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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾章 遊戯創造
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拾之伍 告白

「ユ、ユイは『ちちんぷい』って番組出てくる『きらり』みたいな子が欲しいの!」

 顔を耳に至るまで真っ赤にしながら、結花さんはそう言い切った。

「わかりました。それで、それはどんな子なんですか?」

 頷きながら、そう答えると、結花さんは目を点にする。

「どうしました?」

 結花さんの反応の理由が思い浮かばず、つい首を傾げてしまった。

 対して、結花さんはワナワナと体を震わせながら「わ、笑わないの?」と尋ねてくる。

 多分、結花さん的には笑われる……馬鹿にされる要素がある告白だったのだろうけど、私はまるで見当がついていないので、極めて真面目な顔を意識して「笑う要素……あった?」と尋ねた。

 すると、結花さんは目を白黒させてから、視線を落とす。

 俯いてしまった結花さんに、どう声を掛けようかと思っていると、ぽつりぽつりと声が聞こえたきた。

「あの……ち、小さい子向けの番組だから……」

 何度も忙しなく床と私の間出視線を彷徨わせながら言う結花さんに、私はなんとなくトラウマがあるような気がして、大丈夫を伝えたい気持ちで胸が一杯になる。

 極力、自分に出せる優しい声を心掛けながら、深刻になりすぎないように注意して、結花さんに私なりの考えを歌えることにした。

「番組も商品も確かに対象が決められていますけど、だからって好きになっちゃいけないってことじゃないと思うよ?」

 私が話し出すと、結花さんは視線を彷徨わせるのを辞めて、こちらに視線を固定している。

 不安と期待の混じった視線を感じながら、私なりの言葉を重ねた。

「男の子だからって、お菓子や料理、洋服を作るのが好きでも良いでしょう? 女の子だったら、車や機械、無視を隙になっちゃダメって事は無いはずだよ」

 そこで少し溜めを作ってから締めの言葉を口にする。

「舞花さんも、那美さんも、志緒さんも、東雲先輩も、雪子学校長も、花子さんも、笑ったりしないでしょ? もちろん、私だって笑ったりしないし……結花さんが何故好きなのか、どこが好きなのかに興味があるよ!」

 私のことbに、ホッとしてくれたのか、結花さんは表情を緩めて「そっか」としみじみ呟いた。


 安心したからか、結花さんは明るい表情で『ちちんぷい』について説明してくれた。

 メインターゲットは幼稚園・保育園に通うくらいの子で、四年生の結花さんは少し対象を外れてしまっている。

 男子に比べて、心も体も成長の早い女の子の中には、対象年齢が下の子向けの番組を見ることを馬鹿にする子もいるようで、ここ緋馬織に来る前の学校でしつこく言われたのが、結花さんのトラウマとなっていたようだ。

 那美さんが耳打ちで追加してくれた情報によると、特に可愛くて明るかった双子は、嫉妬の対象になってしまったらしく、たまたま見つけた隙を突くようにたたみかけられたということらしい。

 私にも羨ましいという気持ちはあるので、目立つ双子に嫉妬してしまうのはわからないでもないし、子供過ぎて加減がわからなかったのかも知れないけど、だからといって結花さんに不愉快な思いをさせたり、トラウマを植え付けていいわけではないと少し憤ってしまった。

 とはいえ、過去の話に今から口出しは無理……いや、難しいことだと思う。

 なので、私のとるべき行動は、変に意識をしすぎずに、ただ当たり前の事として受け止めて、結花さんに接することだと結論づけた。


「舞花さんのステラはぬいぐるみを見せて貰いましたけど、結花さんの『きらり』は何か参考に出来る者はありますか?」

 用意周到な舞花さんにぬいぐるみを持たされた上で、アニメ用の白黒の栓で書かれた設定画と大きく映し出された色つきのイラストを印刷したものを順番に見ながら、私は結花さんにそう尋ねた。

「あ、そっか、じゃあ、部屋から持ってくるから、ちょっと待ってらっていい?」

「もちろん」

 私が頷くと、結花さんはすぐに踵を返す。

 そのまま飛び出していきそうだったので、先に断りを入れることにした。

「結花さんが戻ってくる間に、舞花さんのヴァイスに挑戦してみようと思いますが、良いですか?」

 振り返りながら笑顔で「もちろん!」徳地に下した結花さんは次の瞬間には教室の外に出てしまう。

「お姉ちゃん、張り切ってるね!」

 案である結花さんの消えた教室の入り口を見ながら、舞花さんはそう言って笑った。

 いつもは見せない無邪気な姉の姿に、ついつい笑みがこぼれてしまったんだろう。

 私も思わず笑みを浮かべてしまった。


「それで、出来そう……なんだよね?」

「ヴァイア、ぬいぐるみ、それの組み合わせですからね。出来ると思います」

 舞花さんの問い掛けに私は確信を持って頷いた。

「マイは何か他にすることある?」

 舞花さんは私が帰したぬいぐるみの『ステラ』を抱きしめながら、そう尋ねてくる。

 私はそこで肝心なことを忘れていたことを思い出した。

「名前! そうだった、名前を聞き忘れてた!」

 舞花さんは「名前?」と口にしながら、不思議そうな顔で首を傾げる。

「えーとですね、これから出現させる『ステラ』の呼び名を決めて欲しいんです」

 私の言葉に続いて、志緒さんが「お願いをする時に、名前を呼んで行動して貰うんだけど、その名前を最初に決めておかないと、動かせないの」と補足してくれた。

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