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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾壱章 想定離脱
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拾壱之拾伍 アップデート

「そ、そうか……」

 東雲先輩の反応が私の想像と違っていた。

 そこで私は気付く。

 普段は女子生徒として行動することを心掛けているので、東雲先輩の目からだと私の中にある男子らしさや男子の気配が上手く伝わっていないのだ。

 故に、東雲先輩の言葉に疑問の色が滲んでしまったんだと思う。

 それならば、もっとわかりやすく言葉で示せば良いのだ。

「皆で着ることに決まったミルキィ・ウィッチの衣装は、魔女の衣装だから、女装になってしまうと心配なんですよね!」

 衣装だからとか、出し物だからという理由で割り切れる人は当然いるが、恐らく東雲先輩はそうではないのだろう。

 私自身、この姿でもスカートには抵抗があったのだ。

 柔軟な思考が出来る東雲先輩といえど、異性の衣服というイメージがあると大きな抵抗になるのだろう。

「大丈夫です、東雲先輩!」

 改めてはっきりと断言した私は、納得して貰えるであろう理由を続けて口にした。

「皆で衣装を着るまでに、等身大の分身に入れる仕組みを完成させますから!」

 ポンと胸を叩いた私を見て、何故かよろめきそうになった東雲先輩が「ぶ、分身って、()()()()()()入る混むって事か?」と尋ねてくる。

「そうですよ! 等身大の分身なら、魔女の衣装を着ても平気ですよね? だって女の子が女の子の服を着るのはおかしな事じゃないですから!」

 東雲先輩に安心して貰おうと、目一杯明るい声で訴えた。

 てっきり安心してくれると思った東雲先輩の反応が鈍い。

 疑問や気になるところを放置するのは、よろしくないので「東雲先輩、何か気になるところがありますか? ちゃんと説明しますよ?」と声を掛けた。

「だ、大丈夫だ。わかった。理解した」

 少し奇妙な言い回しだったけど、自分の経験に照らし合わせた結果、話を続けるのが恥ずかしいのではという可能性に気付く。

「それじゃあ、今優先すべきは、人形作りですね!」

「そ、そうだな」

 東雲先輩の同意を得た私は、志緒さんに視線を向けると、親指を立てたOKサインが返ってきた。


「それじゃあ、志緒さんお願いします!」

「任せたまえ!」

 雪子学校長を思わせる口ぶりで志緒さんが胸を張った。

 思わず顔を見た私と志緒さんの視線が重なり、どちらかともなく噴き出す。

 そうしてお互いに笑い合ったとで、改めて私から切り出した。

「今度こそ、お願いします」

「は~い」

 志緒さんの返事を聞いて目を閉じた私は体拾から掌へとエネルギーを集める。

 出現させた『神格姿』姿の東雲先輩の人形を包み込むような球状で、エネルギーを蓄積したところで、志緒さんに「イメージをお願いします」と声を掛けた。

「はい」

 短い返事の後で私の右腕に志緒さんの両手が並べて置かれる。

 手が置かれた後でしゃがむ気配がしたので、恐らく、志緒さんは監修のために、視線を下げて東雲先輩の人形に顔を近づけているはずだ。

 と、考えていると、グンとエネルギーの維持に負荷が掛かり始める。

 志緒さんがイメージを送り始めたのだと察した私は、意識をエネルギーの維持に傾けた。


「なるほどねぇ。完成した人形をエネルギーに近い状態に戻すことで、機能や外見を変更するのね」

 志緒さんの『完成』の言葉の後、花子さんは感心したように頷きながら顔を近づけたり遠ざけたりしながら、東雲先輩の人形を観察していた。

 その間に志緒さんが「マイちゃーん」と舞花さんを呼ぶ。

 どうしたんだろうと思ったモノの、その疑問はすぐに解けた。

「『スーちゃん』にお願いしてくれるかな?」

 志緒さんの言葉に、舞花さんは「まーちゃんのお人形完成したんだね」と笑む。

「『変身』させるんですね?」

 私の言葉に真っ先に反応したのは花子さんだった。

「『変身』!? このまーちゃんのお人形が変身しちゃうのね!」

 興奮気味な花子さんに、舞花さんは笑顔のままで「そうだよ~」と明るく答えてから後ろを振り返る。

「『スーちゃん』お願い!」

 舞花さんの後を飛んでついてきていたヴァイアの『ステラ』が右手? 右前足?を上げて答えた。

「まーちゃん! ミルキィ・チェンジだよ!」

 東雲先輩の人形は『ステラ』の指示に『わかったわ!』と応える。

 聞き覚えはあるし、志緒さんの監修が入っているので、恐らく『神世界』で聞いた『神格姿』の声のはずだ。

 東雲先輩の担当するミル・フレイリィのアニメの声とは違うので、多分間違いないと思う。

「しーちゃん、声はバッチリ『神世界』のまーちゃんだったね」

「うん。上手くいってる」

 舞花さんと志緒さんのやりとりに、自分が間違ってなかったとホッとしていると、二人の会話のボールはとんでもない方向に投げられた。

「ね、まーちゃんもそう思うでしょ?」

 骨と鼓膜の影響で、自分の出してる声と周囲が聞き取る声は違うので、その質問は応えられないんじゃないかと思ったのだけど、東雲先輩は「ああ」と頷く。

 あっさりと応えた東雲先輩に驚いていると、花子さんが柔らかく笑みを浮かべて「球魂が纏う『神格姿』は実体ではないので、声に違和感は生まれないんですよ」と私の抱いた疑問の答えを囁いてくれた。

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