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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾壱章 想定離脱
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拾壱之拾 対処

「月子先生から何か指示されたんですか?」

 先ほどまでの動揺を無かったことにするために、私は必死に感情を殺して東雲先輩に質問を投げ掛けた。

 対して、東雲先輩は困った表情を浮かべて、目を左右に動かし始める。

 ジッと見ていると、東雲先輩は大きく息を吐き出して「その……だな」と、どこか諦めたような表情を見せた。

「なんですか?」

 私の動揺を見せないためとは言え、あまりリアクションを見せないのも良くないかなと思い、私は舞花さん達を真似て首を傾げてみる。

 質問を受け付ける意思があるのを示すのに、最適なジェスチャーだという確信もあってのチョイスだったのだけど、東雲先輩は固まってしまった。

「東雲先輩?」

 様子を確認しようとのぞき込みながら名前を呼ぶと、東雲先輩は全身を軽く揺らしてから「あ、ああ、そ、そうだな」と明らかな動揺を見せる。

「ん?」

 どうしたんだろうと心配になりながら、私は傾いていた首を反対側に傾けた。

 すると今度は東雲先輩は横を向いてしまう。

 私が『何故そんな行動を?』と思って質問するより先に、東雲先輩は横を向いたままで続きを話し出した。

「月子先生には、その……凛花に何か出して貰えって言われたんだ」

「何か?」

 聞き返した私に、東雲先輩は視線を戻すと、少し間を置いてから口を開く。

「皆が遊んでるゲームがあるだろう?」

「『アイガル』のこと?」

 興味津々と行った表情で横から会話に参戦してきた舞花さんに、東雲先輩は驚いた表情を見せた。

 ここまでは黙って成り行きを見ていた舞花さんだけど、話題が『アイガル』に向いた瞬間、堪えきれなくなったらしい。

 ワクワクに満ちた表情で、東雲先輩を見詰めて、舞花さんはその返答を待ち構えていた。

 私がされたらプレッシャーだろうなぁと思いながら、東雲先輩を見る。

 すると、東雲先輩は目を閉じて、舞花さんの視線から逃れるという荒技を繰り出した。

 見ないという対処法に、感心していると、東雲先輩は顎を引いて語り出す。

「その『アイガル』に参加する形でも良いんだが、多様性を検証するために似たような『何か』に挑戦してくれって言われているんだ」

「え、まーちゃんも、一緒に遊んでくれるの!?」

 舞花さんは東雲先輩の発言を参加表明と受け取ったらしく嬉しそうな声を上げた。

 正直、私だったらここから舞花さんを躱すことは出来ないので、東雲先輩はどうするのだろうと思いながら反応に注目する。

 普通に考えて、参加表明だろうとは思うのだけど、東雲先輩は「もちろん、参加しても良いんだが、違うモノを凛花に出して貰おうかと思って」と口にした。

 予想通り舞花さんは「え~」と不満そうな声を上げるが、目を閉じている東雲先輩は怯むことなく自分の意見を口にする。

「皆がもう遊んでいる『アイガル』とは違うモノを出して貰うことに意味があるんだよ」

「そうなの?」

 舞花さんに頷きを返しつつ東雲先輩は「雪子先生や花子さんもよく言うだろ、いろんな方法を試してみろって」と目を開きながら言い聞かせるように告げた。

「凛花がいろいろ出来るようになれば『種』がもっと弱くなるかも知れないんだ」

 東雲先輩のその一言は舞花さんに強く響いたらしく「そっか」と大きく頷かせるほどの説得力があったらしい。

「『種』を弱くするためにはいろいろ試した方が良いって事だよね?」

 舞花さんの言葉に東雲先輩は頷きつつ「もちろん『アイガル』を一杯遊ぶっていうのも、効果があると思う。だからそっちは舞花達女子チームに任せる」と告げた。

「そっか、残念だけど……」

 明らかに肩を落とす舞花さんだが、納得はしているようなので諦めるつもりに見える。

 が、東雲先輩の凄さはその後のフォローにあった。

「舞花、オレが『アイガル』は参加する時は、やり方を教えてくれ。本物のゲームはやったことないからな」

「え?」

 驚いた表情を見せた舞花さんに、東雲先輩は「いろいろ試さないとだからな」と笑む。

「凛花と違うモノを出すのも『いろいろ』だが、オレが『アイガル』で遊べば『いろいろ』なプレイヤーの一人になるだろう?」

「そっか!」

 諦めモードで気落ちして見えた舞花さんの表情が明るくなっていた。

 素直に東雲先輩をスゴイと尊敬出来るやりとりに感心している間にも、二人の会話は続いていく。

「一応、ゲームみたいなモノを出して貰おうと思ってるから、上手く言ったら舞花も遊んでくれ」

「うん!」

 にこやかな笑顔で応える舞花さんに頷きで応える東雲先輩のやりとりは、本当の兄妹のようで、とても微笑ましかった。

「それで、何のゲームを出すの?」

 そう尋ねた舞花さんが『アイガル』と同じように、カードを排出するタイプで、男の子向けジャンルのゲームを上げていく。

 東雲先輩はそれら全てに首を横に振ってから「オレが挑戦しようと思っているのは、カードが出るゲームじゃないんだ」と断言した。

「えーと、じゃあ……メダル? お菓子?」

 首を傾げる舞花さんに、東雲先輩はもう一度首を横に振る。

 その後でチラリとこちらを見た東雲先輩は「体を使うゲームはどうかと思ってる」と口にした。

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