表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾章 遊戯創造
275/814

拾之陸 四体目

「じゃあ『スーちゃん』!」

 元気の良い舞花さんの要望に「わかりました」と頷きで応えた。

 だが、疑問を感じたらしい志緒さんが「ミルキィ・ウィッチの双葉ちゃんみたいに『ステラ』って呼ばないの?」と尋ねる。

 舞花さんはそんな志緒さんに「うん。双葉ちゃんと一緒も良いけど、今からリンちゃんに出して貰う子は、マイだけの『ステラ』だから、一緒じゃない方が良いって思ったんだ」と理由を口にした。

「なるほどね。自分だけってすっごく良いよ。私は『シャー君』を出して貰って、オーダーに反応してくれた時に、すっごくすっごく感動したから!」

 満面の笑顔で熱く語る志緒さんに釣られたように舞花さんが輝く笑顔で「うん!」と頷く。

 二人の話題にしているのが、自分の出現させたオリジナルのヴァイアだと思うと少し気恥ずかしいものの、しっかりしたものを出現させなければという使命感が湧いてきた。

「じゃあ、出してみるから、待ってて」

「うん!」

 一晩待って貰ったのもあってか、舞花さんは大きく頷くと、興味津々な顔で私の手元に視線を向ける。

 チラリと確認した、那美さんも志緒さんも自らのスマホを構えて、軽く頷いてくれたので、私は『スーちゃん』を出現させるために意識を集中しながら目を閉ざした。


 体中のエネルギーを手の先に移動させて集めながら、頭の中でぬいぐるみの『ステラ』を思い浮かべた。

 直前に触らせて貰っていたこともあって、ぬいぐるみの感触やサイズのイメージは明確な為か、これまでの『シャー君』や『リンリン』を出現させた時よりスムーズな気がする。

 外見の攻勢が始まったからだろうか、舞花さんの「うわぁ」という喜びと興奮の籠もった声が聞こえてきた。

 それだけで嬉しくなってしまった私は、集中が切れないように注意しながら、一気に完成まで突き進む。

 もう既に外見はできあがっているような感覚があるで、内側絵と意識を向けた。

 舞花さんのオーダー通り『スーちゃん』に反応して動くように意識した上で、可能な限り高スペックになるようにイメージすると、グンと体が重くなる。

 出現させる難易度が上がると、負荷が掛かるのは何度か経験しているが、怯まずに体勢も気持ちも維持することを強く意識した。

 これまでの経験で学んだことだが、私に出現させられないものは、即座に力が拡散して霧散してしまう。

 一方で、現状のように力が霧散せずに足踏みしているような状況であれば、力を流し続ければ必ず形にすることが出来た。

 後は私の集中力がどれほど続くかが、成否の分かれ目となる。

 本来ならこの後の結花さんの分も考えると、適当なところで切り上げるのがせいかもしれないが、私は舞花さんに喜んで欲しい一心で、妥協せず突き進む道卯を選んだ。


「リンちゃん、大丈夫ぅ?」

 心配そうに私に声を掛けてくれた那美さんに「大丈夫です」と答えた。

「全然そうは見えないけどぉ~」

 困った様子が那美さんの口ぶりからもわかる。

 まあ、確かにどうにか返事はしているものの、私の体は机に突っ伏したまま、上半身すら起こせないのだから当然だ。

 とはいえ、途中難所はあったものの、どうにかやり遂げることが出来たので、私は気持ちに上では十分満足している。

 ただ、疲労感がもの凄いので、やり過ぎたという実感も同居していた。

「まったくぅ、無茶したらぁ皆が心配するでしょ~」

 那美さんは呆れたと言わんばかりの口調でそう言ったが、同時に私の頭を撫でてくれている手はとても優しくて心地良い。

「でも……一晩待たせちゃいましたし」

 私の返しに、那美さんは「まぁ、私もマイちゃんのためなら頑張ると思うわぁ」と同意した。

 そんな那美さんに「でしょ~」と返したが、予想に反して返ってきた言葉は手厳しい。

「だからこそぉ、反省しなさい~って、言ってあげなきゃねぇ~」

 那美さんはそう言った後で「私と立場が逆だったらリンちゃんも、私を怒ってくれるでしょう?」と言い加えてから、ゲンコツで軽く私の頭を叩いた。

「無茶、無理、独断はいけませんよ。リンちゃん?」

 悪戯っぽくそう言ってきた那美さんに「はーい、那美先輩」と返し、二人で少しの間、笑う。

 それから『スーちゃん』を手に実験を始めた舞花さんと、そのサポートと実験記録を付ける志緒さん達に視線を向けた。

 二人は目の前の『スーちゃん』の実験に夢中で、私が机に突っ伏してしているのには気付いていないようなので、今のうちに早く体力を回復させたい。

 そう思っていると、教室の入り繰りから、もの凄い勢いで結花さんが飛び込んできた。

「リ、リンちゃん! 待たせて、ゴメンねっ!!」

 息を荒くしながらそう言った結花さんに、どうにか那美さんの支えもあって普通に座り直した私は「だ、だいじょうぶだよ」と返事をする。

「丁度、舞花さんの『スーちゃん』を出現させて、休憩してた所だから!」

 心の中で素早く支えてくれた那美さんに感謝しながら、自分でもわかる程度にぎこちない笑顔を結花さんに向けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ