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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾壱章 想定離脱
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拾壱之拾玖 反省

 閃きに従って、全身からエネルギーを放出してしまった私は、気が付くと見慣れない部屋に寝かされていた。

「気が付いたみたいですね」

 もの凄く冷たい声で話しかけられたので、私は恐る恐る視線を向ける。

 そこには白衣を羽織った花子さんが、もの凄く怖い笑顔を浮かべてこちらを見下ろしていた。

 こめかみに血管が浮いているような気がするが、気のせいだと思いたい。

「花子さ……」

 そこまで口にした瞬間、何かが私の口を覆った。

「んんっ!?」

 驚きで叫びそうになった私の耳元に誰かの気配が近づいてきて「花ちゃんって呼ばないと、今は本当に危ないよ」と囁かれる。

 私は声の主が誰かを確認するよりも先に小さく頷いて、理解したことを伝えた。

 細かく説明されたわけじゃないけど、私が思いつきでエネルギーを全身から放出して倒れたことに、花子さんは激怒しているのだろう。

 それも『花ちゃん』呼びを『花子さん』呼びに戻してしまうような些細なミスですら致命傷になりかねないレベルの怒りなのだ。

 私は耳打ちでの警告に感謝しつつ、可能な限り申し訳なさそうな声と表情で「花ちゃん、ゴメンなさい」と渾身の謝罪を口にする。

 すると花ちゃんは浮かべていた笑みを消した上で「何に対してですか?」と尋ねてきた。

 真剣な問い掛け、そう思った私は唇を噛む。

 単純に心配をかけたことを詫びてはいけないと思った。

 花ちゃんは別に謝罪を求めているわけじゃなくて、自分の行動を省みろと言っている。

 だから、私は花ちゃんの立場で考えてみることにした。


 まずは、驚いたはずだ。

 私が新たな『アイガル』の筐体を出現させることは説明していたし、二度目と言うことで多少気を緩めていたと思う。

 それなのに、私は突然体を支える力すら失って倒れ込んだ。

 支えてくれた東雲先輩のお陰で、床に転がらずに済んだけど、花ちゃんの立場ならそれだけでもショックだったと思う。

 思いつきで具現化の速度を上げられるんじゃないかと思って実験した私が完全に悪いのだ。

 しかし、私が花ちゃんの立場なら確実に危険を冒す前に止められなかったことを悔やんだに違いない。

 考えて僅か数秒で自分のやらかしの駄目さ加減を痛感して、私は花ちゃんに対する申し訳なさで一杯になった。


「まず、相談しなくてごめんなさい」

 何はともあれ、勝手な行動が一番の原因なので、起き上がりつつ頭を下げた。

「そうですね」

 表情は厳しいままだが、花ちゃんは頷いてくれる。

「好奇心に負けてしまいました」

「月子お姉ちゃんもそうですが……研究肌の人間の一番悪いところです。好奇心に勝てないところと、没頭すると判断力というか……理性を失うところ!」

 ズバリと切り返された私には「面目次第もございません」と頭を下げる以外になかった。


 部屋の中を確認すると、私と花ちゃん、そして志緒さんの姿しかなかった。

 どうやら先ほど囁いてくれたのは志緒さんだったらしい。

 的確なアドバイスへの感謝と、恐らく心配をかけてしまった事への謝罪の気持ちを込めて、私は頭を下げた。

「志緒……ちゃんもゴメンなさい」

 習慣で『さん』付けに戻ってしまいそうだったのを踏み止まってはみたものの、間で完全に察せられてしまったらしく、志緒ちゃんに盛大に溜め息を吐き出されてしまう。

 恥ずかしさと申し訳なさに逃げ出したいと思ったところで、志緒ちゃんはジト目を私に向けた。

「リンちゃんが倒れたのを見て、私も思いつきでしちゃ駄目って痛感した。私も反省するから、リンちゃんもしよう」

 上目遣いでそう言われた私は素直に「そうだね」と同意する。

 そうして軽く微笑み合ったのだが、その後、お互い言葉が続かなくなってしまって、沈黙したまま見つめ合うことになってしまった。


「と、とりあえず、まーちゃんたちも心配してるから、教室に戻ろう!」

 私より先に我に返った志緒ちゃんが慌てた様子でそう提案してきた。

「そ、そうだね……良いですか、花ちゃん?」

 私もなんだか気恥ずかしくて、少し動揺しつつ、花ちゃんに許可を求める。

「そうね。ちゃんと皆にも状況説明しないと、ね」

 花子さんが頷いてくれたことで、多少気持ちが落ち着いた私は、気になっていたことを尋ねることにした。

「あの、ところで花ちゃん、この部屋は?」


 先ほどまでいた部屋は、元々は宿直室として使われていたらしく、保健室よりも近かったので選んだそうだ。

 私を診断するのに、寝かす必要があると花ちゃんが判断したらしい。

 教室でも良かったのではと私は思ったのだが、皆が動揺すると花ちゃんは考えたのだ。

 そこで、東雲先輩に運んで貰って、この宿直室に移動してきたらしい。

 運んでくれた東雲先輩が主行く直室にいなかったのは、私が一応とはいえ女生徒だからだ。

 診断によっては服を脱がしたりもするので、出来る男東雲先輩は私を寝かすと、そのまま状況説明に教室に戻ったらしい。

 同じ年齢だった頃の自分を思い出すに、自分とはまるで違うスマートさに、嫉妬よりも憧れのようなモノが溢れてきて、私の中で東雲先輩の株がまた一段と跳ね上がった。

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