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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾壱章 想定離脱
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拾壱之拾肆 宣言

「あ、ああ。頼む、志緒」

 東雲先輩はどこかぎこちない動きで、志緒さんに監修を頼んだ。

 すると、志緒さんはポンと胸を叩いて「はい、まかされました!」と笑顔を見せる。

 それから私の方に視線を向けて「それじゃあ、リンちゃん、いつものお願いね」と言い放った。

「う、うん」

 考えてみれば、志緒さんは人形だけでなく、ヴァイアでもヴァージョンアップをしているので、手直しはお手の物なんだなと改めて思う。

 と、同時に、何を仕込むつもりなんだろうという警戒心が私の中で大きく膨らみ始めた。

 そんな私の警戒を感じ取ったのか、志緒さんが「大丈夫だよ、変なことはしないから!」と柔らかく微笑む。

 笑顔に半の違和感もないのに、どういうわけか、私の中の警戒は解けるどころか上がってしまった。

「え、えーと、お手柔らかにー」

 意識しないつもりが、逆によそよそしくなってしまったのもあって、スッと志緒さんの目が細まる。

「リンちゃん」

「な、なんですか?」

「私を信じてないでしょ?」

 ズバリ聞かれてしまった私は、諦めて素直に思っていることを伝えることにした。

「信じてないわけじゃないですよ? ただ、勝手に鉄壁スカート、謎の光にミルキィチェンジ……思い付いたら好奇心を優先させちゃうんだろうなとは思ってます」

 私の返しに、志緒さんは「うっ」と言葉を詰まらせた。

 その後で「み、ミルキィ・チェンジは私じゃないし」と訴えてくる。

「ソウデスネー」

 わざと抑揚を付けずに返すと、志緒さんは「ま~ちゃ~~ん」と東雲先輩に助けを求めた。

 ははっと笑ってから東雲先輩は「これは志緒の負けだな。行動で示すしか無いんじゃ無いか?」とジャッジを下す。

「う~~」

 志緒さんは少し唸ってから、私を真っ直ぐに見た。

「私は別にリンちゃんに負担をかけようとか思ってないよ?」

「それはわかってます」

 志緒さんの言葉に笑顔で頷く。

 すると志緒さんは困った表情で口を閉ざしてしまった。

 好奇心にあらがえないのは私にもあるところなので、ここで助け船を出す。

「まあ、何か思い付いたら試したくなってしまう気持ちは私にもよくわかります」

 私がそう口にした直後、志緒さんの目がキラリと輝いた。

 目が『そうだよね!』を繰り返し訴えてくるので、釘は刺して置いた方が良いと、私の中の冷静な部分が警告を発する。

 私が「よくわかるので……」と切り出すと、志緒さんは縦に首を繰り返し動かした。

 苦笑しそうになるのを堪えつつ、そんな志緒さんに「思い付いた時点で相談してくださいね?」と告げる。

 直後、まるで突如絶望が振ってきたとでも言わんばかりのショック表情を浮かべた志緒さんは「でも、それじゃあサプライズが!」と言い放った。

 そんな志緒さんに頷きながら「わかりますよ。驚かせたいって気持ち、凄いことを思い付いたら、吃驚させたくなりますよね」と私自身も理解できることを伝える。

 直後、志緒さんの表情が明るくなったのをみて、チクリと罪悪感がうずいたが、私は決めていたセリフを解き放った。

「でも! 今私たちが試していることは、初めてのことばかりなんです! 無事成功を収めて来れたから問題は無いですけど、失敗していたらどうなっていたかわからないんです! 好奇心や挑戦する心はとても大事です! な・の・で、安全を確保するために、サプライズしたい気持ちは抑えて、必ず最初に相談してください!」

 思わず勝ち誇ってしまいそうな程綺麗に決まったセリフを前に、志緒さんは「はぁい」と白旗を揚げる。

 シュンと肩を落としてしまった志緒さんをフォローしようとその方に手を伸ばしかけたところで、いつの間にか教室に来ていた花子さんが先に私の肩を叩いた。

「え?」

 思わず声が私の喉から出た直後、花子さんはとっても言い笑顔のままで「リンちゃんもね」と言い放つ。

 もの凄く思い当たる節がある私のテンションは、一瞬に坂道を転落して、うつむき加減に「はい」と口にすることしか出来なかった。


「それじゃあ、見学させてもらうね、リンちゃん、しーちゃん」

 にこやかに微笑む花子さんに、私と志緒さんは「「はい」」とゆっくり頷いた。

 私も志緒さんもなんとなく声に張りがない。

「もう! 気をつければ良いだけなんだから、そんなシュンとしないの」

 花子さんにそう言われて、視線を交わした志緒さんと私は、お互いに苦笑を交わし合った。

「そうですね、東雲先輩の人形の仕上げですもんね! 暗い顔でなんて良くないですね!」

 私の発言に続いて、志緒さんが明るい声で「うん。折角まーちゃんが任してくれたんだもん、頑張るしかないよね!」とギュッと拳を握る。

 そんな私たちを見て、東雲先輩が「き、気合を入れてくれるのはいいんだが、そんなにこだわらなくていいんだぞ?」と少し慌てた様子で声を掛けてきた。

「でも、まーちゃん。皆で衣装を作る時の参考にするんだから、ちゃんとしたミルキィ・チェンジが出来るようにしておかないと!」

 志緒さんの純粋な訴えに、東雲先輩は「そ、そうだな」と表情を引きつらせる。

 今は見た目が変わっていても、同性である私には東雲先輩の気持ちがわかるので、はっきりと言い切った。

「大丈夫です、東雲先輩! 私はわかってますから!」

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