようにしたいんです」

 私の答えに、花ちゃんは「それは何故?」と口にした直後、少し慌てた様子で私に向けて掌を見せてストップを掛けた。

「あー、凛花さん、ちょっと待ってくれる。話が聞きたいことからズレそうだから、ちょっと質問を変えるね」

「は、はい」

 花ちゃんが考える素振りを見せたことで、私の中に周りを確認する余裕が出来る。

 とはいえ、花ちゃんと話している途中なので、顔を動かさずに視線だけを巡らせた。

 興味深そうだったり、不安げだったりと表情は違うものの、皆、こちらを見て口を閉ざしている。

 皆、私と花ちゃんの会話に入ってくる気は無いみたいだ。

「今の……」

 不意に花ちゃんが話し出したので、私は意識を向け直す。

 私の視線が自分に向いたのを確認したのであろう花ちゃんは改めて話し始めた。

「今の状態でも、凛花さんは様々出現させることに成功していますよね」

「は、はい」

「私にはそれだけで十分だと思うんですけど、何故早さを求める必要があるんですか?」

 花ちゃんの言葉に私は、一瞬どう答えるかを考えたが、変に悩むよりはそのままを伝えた方が問題が起きにくいだろうと結論づける。

「実戦で、使うためには必要だと思ったんです」

 私の言葉に花ちゃんは「『神世界(あちら)』で使うつもりってこと?」と尋ねてきた。

「はい……といっても『アイガル』の筐体を出現させるわけじゃないですけど……」

 私がそう返すと、軽く溜め息を吐き出してから、花ちゃんは「皆と話していた武器や防具を出現させるってことね?」と口にして目を閉じる。

 ここで肯定して終わりでも良いのだけど、丁度皆もいるので、その先に考えていることも伝えようと私は判断した。

「もちろん、それもあるんですけど……」

 私がそう言うと、花ちゃんの目が開かれ、瞬時にこちらに視線が向く。

「あるんですけど?」

 口調は柔らかいのに、とても圧を感じる言葉に、思わず私の喉が鳴った。

 一瞬、気持ちが気圧されて黙り込んでしまいそうになったものの、頭を振って気持ちを立て直す。

 花ちゃんの迫力に飲まれていては話が進まないと決意を固め、私は考えを言葉にした。

「私の分身を使って、皆の体の代わりを生み出せないかって思ってるんです」

 花ちゃんは真剣な表情で「なんで、そんなことを?」と尋ねてくる。

「皆『神格姿』で戦ってますよね?」

 私の言葉に、花ちゃんは黙ったままで頷いた。

「その『神格姿』で傷を負った場合、こちらにある体にもその傷が出現しますよね?」

 畳み掛けるように続けた私の言葉に対して、花ちゃんは表情を崩すことなく「だからそれぞれの『神格姿』ではなく、凛花さんの分身に『球魂』を宿らせて戦って貰うということですか?」とこちらの意図を正確に読み取った上で聞き返してくる。

「そうです」

 私は力強く断言した。


 私が断言した後、花ちゃんはしばらくの間黙したまま何かを考えていた。

 それから、一度皆を見回した後で「確かに『神世界』へ挑む際の安全を高める事が出来る可能性は高いと思います」と花ちゃんは言う。

 同意を得られたことが嬉しくて、すぐにわかってくれたことに感謝の言葉を伝えようとしたのだが、花ちゃんが続けては鳴った言葉にそれは踏み止まることとなった。

「でも、その安全が高まる対象にちゃんと凛花さんは入っていますか?」

 花ちゃんの言葉に、即座に『できる』と断言できなかった私は、自分のことを考えていなかった事に思い至る。

 そのお陰で少し冷静になれた私は、改めて計画を考えてみた。

 結果、私は「大丈夫……だと思います」と頷く。

「だ・と・お・も・い・ま・す?」

 私の言葉に花ちゃんの表情が笑みに変わり、ゾクリと体が冷えるような冷たい気配が広がった。

「待って、花ちゃん、待って!」

 私は慌てて花ちゃんに声を掛ける。

「未だ全て実験したわけじゃないから、断言できないだけで、ちゃんと安全は確保できると思うの!」

 花ちゃんは私の訴えに「聞きましょう」と口にして、漏れ出ていた圧を僅かに引っ込めてくれた。

 空気が和らいだ事で思わず胸を撫で下ろした私は、この好機を逃すわけには行かないと、すぐに説明に入る。

「えっと、今、イメージを投影するプロジェクターや記憶を録画できるレコーダーを出現させたけど、これらとの繋がりは弱い……というか、無いように思うんです」

 それはあくまで私の感覚の上での話だけど、花ちゃんは頷きながら「確かに機器類はそうか見知れませんね」と頷いてくれた。

「独自に周囲からエネルギーを得て存在しているそれらの機器は、凛花さんが分身を応用して出現させたモノでありながら、既に独立した存在になっていると考えられますね」

 花ちゃんの言葉に頷きながら、私は「ヴァイアについても同じように繋がりがないように感じてます」と実感を伝える。

 そこで花ちゃんは「では、逆に繋がりを感じるものはあるんですか?」と尋ねてきた。

 私はそれに頷きながら「私の分身……『神世界』へ突入する時の体がそうです」と答える。

 その上で、私なりの結論を口にした。

「ざっくりと考えて、生き物として出現させたモノには繋がりがあって、機械や無機物として出現させたモノとの繋がりはないんじゃないかと思うんです」

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