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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾章 遊戯創造
279/814

拾之拾 羞恥

「ちょっと、結花さん!」

「なに? リンちゃん?」

「なんで私の事をどう思うかを話題にするんですかっ!」

 私をネタにされるのもそうだが、ヴァイアとはいえ、褒め言葉を並べられるのも恥ずかしいし、何より『可愛い』や『綺麗』は耐性がなくて、動揺してしまうのでやめて欲しかった。

 だが、結花さんは「だって、自分の事って話題にしにくいじゃない? あれよ、えーと……そう、()()()()()()()! ()()()()()()()な目線が大事なワケよ」と笑む。

 言っていることは極端だが、あながち間違いとも言えない意見に、思わず納得してしまいそうになったが、問題がそこじゃ無いということに気が付いた。

「な、那美さんでも良いでしょう!」

 私の指名に対して、那美さんは「えぇ~」と言った後で、驚きの言葉を発する。

「私を話題にしてくれても良いけどぉ、リンちゃんの方がぁ、リアクションは面白いと思うわぁ」

「はい?」

「と、いうわけでぇ、私もぉリンちゃんについてぇ、お話しをする側に参加するわねぇ」

「いや、那美さん!?」

 一瞬で悪化した状況にストップを掛けるよりも先に、結花さんが「なっちゃん! それ良いね!」と言い放った。

「ちょっと、二人とも!」

 話の流れを断ち切ろうと声を強めた私に向かって、結花さんが発言を遮るように掌を向けてくる。

「ゆ、結花さん?」

「リンちゃん、もう『きらり』ちゃんも『ぴかり』ちゃんもお話しを始めてるんだよ。急に話題を変えて貰うより、このまま最後まで続けて貰うのがいいよね?」

 確かに違う話題に切り替えるのは、どのくらい負担になるのかわからないので、もし試すにしても次だ。

 今の話題のまま、どこまで会話が続くかを検証する方が自然だし優先すべきだなと、私も思ってしまう。

 となると、結論は「……つ、続けてください」だった。


 そこから先の話は聞くに堪えなかった。

 腹が立つとか、不謹慎だとかではなく、あまりの恥ずかしさに、耳を覆いたくなるような話の展開だったのである。

 基本的には、新たなヴァイアである『きらり』と『ぴかり』の私に対する評価に対して、結花さんと那美さんが基本的に同意しながら盛り上がるという形だ。

 主に見た目についての評価をくれる二人のヴァイアに、那美さんと結花さんは私の行動を主体に会話を盛り上げる。

 頻繁に『きらり』と『ぴかり』が「学習しました」と言うので、どんどんストップが掛けれれなくなっていく一方だ。

 もう、どうしようもないと判断した私は、会話検証を任せて、もう一組の様子を見に行くことを決める。

 これは断じて敵前逃亡ではないと心の中で大声で訴えてから、私は戦術的撤退を果たした。


「リンちゃん!」

「ま、舞花さん、こちらはどうですか?」

 私が近づくと舞花さんがすぐに反応してくれた。

 舞花さんは私の問いに「見てください」とこちらに振り替えつつ自分の後ろを示す。

 言われるままに視線を向けると、そこには動く『ステラ』の姿があった。

 既に、結花さんの『きらり』と『ぴかり』は動いていたので、きっと『ステラ』も動けるようになっているだろうとは予測していたのだけど、自分の想像が如何に甘かったかを痛感することになる。

 何しろ、アニメと同じように『ステラ』がふわふわと宙に浮いていたのだ。

「リンちゃんさまっ!」

 嬉しそうに両手を挙げる『ステラ』はアニメ通り愛らしいと思う。

 声もアニメの声優さんが当ててる声と一緒だし、それだけ舞花さんのイメージがしっかりと反映されているのだ。

 が、普通に動くだけならまだしも、宙に浮くのは流石にマズイのではと思う私は、どう反応して良いのか困ってしまう。

 結果、無視素要るような格好になってしまったのだが、対してステラが困ったと言うよりは、不安に近い表情を見せた。

「り、リンちゃんさま……ステラが嫌いです?」

 不安を感じる声音にハッとした私の意識が、瞬時の周囲の状況に向かう。

 目の前に浮かぶ『ステラ』は、ぬいぐるみの体にも拘わらず、アニメと同じように表情が動いていて、思わずこういう静物なんだろうと思わせる説得力のようなものを感じさせられた。

 そんな普通の動物に見える『ステラ』の表情が暗いので、なんだかもの凄く酷いことをしてしまっているような苦さが胸の内に広がっていく。

 加えて、私とステラの間を忙しなく視線を動かす舞花さんも、見守るように後ろに立つ志緒さんも表情が暗くなってしまっていた。

 これは早々になんとかしなければと、私は慌てて首を左右に振って「嫌いなわけ無いよ!」と伝える。

「ただ、少し考え事をしてしまったせいで、反応が出来なかっただけ」

 少し口早になってしまったが、どうにかそこまで言い切ることに成功した。

 が、私の発言で多少は緩和されたものの、『ステラ』の表情は未だ晴れたというにはほど遠い。

 なので、恥ずかしさと緊張で高鳴る胸の鼓動を収まれと念じて押さえつけつつ、もう一歩踏み込むことにした。

「じ、自分が生み出した『ステラ』を嫌いになるわけないでしょう?」

 そう言った直後、『ステラ』はハッとした表情を見せ、直後、もの凄い勢いで私の胸に飛び込んでくる。

 鈍い痛みを感じながらも、胸の中に収まる『ステラ』を見ると、私の中で痛みや恥ずかしさよりも、可愛いという気持ちが勝ってしまい、つい無意識に頭を撫でてしまった。

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