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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾壱章 想定離脱
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拾壱之弐 感知

「さて、皆、向かうとしよう」

 雪子学校長の言葉に、皆は無言で頷いた。

 これまで何度も戦いに挑んできたのがわかる程、皆の意識の切り替えは一瞬で終わる。

 精悍な顔つきとなった皆からは、笑顔は消え去っていた。

 私も足を引っ張らないように、自分の役目を果たすためにMAPの能力を発現させる。

 頭の中に輪郭だけが書き出された3Dモデルのような立体地図が展開した。

 雪子学校長が向かおうとしている先に、道中の危険を感知するために意識を向ける。

「あ、あれ?」

 思わず声を上げてしまった私に反応して、皆が足を止めてしまった。

 油断のない声で、雪子学校長が「何かあったかね?」と手早く尋ねてくる。

 ここで慌てて、誤認情報を流してはいけないと、短く息を吐き出して気持ちを落ち着けてから報告に入った。

「多分ですが『種』と思われる気配を感知しました」

 私の報告に対して、雪子学校長は「君の脳裏に浮かぶMAP上に『種』が表示されたんだね?」と確認の言葉を投げてくる。

「名称は『サラマンダー』……私たちと名前の表記が違っているので、恐らくこれが『種』じゃないかと思います」

 私の言葉に、真っ先に反応したのは舞花さんだった。

「『ミルキィ・ウィッチ』でも、同じ名前の火の精霊が出てきたよね、しーちゃん!」

「そうニャね。元々は火の中に住むっていうトカゲの名前だったと思ったニャ」

 志緒さんの解説に、東雲先輩が「なるほど、では敵は『火炎蜥蜴』だな」と口にすると左の腰に差していた刀を抜き放つ。

「え、えーと……」

 状況が飲み込めず困惑してしまった私を見かねてか、雪子学校長が「未だ余裕はある。手身近に説明してやってくれ」と周囲に視線を飛ばしながら指示を出した。

「リンちゃん、えーとニャ。この『神世界』では昔から戦いが続いてきているのは知ってるニャ?」

「もちろんです」

「にゃので、『種』にも和風の名前が付いているにゃ」

 志緒さんにそう言われて、『サラマンダー=火炎蜥蜴』だという認識が生まれ、わざわざ東雲先輩が別の名前で口にした理由に察しが付く。

「すみません、正式な名前があったとは思わなくて」

 私の言葉のせいで、相手を別のものと誤認させてしまう可能性もあったのだと思い、私はすぐに謝った。

「それは別に構わない。事前に情報があればこそ、武器を選べるというものだ」

 東雲先輩はそう言って手にした抜き身の刀の背をポンポンと肩に当てる。

「オレの刀は、天下五剣という五振りの剣にあやかっている。もちろん本物ではない……というよりは漫画やゲームで付けられた設定の方に元にしてしまってるけどな」

 そう言って、東雲先輩は苦笑気味に笑った。

 私は『天下五剣』という言葉に心をくすぐられ、男子なら憧れるよなぁと、東雲先輩の気持ちがもの凄くよくわかり、出所のよくわからない感動に浸ってしまう。

 すると、私がアクションを起こさなかったせいか、東雲先輩はなんだか困った顔をして「り、凛花にはわからないかも知れないけど、刀には浪漫というか、なんというか」と語り出した。

 確かに上手く言葉にはしにくいが、確かな魅力が刀にはあるんだよなぁと、これもまた深く頷ける内容で、私の中の東雲先輩への親近感は爆上げしている。

 すぐにでも刀について語り合いたいなと、私がそれを口にする前に、志緒さんの「今、まーちゃんが抜いた刀は『三日月宗近』ニャ。水の力を帯びているから、火の禍の種には効果絶大ニャ!」という解説が入った。

「なるほど!」

 私の手首の数珠もそうだけど、ここでは風水……というよりは五行思想の考えが根付いている。

 サラマンダー、火炎蜥蜴、どちらにしても明らかに火属性の相手ならば、火に強い水の属性の刀を抜くのは当然だ。

「あ、それじゃあ、もしかして……」

 私がその後に『他の刀にも属性があるんですね?』と続ける前に、舞花さんが「そうだよ!」と割り込んでくる。

 思わず吃驚で言葉が止まってしまった私とは対照的に、舞花さんは軽やかな口ぶりで「水と氷の魔法が得意な舞花の出番だよ!」と言い放った。

「なるほど」

 と、頷いてから、つい視線を結花さんに向けてしまう。

 すると、結花さんは「私は攻撃面では役に立たないわ。けど、代わりに炎の壁で相手の攻撃を受け止めたり、炎の流れを誘導することで、守備面でならやれることがあるのよ」と笑った。

「スゴイです。ちゃんと役割分担が決まっているんですね」

 案外簡単なことのようで、自分の役割を理解して徹することは、案外大人でも難しい。

 特に双子故というのもアルかも知れないけど、一番年下でもある結花さんが不満を滲ませることなく晴れやかに笑って自分の役割を断言できるのは本当に凄いと思った。

 私が感心しながら結花さんを見ていると、那美さんが「ちょっと、リンちゃん! 私も活躍するわよぉ~~」と突然のアピールを始める。

 振り返って、魔女姿の那美さんを観た私は「そういえば、那美さんは魔法使いですもんね」と納得と共に頷いた。

 何しろ、魔法使いと言うだけで、万能性は高そうに思う。

 加えて那美さんには、人の気持ちを察する能力があるので、連携面にも強そうだ。

「那美さんが後ろにいるだけで心強いですよね!」

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