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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾章 遊戯創造
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拾之参拾 光

「志緒さん、服を脱げなんて!」

 焦りがあるせいか、強めになってしまった私の言葉に対して、志緒さんは「良いから見てて」と冷静に返してきた。

 私一人が焦っているようで、志緒さんを止めてくれる人を求めて見渡した他の皆は、落ち着いて様子を見詰めている。

 この状況で、騒いでも仕方ないと判断した私は『服を脱げ』なんてと思いながら、見物してて良いのかという考えも頭を過り、とてもモヤモヤした気持ちで志緒さんの人形に視線を戻した。

 視線の先では志緒さんの人形が、スルリと吊り紐を肩からズラしている。

 そのまま、左の腰のスカートのファスナーを下ろすと、スカートのベルトのホックを外した。

 支えを全て無くした吊りスカートがスルリと重力に引かれて、志緒さんの人形の足を滑り落ちていく。

 ブラウスとソックスだけになってしまった志緒さんの人形だったが、スカートがなくても『鉄壁スカート』の機能が発動しているからか、ブラウスの裾から覗くのは足の肌色だけだった。

 これを見せたのかったのだろうかと考えていたのだが、志緒さんの人形の手はそこでは止まらない。

 丸襟ブラウスのボタンに両手が伸びて、上から順に外していった。

 このまま黙ってみているとブラウスまで脱いで下着姿になってしまう。

 そこで、私が、下着のイメージなんてしていなかったことに思い当たった。

 最悪の場合下着を身につけていない可能性もあるんじゃ無いかという考えが、私の中で焦りに変わる。

 志緒さんにストップを掛けて貰った方が良いのだろうかと思い、視線を向けると何かを期待するような眼差しで志緒さんは様子を覗っていた。

 その表情からして、服を脱いだ後にも何かあるのかも知れない。

 単純に下着姿になるだけかも知れないという考えが、直視することに抵抗を感じさせたが、良くも悪くもその懸念は無駄に終わった。

 ブラウスのボタンが外れ、重ねられた前面が開かれた直後、全身が白い光に包まれたのである。

「これって……」

 驚き交じりの私の呟きに、答えをくれたのは志緒さんだった。

「えーと『アイガル』のゲーム中で、衣装を着替えるシーンがあるんだけど、元々着ていた制服が消えて、ステージ用の衣装に着替える瞬間、体が光って裸や下着が見えなくなるんだよ」

 肌や下着が見えないような配慮はゲームやアニメなら当然だと思う一方、現実世界で再現するのはほぼ不可能だろう。

 私が出現させた時と細部の変化がないにも拘わらず、もの凄いエネルギーを必要としたのは、この機能の再現のためだったということだ。

「ゲームは、踊りながら、着ていた衣装が消えて、カードで選んだステージ衣装に切り替わるんだけど、今は未だカードを認識させる部分を作ってないから、直接服を脱いで貰ったの」

「理屈はわかりましたけど、皆の前で裸になるのは可愛そうだと思って、不安に思いましたよ」

 私の言葉に、志緒さんは「そっか」と口にしてから、申し訳なさそうな表情を浮かべる。

 直後、志緒さんは「考えが足りなかったよね、ゴメンなさい」と口にしながら、私、人形の順で頭を下げた。


「次はどうしますか?」

 志緒さんが新たにゲームの機能である『謎の光』システムを再現したことで、選択肢が増えた。

 一つ目はこのまま全員分……舞花さん、結花さん、那美さんの人形を出現させる。

 二つ目に上げられるのは、先にゲーム機能の再現できる環境を整えるために、カードを読み取る機能、反映する機能、それと最後のは再現する必要があるかわからないけど、コーデ用のカードを排出する機能を作ることだ。

 最後に三つ目として、鉄壁スカートまでしか搭載されていないであろう私を模した五体の人形をアップデートして『謎の光』システムを搭載することである。

 必要なエネルギーの量によっては、一気に全部は出来ないし、今日中には終わらず持ち越しになる可能性もあるので、皆で話し合うことにした。

 私としては、まず皆の人形を揃えて、変身のシステムを作って、最後に私の人形のアップデートでいこうと考えていたのだけど、結果は予想と歯大分異なってしまう。

 皆が最初に掲げたのは私の人形のアップデート、次いでゲームシステム、最後に自分たちの人形だった。

 理由はとても簡単で、私の人形で遊びたいかららしい。

 確かに自分の人形だと遊びにくいという気持ちはわかるし、一応配慮として、私の人形のアップデートを一番に上げてくれているので、嫌だという理由だけで否定するのは私には出来なかった。

 皆の結論に従うと決めた私は、どのみち全部やることには変わりなく、優先順位の問題でしかないと、自分を納得させて、アップデートを開始する。

 手早く済ませれば、全工程が終わるかもという考えもあった。

 だが、目論見に反して、五体の人形に『謎の光』機能を追加するのは、簡単ではなかったのである。

 機能自体を考案し、自分の人形に追加した志緒さんの協力を得ているとはいえ、必要とするエネルギーは膨大で、私自身のイメージが元になったであろう制服姿の人形と、志緒さんのイメージで出現した『リンリン』と同じ衣装の人形のに体に機能を追加するだけで、休憩が必要になってしまった。

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